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    東京2020アイディアソン

    室伏さんと語る~技術でパラ観戦をこう変える

     今月から始まる「東京2020アイディアソン」(実行委主催)を前に、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の室伏広治スポーツ局長と実行委員をつとめる各企業の担当者が、「パラリンピック×テクノロジー」をテーマに座談会を行った。パラリンピックに熱い思いを抱く7人が、完全防音のブラインドサッカー会場、解説や見所の自動配信など、アイデアソンに参加する学生に負けまいとアイデアを語り合った。

    (まとめ:オリンピック・パラリンピック事務局 沢野未来)

    リオ大会を振り返って

    • 室伏広治さん(元ハンマー投げ選手。アテネ五輪金メダリスト)
      室伏広治さん(元ハンマー投げ選手。アテネ五輪金メダリスト)
    • 阿部功一さん(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会テクノロジーサービス局)
      阿部功一さん(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会テクノロジーサービス局)
    • 森内一成さん(日本電信電話 研究企画部門チーフプロデューサー)
      森内一成さん(日本電信電話 研究企画部門チーフプロデューサー)

     阿部:パラリンピック・リオデジャネイロ大会を振り返って見えた課題はありましたか?

     室伏:日本は多くのメダルを取り東京大会に弾みがつきましたが、金メダルがなかったのが残念でした。東京大会の課題は強化です。選手の活躍は、大会の盛り上がりにつながります。パラスポーツの問題は、コーチやサポートするスタッフの数が少ないことです。対策としては、一つは五輪のコーチがパラの選手も教え、一緒に練習できる環境を作ること。もう一つはテクノロジーの活用。たとえばドローンを使って、いろいろな角度で走っている姿を見られるようにする、目が不自由な選手に対して音や感触など別の感覚を通じて伝える、というように指導のアシストに使いたい。

     阿部:室伏さんは音のフィードバック技術の研究をしておられますね。

     室伏:私はスポーツでの効率の良い動きを追究しているのですが、そもそも効率の良い動きという定義は難しく、コーチから選手へ伝達する上で誤解も生じやすい。技を伝達するために、視覚化したり音にしたりしながら、共通のコンセプトを作っていきたい。テクノロジーの進化で、ウェアラブルデバイスを使ったデータの視覚化が身近になってきた。アスリートはもう一つ上のレベルを目指したい。アスリート、指導者の立場としても、研究者の立場としても開発に興味があります。

    祭典を盛り上げたい

     阿部:テクノロジーは、競技者の強化だけでなく、スポーツのおもしろさを伝えることにも活用できますね。

     室伏:観客一人一人にスポーツの魅力をどう伝えるか、は大切な視点です。ルールや応援の仕方がわからない、という状態では100%楽しめないでしょう。パラスポーツは種目もカテゴリーも多いので、そういった要素は特に重要ですね。

     阿部:谷口さんはパラリンピックをリオで実際に観戦されましたね。

     谷口:車いすラグビーを見たのですが、全くの素人だったので、具体的に何がすごいか最初はわかりませんでした。そこで次の試合までにいろいろと調べてみたら、おもしろさが増しました。ルールだけでなく、車いすやボールにどういうテクノロジーが使われているかを知ると、競技の魅力も感じられました。

     平山:私はオリンピックの観戦に行きましたが、サッカーの盛り上がりはすごかったです。雰囲気を楽しむのも祭典の醍醐味(だいごみ)。東京でもそんな大会にしたい。ソフトだけでなく、テクノロジーでも盛り上げたい。たとえば光や音、人が楽しんでいる雰囲気作りをどう作るか、アイデアが出てほしいです。

     森重:日本人は奥ゆかしいかもしれませんが、一体感を感じることも好き。スタジアムでタオルを振り回したり、お祭りで盛り上がったり。それを国内や世界に広げるのはテクノロジーの役割ですね。

     大谷:お祭りだと、幅広い年齢の方が盛り上がれますね。1964年の東京大会を見られた方々が高齢になっておられますが、2020年までがんばろうとおっしゃっています。皆が楽しめる仕掛けがほしいですね。

    • 大谷真美さん(富士通 東京オリンピック・パラリンピック推進本部プロモーション推進部部長)
      大谷真美さん(富士通 東京オリンピック・パラリンピック推進本部プロモーション推進部部長)
    • 谷口朋代さん(日本航空 東京2020オリンピック・パラリンピック推進部)
      谷口朋代さん(日本航空 東京2020オリンピック・パラリンピック推進部)
    • 平山哲也さん(三菱電機 東京オリンピック・パラリンピック推進部)
      平山哲也さん(三菱電機 東京オリンピック・パラリンピック推進部)
    • 森重和正さん(読売新聞東京本社 オリンピック・パラリンピック事務局)
      森重和正さん(読売新聞東京本社 オリンピック・パラリンピック事務局)

     森内:ライブ感、臨場感をどう伝えるかも大事だと思います。日本人が奥ゆかしいなら、テクノロジーでブラジルの観客につないで盛り上がりをブラジルから手伝ってもらう、なども面白い。

     室伏:別々の所にいても、みんなで同時にシェアできて、同時に盛り上がれるような空間をテクノロジーを使って作りたい。人間が盛り上がる、幸せに感じる時の脳波を調べて、その動きによって何か変化を起こすとか、アイデアは広がります。

     大谷:たとえば、スマホに自動的に見どころやルール、解説やマナーが配信されると観客にとってわかりやすいですね。

     森内:ブラインドサッカーは静かにしないといけないというマナーがあります。でも逆転の発想で、テクノロジーで選手のスペースは雑音が聞こえないような環境にして、スタジアム自体はものすごく盛り上がることもできるかもしれません。

