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    パラアイスホッケー

    大ピンチ! 超高齢のパラアイスホッケー日本代表 平昌で巻き返せるか 

     パラアイスホッケーは、迫力とスピード感に富んだスポーツだ。その日本代表は、かつてパラリンピックで銀メダルに輝いた実績もあるチームだが、現在は苦境にあえいでいる。 平昌 ( ピョンチャン ) 大会出場を約2か月後に控えて臨んだ4か国対抗戦で、5戦全敗。経験と成熟した連係プレーで2大会ぶりのパラリンピック切符を勝ち取った平均年齢41.8歳の超高齢チームが、他国に体力差を見せつけられた。本番までに巻き返せるか。(メディア局編集部・込山駿)

    • 平昌での巻き返しを誓うパラアイスホッケー日本代表のメンバー(13日、長野市で)=込山駿撮影
      平昌での巻き返しを誓うパラアイスホッケー日本代表のメンバー(13日、長野市で)=込山駿撮影

    パラリンピック出場国に5戦全敗、計30失点

     氷上を、めまぐるしくパックが往来する。選手たちは「アイススレッジ」と呼ばれるそりに乗り、空気を切り裂いて疾走する。激突のたび、「ドゴン」「ガツン」という迫力の重低音がリンクに響いた。

     1月7~13日、ビッグハット(長野市若里多目的スポーツアリーナ)での「2018ジャパン・パラアイスホッケー・チャンピオンシップ」。平昌パラリンピック出場国のうち4チームが集まった大会は、メダル候補とされる韓国がスピードに乗った攻撃ホッケーで優勝した。ノルウェーが勝負強さを発揮して準優勝し、チェコがゴールキーパー(GK)を中心とする堅守で3位に入った。

     日本は、最下位に沈んだ。ホスト国として、ふがいない結果になってしまった。

    • 3位決定戦で敗れ、チェコの選手とあいさつする日本の選手たち(13日、長野市で)=飯島啓太撮影
      3位決定戦で敗れ、チェコの選手とあいさつする日本の選手たち(13日、長野市で)=飯島啓太撮影

     1月13日の3位決定戦はチェコに0―4、前日の準決勝は韓国に0―5。ノルウェーを含む3チームと対戦したリーグ戦でも3連敗を喫した。5試合の総失点は30、総得点は4。1試合3~4点ずつ取り合う勝負が多い競技にあって、珍しいほどの大敗だ。試合会場では、日本が失点するたびに「ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー」という1980年代にヒットした英語の曲が流されたが、これで心配せずに楽しくやろうぜというのも無理な話と感じられた。

    馬力=スピードの差を露呈

    • 熊谷昌治選手(右から2人目)らがチェコのゴールに迫るも、得点ならず(13日、長野市で)=飯島啓太撮影
      熊谷昌治選手(右から2人目)らがチェコのゴールに迫るも、得点ならず(13日、長野市で)=飯島啓太撮影

     パラアイスホッケーの選手たちは、2本の短いスティックを両手に持ち、それを氷に突き立てて、ボートをこぐようにアイススレッジを滑らせる。上体の馬力が、選手個々のスピードやスタミナに、ほぼ直結する競技といえる。

     4か国対抗戦のラスト2試合、日本はスピード負けして絶好機を逃す場面が目立った。自陣から相手ゴール近くのスペースへ縦パスを出し、点取り屋の選手が相手守備陣と競走しながら、猛然とダッシュ。そんな好機の芽なら、時折あった。得点に結びついていれば、試合展開も少しは違っていたかもしれない。

     ところが、先にパックへ到達するのは、ほとんどいつも韓国やチェコの選手だった。上体のたくましさの違いが、スピード差に表れているような光景。その差が、試合後半になると、さらに大きくなっていく傾向もあった。スタミナの不安も否めない。

     韓国戦では、ターンの鈍さも目立った。韓国選手たちは、アルペンスキーの選手のように鋭く頻繁に重心を移動させ、キュッと方向転換する。重心の移動を、加速につなげているようにも見えた。それに比べて、日本選手たちはスレッジ上で上体を直立させている時間が総じて長く、曲がる動きが緩慢な印象だ。小競り合いの場面でパックを奪うのも、たいてい韓国選手だった。日本は体の反応の鋭さで圧倒され、失点を重ねた。

