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[パラ友]テコンドー・太田渉子選手 スキー銀メダリストからの転身(インタビュー全文)

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 読売新聞パラリンピック・スペシャルサポーターを務める俳優の中尾明慶さん(31)と女優の仲里依紗さん(30)夫妻が、東京パラリンピックのテコンドー女子で金メダルを目指す太田渉子選手(30)と競技を体験し、対談した。パラ新競技の魅力や本番への思いを聞いた。(構成・運動部 畔川吉永、写真部 大原一郎)

 中尾明慶(以下・中尾)、仲里依紗(以下・仲)「よろしくお願いします!」

 太田渉子(以下・太田)「よろしくお願いします!」

 中尾「太田さんの蹴りの迫力がすごかったですね」

 仲「本当にすごかったです。もちろん手加減していると思いますけれど」

 中尾「怖くはないのですか。戦うスポーツじゃないですか?」

 太田「最初、格闘技は怖いとか痛いというイメージがあったのですが、実際にやってみると、蹴った時の音が爽快だったり、声を出して気合を入れたりするんですけれど、それもストレス発散になりました。やっていてすごく楽しいです」

 仲「(体験中も)ニコニコしていましたよ」

 中尾「今は会社(ソフトバンク)でお仕事をされていますよね。大変じゃないですか? 仕事と競技を両立させるのは」

 太田「日中はデスクワークなので、座りっぱなしだと腰とかがちょっと痛くなったりします。少し体を動かしたいなと思って、帰りに練習に行くんですけれども、習い事ではないのですが、それがいい感じになっています」

 中尾「会社で夕方までお仕事をして、その後に練習。毎日やっているのですか?」

 太田「はい。道場がある日は毎日やっていますね」

 仲「国際大会の時とか、長期で会社を休まなければならない時はもちろんありますよね?」

 太田「合宿とか大会に行けるように、会社からサポートしてもらっています」

新競技パラテコンドー

太田選手の蹴りを、ミットで受ける中尾さん
太田選手の蹴りを、ミットで受ける中尾さん

 中尾「パラテコンドーと(オリンピック競技の)テコンドーの大きな違いはどの辺りでしょうか?」

 太田「テコンドーは元々、韓国発祥のスポーツなんですけれども、オリンピックもパラリンピックも試合時間や八角形のコートを使うという部分は一緒です。パラテコンドーは(オリンピックでは認められる)頭部への攻撃は禁止で、パンチや突きはやっても良いけれど得点にはなりません。その2点が大きく違います」

 中尾「得点にはならないけれど、(パンチ・突きなどを)使うんですね」

 太田「そうですね。やってもいいんです」

 仲「例えば、そこでちょっと(相手の)体力を消耗させたりするんですか?」

 太田「パンチは一瞬、目くらましになりますし、近い距離で相手を押すことによって、そこに空間を作り、自分が蹴るための距離が生まれる効果もあります」

 中尾「なるほど。距離を取って、自分の間合いを作ってから蹴る。そのためにはパンチが必要。でも、相手ももちろんそれを狙ってくるわけですよね。(相手の攻撃を受けた時に)闘争心とか湧きますか?」

 太田「そうですね、一瞬ちょっとイラッとするときもあります(笑)」

 中尾「蹴られたり、殴られたりしたら誰だってそうなりますよね。でも、闘争心を持つことは大切ですよね」

 太田「テコンドーは、そのイラッとした瞬間が、逆に相手の思うつぼになるっていう部分もあります。イラッとしたから、前に出てしまうと、それを狙っている相手に返り討ちに遭うこともあります。頭は冷静にしておかないといけないですね」

 仲「冷静に、だよ。(中尾を見て)絶対に無理でしょう?」

 中尾「そう! 僕は向かって行って、すぐに返り討ちに遭うと思います」

 仲「(相手選手の)思うつぼ……(笑)」

パラスキーで3大会出場、メダルも

バンクーバー大会で銀メダルを獲得した太田選手(2010年3月21日撮影)
バンクーバー大会で銀メダルを獲得した太田選手(2010年3月21日撮影)

