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「収入に影響」19団体…パラあと1年 26団体アンケート

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 東京パラリンピック開幕1年前に合わせ、読売新聞が26のパラ競技団体に行ったアンケート調査では、新型コロナウイルスの流行を受け、選手強化や運営資金に大きな影響が出ていることが浮き彫りとなった。ただ、開催が1年延期になったことを前向きに受け止める団体も少なくない。

企業撤退 2000万円減も

 競技団体の資金面について、自己収入に影響があったと答えた団体は73%(19団体)に上った。このうちすでにスポンサー企業が離脱したのは21%(4団体)、協賛金を減額されたのは11%(2団体)だった。

 水泳(日本身体障がい者水泳連盟)では今春以降、協賛企業18社のうち2社が撤退、1社が協賛金の拠出を停止した。コロナ禍で業績が悪化し、延期による追加費用の負担ができないことなどが理由で減収は約2000万円に達するという。

 協賛金は、国などからの強化費と違って使途の制限がないため団体運営には欠かせない。このため同連盟はクラウドファンディングを活用して個人から寄付を募る仕組みも検討している。担当者は「今年は協賛企業の獲得に向けた『攻めの年』になるはずだったのに。このままパラスポーツへの注目が下火にならないといいが……」と不安を隠せない。

 陸上(日本パラ陸上競技連盟)でも1社が離脱し、別の企業が協賛金を減額したため計350万円の減収となった。その一方で、苦境を知った別の企業が新たに協賛し、既存のスポンサーが協賛金を増額してくれたといい、担当者は「本当にありがたい」と感謝する。

 このほか、テコンドー、ブラインドマラソンも、協賛企業の離脱があったと競技団体が回答した。

延期・巣ごもり 糧に…練習工夫、戦力発掘

 強化計画は、根本から見直しを迫られている。調査では、強化合宿や海外遠征、主催大会の延期、中止などを挙げる声が多かった。だが苦境の中でも、前向きな回答もいくつか見られた。

 まずは時間を有意義に使えるという意見。「トレーニングの機会が増え、競技力向上に生かせる」(シッティングバレー)、「準備期間が長くとれる」(ボート)などの声があった。

 ボッチャは選手の自宅などをオンラインでつないで戦術を共有したり、狭い場所でもできる「テーブルボッチャ」を駆使するリモート合宿を実施。杉村英孝選手(伊豆介護センター)は「競技への意欲が高まった。練習はアイデア次第」と歓迎する。柔道は組み手など対人練習ができない分、「日本人選手の課題であった筋力トレーニングに集中することができた」と、「巣ごもり」を弱点克服のきっかけにしている。

 「20歳過ぎの若い選手が毎年記録を更新している」(陸上=日本知的障がい者陸上競技連盟)と、新戦力発掘や今後の成長への期待を寄せる声も。東京パラの代表内定は50人を超えているが、ゴールボールが女子の一部見直しを検討するなど、競争による活性化を図る動きも見られる。

重症リスク「高い」35%…障害・競技に応じ対策必要

 新型コロナウイルス感染時の重症化のリスクについて、一般的に障害者は健常者よりも高いと考えられている。重症化リスクについて、35%(9団体)がパラ選手は五輪選手に比べて高いと答えた。車いすラグビーは「頸髄けいずい損傷による呼吸器系のまひ症状が既往症としてある(選手がいる)」と説明。アーチェリーも原因不明や呼吸器系の疾患で障害を負った選手がいるとし、「新しい生活様式だけで大丈夫なのか」と不安をのぞかせる。

 約半数(12団体)は「わからない」と回答。トライアスロンは「障害によって影響や選手の声は異なる」とし、車いすテニスは「基礎疾患の状況でそれぞれ違う」ことを理由とした。「思わない」と答えたのは11%(3団体)だった。

 また東京大会開催に向け、ワクチンや治療薬の開発、検査体制の充実を求める意見のほか、車いすや義足などのパラ特有の用具があることから、「五輪競技では使わない器具が多くその消毒や、移動などで色々な所に触れることへの対応」(シッティングバレー)などの課題の指摘もあった。

 カヌーの瀬立せりゅうモニカ選手(江東区カヌー協会)は今月の競技会後、「協会の方もすごく新型コロナのことを勉強して大会に臨まれたと聞き、安心して参加できた」と話した。選手が抱える障害や競技特性によって、講じるべき対策は多岐にわたることがうかがえる。

「来年開催すべきだ」6割

 

 多くの競技団体が来年の開催を不安視しつつも、障害者を巡る環境を変える可能性のあるパラリンピックに大きな期待を抱いている様子も浮かび上がった。

 「来年開催できると思うか」との質問については、「ワクチンや治療薬が確立されていない現段階では、何とも言えない」(水泳=日本知的障害者水泳連盟)などとし、69%(18団体)が「わからない」と回答。「できる」と答えたのは23%(6団体)で、トライアスロンは「選手、スタッフの安心安全を第一に考えて開催してほしい。開閉会式にこだわらず、各選手団の滞在を最短期間にするなど計画してほしい」と注文をつけた。

 「現時点で開催するべきかどうか」との質問には、58%(15団体)が「来年開催すべきだ」と回答した。ボッチャは「障害者に対する接し方が大きく変わるための大切なターニングポイントになる」と意義を強調。卓球(日本肢体不自由者卓球協会)は「パラが日本で開催されることはしばらくないと考えられる。ぎりぎりまで可能性を追求し、適切なタイミングで最終判断を下してほしい」と求めた。

