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市川美余さん解説、カーリングは「FESRAIN」を見よ

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 カーリングの女子世界選手権が4月30日にカナダのカルガリーで開幕した。日本戦はテレビで生中継されているが、北海道銀行が14チーム中6位以内に入れば来年の北京オリンピック出場枠を獲得し、9月にロコ・ソラーレとの代表決定戦が行われる。前回の平昌大会で女子が銅メダルを獲得した人気競技の「不思議」や、観戦のポイントを女子元日本代表の市川美余(みよ)さんが解説する。

競技を貫く「カーリング精神」

これがカーリング精神。平昌オリンピックの女子決勝で優勝したスウェーデンの選手たちが韓国の選手たちと健闘をたたえ合った。(2018年2月25日)
これがカーリング精神。平昌オリンピックの女子決勝で優勝したスウェーデンの選手たちが韓国の選手たちと健闘をたたえ合った。(2018年2月25日)

 まず、この競技の基本理念である「カーリング精神」についてお話しします。2月14日の日本選手権決勝で、第4エンドに北海道銀行・近江谷杏菜選手が「スイープの時に自分のブラシがストーン(石)に当たった」と自ら申し出て、完璧な位置に止まった味方の石が反則で無効となる珍しいシーンがありました。

 「カーラーは勝つためにプレイしますが、決して相手を見くだしたりしません。(中略)不当に勝つのであればむしろ負けを選びます。カーラーはゲームの規則を破ったり、その伝統を決して軽視したりしません。不注意にもこれが行われていると気がついた場合、その違反を真っ先に申し出ます。(中略)ゲームの精神は立派なスポーツマンシップ、思いやりの気持ち、そして尊敬すべき行為を求めています」(日本協会競技規則より)

 カーリングのルールブックの最初に書かれている、この言葉こそが「カーリング精神」で、選手たちは競技を始めた幼いころから、フェアプレーの大事さを教え込まれているのです。

 「コンシード(concede)」という習慣があります。終盤で点差が開いて逆転が困難と判断される場合に、相手に握手を求めて試合を終わらせることです。かつては「ギブアップ」という言葉も使われていましたが、「ギブアップ」が「参った!」と負けを認めるような感覚なのに対して、コンシードは「きょうは調子が上がらないし、相手が私たちよりうまかったから、きょうは終わりにしよう。これ以上やっても勝てないことを見極めて、相手の勝ちを認める」ぐらいの感じです。

 カーリングにも「審判」はいますが、試合中は基本的に介入しません。ルールの運用、微妙な判定など選手同士の話し合いで解決する。それがカーリング精神なのです。ちなみに、どちらのストーンが中心に近いか物差しで計測している人は審判です。

勝敗のカギは逆算にあり

 試合中に選手たちは何を考えているのか、カーリングを競技するために忘れてはいけない「フェスライン(FESRAIN)」という言葉があります。注意すべき事柄の頭文字を取ったものです。

 F:フリーガードゾーンルール
 E:エンド(今、何エンド目か)
 S:スコア(何点差か)
 R:ロック(先攻か後攻か)
 A:アビリティ(相手と自分の能力)
 I:アイス(氷の状態)
 N:ナンバー(残りのストーン)

 各エンドで序盤の5投までは、得点を争うハウス(円)の手前の「フリーガードゾーン」(F)にある相手の石をプレーエリアから出してはいけないというルールがあります。石がたまりやすくなって、面白い展開、終盤の逆転劇などスリリングな展開が生まれます。

緑色のエリアが「フリーガードゾーン」。この場合、ストーンは左から滑ってくる。(写真は一部加工しています)
緑色のエリアが「フリーガードゾーン」。この場合、ストーンは左から滑ってくる。(写真は一部加工しています)

 カーリングは10エンド(E)で行われますが、これを3つに分けて考えます。

 1~3エンドはまずは氷の状態を読み、自分たちの調子を確かめる展開。4~7エンドの中盤でお互いの駆け引きが始まります。

 カーリングでは、前のエンドで得点したチームが先攻になります。ラストロック(R)(=ラストストーン)を持っている後攻が有利で、最終10エンドに後攻を取るために、そこから逆算して終盤(8~10エンド)の戦い方を考えます。

 点差(S)や残りの石の数(N)を考えつつ、8エンドで後攻をとって、9エンドで後攻の相手に1点取らせる。それで最後に後攻をとる――という展開にもっていくのが理想的です。相手と自分の調子を見極めながら作戦を組み立てていく能力(A)も問われます。

短く投げて伸ばします

ソチ五輪世界最終予選代表決定戦。作戦を練る中部電力の市川美余選手(中央)と藤沢五月選手(右)。左は北海道銀行の小笠原歩選手(2013年9月)
ソチ五輪世界最終予選代表決定戦。作戦を練る中部電力の市川美余選手(中央)と藤沢五月選手(右)。左は北海道銀行の小笠原歩選手(2013年9月)

 そして氷上の戦いで、氷を読む「アイス(I)リーディング」は極めて重要です。試合前には認定資格を持つ「アイスメーカー」と呼ばれる専門職の人が水を撒いて「ペブル」という氷の小さな粒を表面につけます。石の接地面が減って摩擦が少なくなり、石が滑りやすくなります。

 氷の状態は見た目では分からず、実際に石を投げて初めて分かります。試合の進行につれて、そして会場内の温度でも表面の状態は刻々と変化していきます。

平昌オリンピック男子の試合。スイープは他のストーンの場所を頭に入れながらの激しい全身運動だ。
平昌オリンピック男子の試合。スイープは他のストーンの場所を頭に入れながらの激しい全身運動だ。

 スイープは、ブラシで氷の表面をこすってペブルを溶かし、表面に水の膜を作って石の伸びを良くします。スイープで伸ばせる距離は女子で1~2メートル、男子でも3メートル程度と言われています。カーリングでは「投げが8割、スイープが2割」という言葉がありますが、投げられた石を後で調整できるのが2割くらいということです。長めに投げてしまうと止めることはできず、短めに投げて伸ばすわけですが、スイーパーが強いチームは調整力が高くなるので、投げ手も気持ちに余裕ができます。

 こうした石のラインを1投ごとに把握し、瞬時に作戦を組み立てていくと選手は休む暇がありません。頭も体力も消耗するから「もぐもぐタイム」が必要なんですね。

(取材・構成、編集委員 千葉直樹)

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2025920 0 北京2022冬季オリンピック 2021/05/02 09:11:00 2021/05/02 09:11:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210430-OYT1I50046-T.jpg?type=thumbnail

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