 仲「太田選手と私は同じ1989年生まれですね」

 太田「はい。平成元年です」

 仲「彼(中尾が)が1歳年上(1988年生まれ)です」

 中尾「同世代ですね」

 仲「同世代の方がこんなに世界で活躍されているなんて、すごくうれしい。元々スキーの選手なんですよね」

 太田「はい、そうです」

 仲「競技が全然つながらないじゃないですか、そこがすごく不思議です」

 中尾「雪国(山形県尾花沢市出身)生まれで、幼い頃からスキーを続けてパラリンピックでも活躍したんですよね」

 太田「クロスカントリースキーとバイアスロンで3大会連続でパラリンピックに出場しました」

 中尾「すごいですよね」

 仲「小さい時からスポーツにはずっと触れていたんですよね」

 中尾「それで結果も出している。今回はパラリンピックのメダルをお持ちいただいています!」

太田選手がパラリンピックの銀メダルを披露

 仲「ワァー!」

 太田「2010年バンクーバーパラリンピックの(クロスカントリースキー)銀メダルです」

 中尾「触ってもいいんですか?」

 太田「もう傷だらけです。メダルが波打っているのはデザインですが」

 仲「おしゃれですね」

 太田「この時は(メダルの形が)丸くなくて、四角いんです」

 仲「メダルを触っていると、何かいいことが起こりそうじゃないですか?」

 太田「うふふ」

 中尾「パラリンピックだと、こうやってメダルに点字も入っていたりする。メダルを(実際に)見させてもらったことは初めてです。想像していたより、重たいですね」

 太田「600グラムくらいあると思います」

 中尾「今も鮮明に覚えていますか? これを(首に)かけてもらった時のこと」

 太田「表彰台から見た景色は忘れられないですね」

 仲「冬季パラリンピックでメダルを2個も取って、もうやり切ったと思って引退。それからもう一回、競技の世界に戻るというのは、どういう気持ちなんですか?」

 太田「3大会出場してメダルも銀と銅を取って、(2014年ソチ大会で)日本選手団の旗手もさせていただいいた。自分のできることはすべてやり尽くしたと思って、ほっとしました。10代、20代と、スキー漬けの毎日だったので、それ以外のこともやりたいなと思って引退しました」

 中尾「その時、やりたかったことはなんですか?」

 太田「普通に会社に行って社会人として仕事をしたいなという思いでした。自分の時間も持ちたいなというのもありました。ゆっくりさせてもらって、趣味を見つけたり旅行したり、友達と遊んだりしました」

競技転向を決断

ミット蹴りを体験する仲さん
ミット蹴りを体験する仲さん

 仲「そこからまた競技の世界に戻った理由は?」

 太田「タイミングや出会いがありました。2015年にテコンドーが東京パラリンピックに正式採用されたのですが、その時に国内の選手はゼロで、選手を見つけなくてはいけないという話を聞きました。テコンドーってどういう競技なのかなと興味を持って見に行ったことがきっかけで、練習を始めるようになりました」

 中尾「東京パラリンピック(の競技)に決まって、そこからテコンドーを始めて代表内定を獲得。すごいですね。じゃあ、パラリンピックの世界に戻りたいというのはあまりなくて、どちらかというとテコンドーをやりたいという気持ちですか?」

 太田「実は選手としてやりたいという思いはなくて、何か一つ趣味として格闘技という分野があっても良いかなと思ったんです」

 中尾「周りの人の反応はどうだったんですか? ご家族とか友達とか」

 太田「ある時、大会に出たことが新聞に載って、それを見た父がびっくりして電話をしてきました」

 中尾「それまで言っていなかったんですか?」

 太田「言ってなかったです(笑)」

 仲「すごい行動力ですね」

 中尾「こういう行動力ある人が結果を残せるんだな」

 仲「気持ちはあっても、行動に移せなかったり、スポーツ以外でもそういうことは多いと思います」

 中尾「パラリンピックを目指そうと思ったきっかけはあったのですか?」

 太田「いよいよパラリンピックまで2年に迫った時、国内で初めてパラテコンドーの大会(2018年全日本選手権大会障害者部門)があったんですが、女子選手がいなくて。出てみないかと声をかけられ、出るんだったらきちんと練習したいと思いました。それで本格的に練習を始めることになりました」

