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[フィギュアスケート女子]“絶望”の異名を取る15歳カミラ・ワリエワが越えた二つの壁

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 絶望――。来年の北京冬季オリンピック・フィギュアスケート女子で金メダルに最も近いとされるカミラ・ワリエワ(15)(ロシア)は、ファンの間でこう呼ばれている。圧倒的な実力で他者の追随を許さない、というのが理由だ。11月のロシア杯の総合得点で男子の1位選手を上回った規格外の強さを、今季グランプリ(GP)シリーズを振り返りながら明らかにしたい。(デジタル編集部 古和康行)

フィギュアスケートロシア杯・女子SPで世界最高得点をマークしたカミラ・ワリエワ=ロイター
フィギュアスケートロシア杯・女子SPで世界最高得点をマークしたカミラ・ワリエワ=ロイター

 「272.71点」。これはワリエワが11月のGPシリーズ第6戦・ロシア杯でマークした世界最高得点だ。2位のエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)に43点もの大差を付けての、ぶっちぎりの優勝に世界中のファンは度肝を抜かれた。

 この得点が意味するワリエワのすごさはどこにあるのか? ロシア杯での滑りを振り返ってみよう。

 ショートプログラム(SP)の冒頭、ワリエワはトリプルアクセル(3回転半)を含め、三つのジャンプをミスなくまとめる。ハイレベルのコンビネーションスピンも決めきる完成度の高さを見せて、87.42点という世界最高得点をたたき出した。

 続くフリーでは、2種類の4回転ジャンプを3本組み込んだプログラムを舞い、すごみはさらに増す。

 冒頭で4回転サルコーを軽やかに決めると、続くトリプルアクセルも両手を上げて成功させる。後半の3連続ジャンプのサルコーが2回転になったものの、芸術面などを評価する「プログラム構成点」は、9人のジャッジ全員が全5項目で10点満点中、9点以上を付けた。ワリエワはフリーでも世界最高得点を塗り替え、総合得点272.71点は同じ大会に出場した男子の一位選手すらも超えた。

プログラム構成点の壁…低い係数

 「男子選手を超えた」というのは、フィギュアスケートの世界では想定外の出来事だ。なぜなら、ショートでもフリーでも、女子は男子より主に芸術性を見る「プログラム構成点」を決める係数が低く抑えられているからだ。

 今のルールでは、SPでは女子0.8に対し、男子1.0。フリーでは女子1.6に対し男子2.0となっている。例えば、フリーでプログラム構成点が満点の50点と採点された場合、係数により女子は80点にしかならないが、男子は100点を得ることができるのだ。背景には、男子は4回転やトリプルアクセルを多く跳ぶので必然的に技術点が上がるのに対して、女子はそうではないという考え方がある。

フリーでも世界最高得点をたたき出し、圧倒的な強さで優勝したワリエワ=ロイター
フリーでも世界最高得点をたたき出し、圧倒的な強さで優勝したワリエワ=ロイター

 ワリエワのフリーの演技を見ると、プログラム構成点は76.27点で、男子の1位選手は88.64点だった。一方、技術点では、男子1位の選手は92.52点だったが、ワリエワは109.02点とそれを大きく上回った。

 本来、高難度のジャンプをプログラムに多く盛り込む男子の方が技術点も高くなり、係数によって上乗せされたプログラム構成点も高くなるはずだ。にもかかわらず、この大会で4回転ジャンプを三つも決めたワリエワがこれを軽々と超えていった。

女子SPで跳べない4回転

 さらに、女子はルール上、SPでは高得点が期待できる4回転を組み入れることができない。つまり、ワリエワはSPで4回転を使えないことと、女子には不利な係数という二つのハードルを越えていったのだ。

 あまりに強い。その強さをもってして、ファンの間で「絶望」という異名が名付けられたこともうなずける。

ジュニア時代から敵なし…記録づくしで北京に突入へ

 ここで今季のGPシリーズ・女子の優勝者と得点を振り返ってみたい。各大会で獲得したポイントに応じて出場権が決まる「ファイナル」は、12月9日から大阪で開幕する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で中止になった。それまでの6大会の結果は表の通りだ。

 GPシリーズは、各選手2回までしか出場できない。つまり、ワリエワは「全戦全勝」ということになる。女子フィギュアスケート界は、ロシア勢が席巻しており、このシリーズでも坂本花織がNHK杯で優勝した以外は、すべて表彰台の頂上をロシア選手が占めた。ちなみに、NHK杯にロシアから出場した選手は1人。ワリエワ、シェルバコワ、トルソワの3人は出場していない。

 この得点を見ても、ワリエワは突出している。カナダ大会では265.08点をマークし、これも当時の世界最高得点となった。そもそも、ワリエワは2019年12月のジュニアGPファイナルと2020年3月の世界ジュニア選手権の2冠を達成しており、ジュニアでは敵なしだった。今季からシニアに転向しても世界最高得点を更新しまくるという、まさに敵なしの状態が続いている。

 技術と芸術を兼ね備えた絶対女王に一矢報いる選手は現れるのか、それともワリエワが世界のスケーターたちにまた「絶望」を与えるのか。注目の北京オリンピックは、来年2月4日に開幕する。

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