     大会終了後のリンクで、あいさつに立った中北浩仁監督は「ご覧の通りの結果です。いろいろな課題を、選手も感じたと思う」と、観客席に頭を下げた。

    チーム平均41.8歳、最高齢は61歳

    • 韓国戦の敗因を語る61歳のGK福島選手(12日、長野市で)=込山駿撮影
      韓国戦の敗因を語る61歳のGK福島選手(12日、長野市で)=込山駿撮影

     中北監督はあいさつに続き、平昌パラリンピックに臨む日本代表チームの内定選手17人の顔ぶれを発表した。最年長のGK福島忍選手は、1956年12月生まれの61歳。28歳のFW塩谷吉寛選手が最年少で、唯一の20歳代だ。40歳以上が10人、30歳代が6人で、平均年齢は41.8歳にのぼる。

     日本には、2010年にバンクーバーでのパラリンピックで銀メダルを獲得した実績がある。だが、その後は主力の引退や故障が相次いだ。その穴を埋めるだけの若手も現れず、チーム力が低下。パラリンピックも、ソチ大会の最終予選で敗れ、1998年の長野大会からの連続出場が4で途絶えた。「選手間の気持ちがバラバラになった時期もあった」と、長く主将の責務を担い続けるDF須藤悟選手(47)は振り返る。

     競技の灯を消してはならぬと苦闘を続ける須藤主将らの姿に、いったん代表を離れていた銀メダリストの安中幹雄選手(46)、上原大祐選手(36)、中村稔幸選手(48)が戦列復帰。彼らの奮闘もあって昨年10月、スウェーデンでのパラリンピック最終予選を5チーム中2位で通過した。ベテランたちが意地と経験値で手にした平昌への切符といえる。

     そんな日本代表が、大舞台で直面する課題が、高齢化に伴う体力不足にほかならない。前哨戦だった4か国対抗戦の惨敗で、それが浮き彫りになった。この大会の韓国代表も40歳代が7人と決して若くはなかったが、それでも平均年齢は日本を6歳余り下回る。世界の2強という前評判の米国やカナダは、20歳代の若い力がチームを支えているという。

    経験、戦術、復調に望み

    • 選手たちに指示を出す中北監督(12日、長野市で)=飯島啓太撮影
      選手たちに指示を出す中北監督(12日、長野市で)=飯島啓太撮影

     若く手ごわい相手チームを、攻略する糸口はあるのか。中北監督は、こう力説する。「アイスホッケーはポジショニングが大切な競技。真ん中を固めれば、スピードや運動量に差があっても失点を防げる」。FW高橋和広選手(39)も「各選手が位置取りを良くし、試合の流れを読んで賢いコースを滑れば、スピードは増す」と強調。ともに、戦術やフォーメーションを修正すればスピード差は乗り越えられるとの考え方だ。

     もう一つ。選手たちの言葉によると、4か国対抗戦での日本は、本調子ではなかった。須藤主将は「目標にしてきた10月のパラリンピック最終予選が終わり、出場権を獲得できた。そこでホッとしてしまったというのが、チーム全体にあったと思う」と反省する。「最終予選後、取材対応が続いて、トレーニングの時間を削られた」と話す選手もいた。須藤主将が言うように「これから3月の平昌に向けて、みんなの調子は上がっていく」のであれば、これからの調整次第では好勝負を期待できるかもしれない。

     日本は今後、1月下旬にイタリア遠征でパラリンピック出場国との強化試合を重ねる。2月以降は熊本県などで合宿を張り、本番に備える。「我々は誰よりも経験豊富なチーム。パラリンピックの表彰式では日の丸を掲げたい。温かく見守ってほしい」と中北監督は呼び掛ける。たとえ直前の強化試合が散々でも、本番ではビックリするほどの好結果――。そんな番狂わせが、チーム球技の国際大会ではしばしば起きてきた事実も確かにある。


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    2018年01月15日 17時40分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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