 中尾「その時はどういう思いだったのですか?」

 太田「できるかできないかわからないけれど、一度やってみようと。それまで月1回しか練習していなかったのですが、毎週行くようになって、練習量を増やしました」

 中尾「初めての試合ですか?」

 太田「大会としては2回目でした(2016年アジア選手権で3位に入っている)」

 中尾「(2018年全日本選手権の)成績はどうだったのですか?」

 太田「女子のクラスで優勝しました」

 仲「すごいですよね!」

テコンドーの魅力

 中尾「自分でも向いていると思いましたか?」

 太田「スキーは、10キロとか15キロとか山の中をひたすら1人で走っていました。自分との闘いだったのですが、テコンドーは八角形の競技コートの周りでお客さんが応援してくれて、2分×3ラウンドの間、常に注目を浴びます。スキーとはまた違う楽しさのあるスポーツだなと思いました」

 仲「声援で『頑張ろう』っていう気持ちになれる」

 太田「そうですね」

 中尾「スキーの経験がテコンドーに生きていることはありますか?」

 太田「スキーはすごく過酷な競技なので、それをやっていたことは精神面でもプラスになります。あと、基礎体力や筋力、持久力、体幹(の強さ)、パワーというところもスキーをやっていたからついています」

 中尾「スタミナが豊富という点では、試合が後半になっても有利ですね。パラテコンドーのルールですが、360度(回転)の蹴りもある」

 太田「蹴りの種類は3種類。2点、3点、4点とあって、4点が一番難しい360度の蹴りです。3点が後ろ回し蹴り、2点は普通の回し蹴りです。頭部への攻撃が禁止されているので、相手の胴のプロテクター部分に対して、連続して蹴っていくというのが競技の見所になります」

 中尾「点数を競い合うわけですね。できるだけ多く蹴りを入れなければいけないけれど、どうしても(攻撃の際に)隙も生まれそうな気がします」

 仲「やはり防御も大事ということですよね?」

 太田「攻撃と同じくらいに防御が大事です。攻撃の前や、攻撃の後が一番、隙ができやすいので、そのタイミングでしっかり防御することが大事になってきます」

 中尾「防御が勝敗を左右するわけですね」

海外選手に勝つための戦術

全日本選手権で優勝した太田選手(2019年2月16日撮影)
全日本選手権で優勝した太田選手(2019年2月16日撮影)

 太田「あと、パラテコンドーは上肢障害者のスポーツなのですが、やはり(相手の)腕の短い部分を狙うというのが、鉄則になっています。相手の弱点を狙うというのは、どのスポーツでもあります。だから腕の短い方を前で構えるか後ろで構えるかということも、戦略の一つです」

 中尾「どちらの体勢でも戦えるように練習されているということですか?」

 太田「そうですね」

 仲「やることが多いですよね」

 中尾「4点の蹴りを決めようと思ったら、その分、隙も生まれるし」

 仲「やっぱりリスクを負うということですよね、4点を狙うには」

 太田「そうですね。4点の技は一発逆転の大技なので、最後にどうしても入れなきゃいけないというときがあります。女子は男子に比べて、大技を持っている選手はまだ少ないです。技を多く持っていることによって引き出しが増えます。相手も警戒するので、選択肢を増やすことは必要ではないかなと思います」

 仲「ふだんの練習はどういうふうにやっていますか?」

 太田「ウォーミングアップとストレッチ。それから、しゃもじみたいなテコンドー用のミットがあるのですが、それを蹴る練習をします。最後に防具をつけて対人でのトレーニングですね」

 中尾「ボクシングのスパーリングですね」

 仲「その時間が一番楽しいですか?」

 太田「そうですね(笑)」

 中尾「太田さんは58キロ超級ですが、海外にはやはり大きな選手がいますよね?」

 太田「身長が2メートル近い選手やパワーのある選手もいます。わたしは(同じクラスでは)一番小さい方なので、その選手と戦うことを想定して練習しています」

 中尾「大きい方がやはり強いのでしょうか。やりやすいこともあるのですか?」

 太田「そうですね。相手のほうが手や脚のリーチが長いので、私が遠くにいても脚が伸びてきたりとか。腕も長いと、守ることができる範囲が広くて、私が狙うのも難しいのですが……。大きい選手は動きが遅いということもあります。小さい私はスピードを生かして、相手の懐に入る攻撃を心がけています」