 国などへの要望については、「参加する海外の選手をどういう基準で入国させるのかを早く明示するべきだ」(柔道)といった意見が出された。

選手に寄り添いしっかり準備…橋本五輪相

はしもと・せいこ 1964年、北海道生まれ。92年アルベールビル冬季五輪スピードスケート女子1500メートルで銅メダルを獲得した。冬季五輪に4回、夏季五輪に自転車競技で3回出場。95年参院選に自民党から立候補して初当選し、昨年9月に五輪相就任
はしもと・せいこ 1964年、北海道生まれ。92年アルベールビル冬季五輪スピードスケート女子1500メートルで銅メダルを獲得した。冬季五輪に4回、夏季五輪に自転車競技で3回出場。95年参院選に自民党から立候補して初当選し、昨年9月に五輪相就任

 あと1年となった東京パラリンピックへ向け、橋本聖子五輪相(55)が読売新聞の取材に応じ、「選手は前向きな考えで準備を進めてほしい」などと語った。(聞き手・運動部 清水暢和)

 五輪に続き、先日、パラリンピックの日程も正式に決まった。これで、より現実的に大会をイメージできる。365日のうち、調子を最大のピークに持っていけるのはそれほどなく、私の経験では4日間くらい。競技日程が決まったことで、選手はトレーニングのイメージが作りやすくなった。パラの成功なくして東京大会の成功はない、という認識の下で準備を進めている。

 延期で、1回はモチベーション(意欲)が下がる選手も少なくないと思う。周りのコーチ、ドクターらが選手に寄り添うことができるかが大事。強く励ました方がよいのか、しない方がいいのか。現場を知る周りの方が、選手の特性を見極め寄り添うことが必要。それには統括団体やスポーツ庁のほか、私のような東京大会を準備している役割の人間が、選手に寄り添う方たちに、さらに寄り添うという「円」のようなイメージがいい。これは日本の得意分野だと思う。そして最後まで諦めないという特性をいかし、メダルをつかむ力が日本人にはあると考える。

 パラを取り巻く環境は徐々に改善されている。かつて私が、パラに特化した議員連盟を作った時(1999年)、海外ではパラ専門のナショナルトレーニングセンター(NTC)があった。議連もそれを目指し、今、日本でもパラに配慮したNTCイーストができた。あとは東京にすぐに来られない、全国各地の選手に対し、各地域にパラ強化の拠点が増えてほしい。

 (パラの魅力の一つとして)目に見えない世界だから、見えるものがあると感じる。タンデムという視覚障害の2人乗り自転車で走ったことがある。目が見えるパイロットが前方で、私が後ろで目隠しをして乗ると、本当に怖かった。仕掛ける場面で2人が同時にこぎ出すのが大切だが、かけ声ではわずかに遅い。視覚障害選手に聞くと、パイロットの左腰あたりに自分の右頬をつけて、踏み出す直前の筋肉の動きを感じてこぎ出すという。こういうことを知ってほしいし、五輪選手の強化にもつながるものがあると感じた。

 新型コロナウイルスの影響で、色々なアンケート調査でも、大会開催に対しての支持率が低くなっているのは聞いている。選手たちに安心してもらえるような、安全な大会に向け、しっかりとした準備を続けたい。そこで「来年の大会を楽しみにしよう」という、国民の期待の声が多くなっていくことが、より選手を勇気づけることになると思う。選手にはあと1年、更にやれることがあるという前向きな考えで、準備を進めてほしい。ート/

予防・予算 課題洗い出す…山脇康・IPC理事

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会副会長で国際パラリンピック委員会(IPC)理事を務める山脇康氏=写真=は、大会開催について不安が寄せられた調査結果を、「(コロナ感染拡大など)自分たちでコントロールできない要素がカギになっているため」と分析。「感染予防や予算など課題を全て洗い出し、都や政府などと(解決策を)詰めていかないと」との考えを示した。

 また資金面への影響が出ている多くの競技団体の実情を理解する一方、「アイデアや行動力をもって世の中の変化に対応すれば、『一緒にやりましょう』というスポンサーが必ずいるはず」。そのためにも東京大会は、障害者スポーツの意義を訴えるまたとない好機――と強調する。

 延期を前向きに捉えるパラアスリートならではの姿勢に頼もしさを感じたとし、「最高の舞台や環境を作る」との思いを新たにしていた。

◆パラ実施競技の26団体

日本身体障害者アーチェリー連盟

日本パラ陸上競技連盟

日本ブラインドマラソン協会

日本知的障がい者陸上競技連盟

日本障がい者バドミントン連盟

日本ボッチャ協会

日本障害者カヌー協会

日本自転車競技連盟

日本障がい者乗馬協会

日本ブラインドサッカー協会

日本ゴールボール協会

日本視覚障害者柔道連盟

日本パラ・パワーリフティング連盟

日本ボート協会

日本障害者スポーツ射撃連盟

日本身体障がい者水泳連盟

日本知的障害者水泳連盟

全日本テコンドー協会

日本トライアスロン連合

日本肢体不自由者卓球協会

日本知的障がい者卓球連盟

日本パラバレーボール協会

日本車いすバスケットボール連盟

日本車いすフェンシング協会

日本車いすラグビー連盟

日本車いすテニス協会

 

 社会部・大舘匠、石原宗明、運動部・畔川吉永、矢萩雅人、帯津智昭が担当しました。

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1429027 0 東京パラリンピック 2020/08/24 05:00:00 2021/01/08 19:58:55 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200823-OYT1I50041-T.jpg?type=thumbnail
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