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パラフォト 平昌2018

成田緑夢、左右違いのブーツがターンを変えた 

 パラリンピックに魅せられ、撮影を続ける植原義晴さんの写真とともにパラアスリートのドラマを紹介する。(文・メディア局編集部 込山駿)

  • 金メダルの滑り。華麗に、そして果敢にターンする成田緑夢(16日、バンクドスラロームで)=フォトサービス・ワン提供
    金メダルの滑り。華麗に、そして果敢にターンする成田緑夢(16日、バンクドスラロームで)=フォトサービス・ワン提供

左足に硬いスキー用、右足にスノボ用

  • 成田の使用ブーツ。左足に硬いアルペンスキー用、右足に軟らかいスノーボード用を履く(今年2月の記者会見で)=MA SPORTS提供
    成田の使用ブーツ。左足に硬いアルペンスキー用、右足に軟らかいスノーボード用を履く(今年2月の記者会見で)=MA SPORTS提供
  • 左足が右足より細い(今年2月の記者会見で)=MA SPORTS提供
    左足が右足より細い(今年2月の記者会見で)=MA SPORTS提供

 左足と右足でブーツが違うが、()き間違いではない。平昌パラリンピックのスノーボード男子バンクドスラローム(16日)で金メダルを、スノーボードクロス(12日)で銅メダルを勝ち取った。

 左足にはアルペンスキー用の硬い素材を使ったブーツ、右足にはスノーボード用の軟らかいブーツ。今季開幕後の昨年12月、日本代表の同僚・小栗大地(37)(三進化学工業)の勧めで導入した工夫だという。それまでは両足ともスノーボード用ブーツを履いていた。左右別のブーツにしてから4か月、「ターンの調子がすごく良くなった。成長することができた」という。

 ボードの前側に左足を、後ろ側に右足を置いて滑る。ボードを操る役割を担うのは、主に左足となる。しかし、左足は障害を抱える方の足だ。膝から下が動かせない腓骨(ひこつ)神経まひ。鍛えられないから筋肉もなく、右足に比べて細い。

苦手の左ターンを克服し「金」

  • ゴール後、記録表示を見つめる(16日)=フォトサービス・ワン提供
    ゴール後、記録表示を見つめる(16日)=フォトサービス・ワン提供

 その左足に、なぜ硬いブーツを履くのか。「足首から爪先までを『L字型』に固定すること」によって、体重移動のパワーがボードに伝わりやすくなり、操作しやすくなるのだという。「コントロールできない足なら、いっそのこと固めてしまって、硬い部分を利用してコントロールしてしまえ、というのが僕の意図です」と語る。

 左足に軟らかいブーツを履いていた頃は、左に曲がるターンが苦手だった。左手で左足のウェアをつかみ、引っ張り上げるように操作していた。「その必要が、ブーツの工夫でなくなった。左手を、バランスを取って風の抵抗をなくすための動作に使えるようになった」という。より美しく、安定感のあるフォームを手にした。

 迎えた16日の平昌大会バンクドスラローム、最終3本目の滑走。苦手だった左ターンの難所で、より直線的でスピードの出るライン取りに挑み、見事に成功した。48秒68は、2回目より0秒93もいいタイム。この滑りで、追いすがるライバルたちを振り切った。

 ハンディキャップを工夫と挑戦で乗り越えてつかんだ金メダル。「夢みたい。障害を負った時は、スポーツができなくなり、歩ける確率も20%と言われたのに、パラリンピックの金メダルをとれた。ケガをした人、事故に遭った人の光になれたら、これほどうれしいことはない」と、さわやかに笑った。

 成田緑夢(なりた・ぐりむ) 平昌パラリンピック・スノーボート男子日本代表。近畿医療専門学校所属。兄の童夢と姉の今井メロは、ともにスノーボードの2006年トリノ冬季オリンピック代表。自身はトランポリンやフリースタイルスキーで夏冬の五輪出場を目指したが、13年4月にトランポリンの練習中に左足に大けがをして、ひざ下がまひする障害を負った。一時スポーツを離れたが、スノーボードでパラリンピックを目指すように。平昌大会ではスノーボードクロスで銅メダル、バンクドスラロームで金メダルを獲得。陸上競技で2020年東京パラリンピック出場も目指している。1994年2月1日生まれ、大阪市出身。

 そのほかの写真もお楽しみください。成田緑夢編

植原義晴のまなざし

 今大会のスノーボーダーの中で、滑る姿が抜群に絵になる。両腕を広げてバランスを取り、低い姿勢で、ボードのエッジをしっかり効かせたフォーム。身体能力の高さと豊かなスポーツの素養を感じさせる。

 絵になる反面、カメラマン泣かせの選手だ。

 ターンの瞬間や、バンク(傾斜のあるカーブ)を曲がって出てきたところを狙って、私たちは撮影する。他選手の滑りを撮りながら、シャッターを切るタイミングをつかみ、構図を練って、本命の被写体を撮る準備を備える。

 ところが、成田の撮影では、他選手を撮っても全然、練習にならない。勢いやスピード感が、まるで違う。彼ほど旗門ギリギリを通過する攻めのコース取りをする選手もいない。ファインダーの端に姿を現したりするものだから、そんな時は慌ててカメラで動きを追いながらシャッターを切る。

 金メダルのレース結果を見て、少し驚いた。こんなに接戦だったのか。成田と他選手との実力には、タイム差以上の開きがあるように感じる。

 〈撮影者〉植原義晴(うえはら・よしはる) パラスポーツを追うフォトグラファー。出身地の横浜市で写真館を営む傍ら、2016年リオデジャネイロ・パラリンピック、17年パラアルペンスキー・ワールドカップ(W杯)白馬大会、今年のパラアイスホッケー4か国対抗戦などを撮影してきた。1970年3月25日生まれ。

【パラフォト 平昌2018】
・大企業・トヨタを動かしたパラアスリート 森井大輝(2018年3月8日)
・氷上の小さなテクニシャン 上原大祐(2018年3月11日)
・女王ファルカショバ、信頼の高速シュプール(2018年03月14日)

2018年03月17日 14時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

日本のメダル獲得数

日本人メダリスト
  • 金:3
  • 銀:4
  • 銅:3

3月18日14時現在