 中尾「東京パラリンピックでも自分の速さを生かして戦いますか?」

 太田「そうですね。一つの戦術にします」

 中尾「プライベートなこともお聞きしたいですね」

 仲「趣味は、先ほどお友達と旅行に行って、とおっしゃっていました」

 太田「今は(全日本テコンドー協会の)強化指定選手になっているのであまり旅行はできないですけれど、近くでごはんを食べたり、カラオケに行ったり。自然も好きなので山に登ったりもします」

 中尾「好きなアーティストとかいるのですか? カラオケの十八番(おはこ)とかありますか?」

 太田「懐かしい曲ですね。スピッツの『チェリー』とか……」

 中尾「そうなんですか! 大会の時にも音楽を聴いたりするんですか?」

 太田「それはあんまりしないですね」

競技を盛り上げたい

 中尾「テコンドーはまだまだ競技人口が少なくて、もっともっと盛り上がってほしいという思いはありますか?」

 太田「まだまだ新しい競技なので、私が選手として活躍して、たくさんの方に知ってもらいたい。パラテコンドーは今始めれば、日本代表になれる可能性がある競技だと思います。すごく挑戦しがいのあるスポーツです」

 中尾「趣味でもやる人が増えたらいいですよね。でも、勇気が必要かも。道場に行くのは」

 仲「女性1人で行こうというのは、なかなか最初は難しいかも」

 中尾「太田さんは、最初は連れて行ってもらったんでしたっけ?」

 太田「全日本ジュニアの強化合宿を見学させてもらったのが始めです。そこで蹴らせてもらったりとかしました」

 仲「それで気持ちよかったんですね」

 太田「エクササイズとしてもダイエットにもなるので、女性向きかなとも思います」

 中尾「里依紗、テコンドー通い出したら?」

 仲「そういう日も近いかも……」

 中尾「東京パラリンピックへの意気込みとか目標を聞かせていただけたらと思うんですけど」

 仲「やっぱりドキドキしますか?」

 太田「スキーの時代からたくさんの方が応援してくれて、新しい競技になった今も変わらずたくさんの方が応援してくれます。会社のサポートもあります。東京パラリンピックでは最高のパフォーマンスをして、勝つ喜びをみなさんと分かち合いたいなと思います」

 仲「パラテコンドーは東京大会で初実施ですが、その魅力も伝えていきたいですよね」

 太田「フルコンタクトで戦う競技なので、迫力や多彩な足技を見ていただきたいなと思います」

 中尾「見ている側も一瞬も気を抜けないというか、まばたきしている間にポイントが入っちゃう可能性があるから、見る側も非常に楽しいスポーツですね。そこで太田さんが狙うのは?」

 太田「東京パラのテコンドーは、1日で予選から決勝まであるんですけど、周りに決勝しか観戦チケットを取れなかったという人がいるので絶対そこまでは行かないと、と思います」

 中尾「そこで勝つ。楽しみですね」

 仲「またメダルを触らせてもらえるように、私たちも一生懸命応援しましょう!」

 中尾「ありがとうございました」

太田選手の経歴などがわかる記事はこちら

  なかお・あきよし  1988年6月30日生まれ。東京都出身。役者のほか幅広い分野で活躍。テレビ東京「SUPER GT+」のMCも務める。ゴールデンウィーク公開予定の「劇場版 ひみつ×戦士 ファントミラージュ! ~映画になってちょーだいします~」、今夏放送のフジテレビ「桶狭間 OKEHAZAMA~織田信長~」に出演。

  なか・りいさ  1989年10月18日生まれ。長崎県出身。ドラマ、映画に出演し、モデルとしても活躍。NHK連続テレビ小説「エール」東京編、日本テレビ新日曜ドラマ「美食探偵 明智五郎」、映画「はるヲうるひと」に出演。

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1146330 0 東京パラリンピック 2020/04/06 05:00:00 2020/04/07 16:15:11 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/04/20200402-OYT1I50044-T.jpg?type=thumbnail
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