     阿部:テクノロジーが固定観念を取っ払うということですね。

    新しい観戦スタイルを

     阿部:発想の仕方としては、テクノロジーから発想するのと、競技のおもしろさをどう増幅できるかという点から考えるのと、二通りがあります。

     平山:私は車いすバスケをよく観戦しますが、見るほどに楽しみ方がわかってくるし、一緒に観戦している人にも紹介したくなります。コート内にカメラを置くなどの仕掛けがあっていいかも。

     森重:私は学生時代にバスケットボールをやっていましたが、車いすでやってみたらシュートが届かなかった。彼らは上半身中心で動いているのに、自分はひざを使ってシュートしていたんですね。リオ大会の中継を見ると、NBAや五輪のバスケ中継と同じような撮り方をしていましたが、選手の視点やコートの高さに合わせたり、車いすがぶつかる音を臨場感を持って伝えたりなど、工夫できる点はありそうです。

     谷口:あまりスポーツに詳しくない人でも楽しめる仕掛けがあるといいですね。エンターテインメント的な要素で会場のお祭り騒ぎを発信できれば、入り口になると思います。

     阿部:いろいろな楽しみ方がある、ということですね。

     森内:YouTube(ユーチューブ)のゲーム実況みたいに、副音声でいろいろな人の実況が聞ける、ランキングになっていて自由に選べるとか。

     森重:会場だけでなく、ネットやテレビの向こうの人も楽しめますね。行きたくても行けなかった人への発信の仕方も大切なポイントです。

    「東京2020アイディアソン」に向けて

     谷口:アイデアを出してもらう以上、出しっぱなしで終わらないようにしないといけません。アイデアをどう生かすか、にフォーカスをあててお話を聞きたいです。

     森内:参加する皆さんは、自分たちが主役だと思ってもらって、自分たちで最後まで作りきるという気持ちで挑んでほしい。いいアイデアなら、我々と一緒にプロジェクトチームを組んで最後まで作ってもらって構いません。実現のゴールまで走りきるマラソンにしたい。

     大谷:今回のアイデアを2020年に一緒に皆さんでつないでいけるような1回目になればいいですね。

     平山:アイデアを一歩ずつステップアップさせて形にしたい。一つでも実現にこぎつければ、ドライブがかかっていくでしょう。振り返って、「このアイディアソンは自分の原点、ターニングポイントになった」と皆さんに言ってもらえるようなイベントにしたいですね。

     森重:今回は多様なバックグラウンドのメンバーが集まっています。スポーツ・ファンの視点、選手の視点、選手をサポートしたいという視点、組織委の運営に自分が携わるような、運営に関するアイデア。いろいろな視点のアイデアが出てきてほしいです。

     室伏:若い人のフレッシュなアイデアが東京を変えるでしょう。アイデアをどしどし出していただいて、一緒に盛り上げていきたいですね。

    プロフィール
    〈1〉氏名
    〈2〉パラリンピックや障害者スポーツに対する所属企業・団体での取り組み、予定
    〈1〉室伏広治(むろふし・こうじ)さん
    〈2〉2020年東京パラリンピック大会の準備・運営。東京2020大会は同一都市として初めて2回目のパラリンピックを開催することから、東京2020組織委員会は、1964年大会やその後積み重ねた実績と経験を最大限生かすことを目指す。観客を含めた幅広い大会関係者と連携し、2020年大会に向けた取り組みを通じ、パラリンピック・ムーブメントのさらなる発展を実現。その効果を世界各地に波及させて、誰もが身近な地域で一生涯スポーツを楽しめる活力ある共生社会の実現に貢献する。
    〈1〉阿部功一(あべ・こういち)さん
    〈2〉2020年東京パラリンピック大会の準備・運営。中でも現所属においては、競技結果(タイムやスコア)を計測・記録し、会場内スコアボードやメディアに配信するシステムの導入を担当。「よりわかりやすい」、「よりおもしろい」情報配信を目指す。
    〈1〉森内一成(もりうち・かずなり)さん
    〈2〉NTTは、誰もが暮らしやすいユニバーサルデザイン社会の実現に向け、ICTの可能性を追求するとともに、グループ社員の心のバリアフリー教育を推進している。併せて、障害者スポーツのさらなる競技力向上及びその魅力の 伝播 ( でんぱ ) に資する技術研究を進めている。
    〈1〉大谷真美(おおたに・まみ)さん
    〈2〉2016年3月より、JPA日本パラ陸上競技連盟に協賛。東京2020大会に向け、社内外における障がい者スポーツ支援等の企画を担当。
    〈1〉谷口朋代(たにぐち・ともよ)さん
    〈2〉既に導入している「JAL NEXT ATHLETE MILE」という各種競技団体への寄付制度の継続や、各競技・選手への支援(スポンサー)拡大など。
    〈1〉平山哲也(ひらやま・てつや)さん
    〈2〉「三菱電機Going Upキャンペーン」という障がい者スポーツを身近に感じてもらう体験・展示イベントの事務局を務めている。社外へのPRに加えて、社内への浸透にも取り組んでいく。
    〈1〉森重和正(もりしげ・かずまさ)さん
    〈2〉読売新聞社は2016年3月、国内外の障がい者スポーツ競技会で優れた成績を収めた選手・チームを表彰する「日本パラスポーツ賞」を制定。同年12月に選考、2017年1月に表彰式を予定。オリンピックとともに、パラリンピックをはじめとする障がい者スポーツの発展・盛り上げにも注力している。自身は特に、ICTを活用したメディアサービスやイベントの企画推進を担当。

    • 学生へのメッセージを掲げる担当者ら
      学生へのメッセージを掲げる担当者ら
    2016年11月08日 17時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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