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「オリパラ一体」「障害者スポーツの価値広めるチャンス」鳥原JPC会長インタビュー

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東京パラリンピックの取り組みを語る鳥原光憲JPC会長(2020年12月18日、東京・中央区で)
東京パラリンピックの取り組みを語る鳥原光憲JPC会長(2020年12月18日、東京・中央区で)

 日本障がい者スポーツ協会会長(JPSA)で、日本パラリンピック委員会(JPC)会長も務める鳥原光憲氏(77)が読売新聞のインタビューに応じた。「パラリンピックの成功なくして(オリンピックを含めた)東京大会の成功はない。我々の役割を果たしたい」と、パラリンピックの意義や役割を強調した。(聞き手=運動部 畔川吉永、撮影=写真部 鈴木毅彦)

 ――新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、東京オリンピック・パラリンピックが延期となった。本番を控えての気持ちは?

 「東京大会の三つのコンセプト(「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」)のうちの一つに「多様性と調和」を掲げている。これは共生社会を育む契機となるような大会にするということで、パラリンピックはそれに大きく関わっている。オリパラは一体で、パラリンピックの成功なくして、東京大会の成功はないという認識は(大会が延期になっても)変わらない。成功に向けて我々の役割を果たしたい。成功のための不可欠な条件は、前々から言っているが、全競技会場を満員の観客で盛り上げ、世界のアスリートたちがそこで最高のパフォーマンスを発揮するということ」

 「そのために我々は競技力の強化、あるいは、ファン作りに全力を挙げてきた。ところが、新型コロナウイルスで大会を取り巻く環境は大きく変わった。コロナ対策を徹底し、安全・安心な大会にするため、観客数の制限などは不可避だと思うし、選手や関係者にも厳しい行動制限が課されるはず。そんな状況でも、アスリートたちがベストを尽くせる環境をいかに作ることができるか、これが成功のためのカギだと思っている」

 「その環境作りに欠かせないのが、日本の『おもてなしの精神』やパラリンピックを応援する『心』だと思う。日本中が大会に注目して、様々な形で応援の気持ちを伝えることができれば、いかなる状況であってもアスリートが心を熱くしてベストを尽くせるような環境になると思っている」

 「コロナ禍を克服した世界の象徴としての、歴史的に意義のある東京大会に向け、(大会組織委員会や日本オリンピック委員会、東京都、政府など)オールジャパンの連携、これが期待されていると思う。オールジャパンの連携があれば、大会を成功させることができると思う。我々としても引き続き、パラリンピックへの関心を高めて、一層のファン拡大などの努力を続けたい」

東京パラリンピックに内定している選手や義足の女性らが出演したファッションショー(2020年8月25日、東京・港区で)
東京パラリンピックに内定している選手や義足の女性らが出演したファッションショー(2020年8月25日、東京・港区で)

 ――東京パラリンピックでの目標は変わらないのか?

 「(金メダル総数20個、世界ランク7位相当)それは変えることはない」

 ――各競技のジャパンパラ競技大会に海外から対戦チームを招くことができないなど、強化面で懸念される点はないか?

 「順調というか、心配なく進んでいると思っている。大会が1年延期になったことで、国内の競技大会や練習環境が変わるなどして、アスリートへの影響は確かにある。だが、河合純一JPC委員長を中心に、リモート会議などを頻繁に行ってアスリートらとコミュニケーションを取っているし、必要な情報も提供できている。日本選手全体の連帯感は取れていると思う」

 「1年延期による負担の増加はあるが、それぞれが練習の仕方を工夫し、『延期をプラスに転じるんだ』という気持ちで取り組んでいる」

 ――前回2016年リオデジャネイロ・パラリンピック前に比べ、JOCなどとのつながりが深まった部分はあるか?

 「たくさんある。例えば今回の新型コロナ対策においても、オリとパラの競技団体が一緒に対応しているし、アスリート委員会を通じて、選手同士のコミュニケーションも進み、これが(選手の)精神面で、かなりプラスになっている」

 ――今回は公式ユニホームもオリとパラで統一した。

 「組織委員会自体がオリパラ一体化を重視している。また、今の(JOCの)山下泰裕会長も常に『オリとパラは一体だ』という考えで進めている。望ましい状況だと思う」

 「東京パラに向けたJPCの『特別強化委員会』メンバーには、JOCで強化を経験した人がかなり入っている。オリンピックでの経験をパラリンピックに生かす形ができている。東京パラリンピックでその成果を見つつ、特別強化委をどう発展させるか、を考えたい」

 ――障害者スポーツの人気の向上や普及策で考えは?

 「ファンを増やしていくという点を重視している。一つは小中学校の児童や生徒に対するパラスポーツ教育や体験学習を大事にしている。さらに、企業にパラスポーツの支援活動を積極化してもらえるようにする。すでにスポンサー企業の社員や家族が(大会運営などの)ボランティア活動に積極的に関わってくれている。また、(成果として)各自治体で、パラスポーツの普及啓発活動が活発に行われるようになっている」

 「ファンはどんどん増えている。競技場にも最近は児童や生徒らがたくさん集まり、応援して盛り上げてくれている。僕はこういう姿が今後のパラスポーツの発展のためにも大事だと思っている」

 「メディアにも積極的に報道してもらっていて、パラスポーツの認知度も飛躍的に向上している。そういったものをベースにしながら、パラスポーツのファンを地道に、持続的に増やすような考え方を大事にしている」

パラリンピックのシンボルマークに使われる赤、青、緑の3色に染まった、車いすバスケットボール会場となる有明アリーナ(2020年8月24日、東京・港区で)
パラリンピックのシンボルマークに使われる赤、青、緑の3色に染まった、車いすバスケットボール会場となる有明アリーナ(2020年8月24日、東京・港区で)

 ――新しい選手や愛好家の発掘・育成面では体験会を実施するなどし、成果も上げている。

 「まだ十分にはできていないが、この5年ほどの競技人口の伸びを見るとかなりしている。もちろん、東京大会開催というきっかけもあるが、その契機をうまく利用して伸ばしている。競技人口そのものは、もともとそんなに規模は大きくないが、例えば、ボッチャはリオ・パラリンピックで銀メダルをとって以降、急速に関心が高まった。2015年度の日本ボッチャ協会の会員数は200人弱だったが、今は約380人と2倍近くに増えている」

 「東京パラリンピック新競技のバドミントンは2015年度に35人しかいなかった。それが今は150人近くになっている。パラ・パワーリフティングは約80人から170人ほどになった。車いすラグビーやブラインドサッカーも約1.7倍に増えている。東京パラリンピック実施競技団体全体では約5500人から約6600人と1.2倍に増えている」

 ――この伸びはすごい。

 「それだけパラリンピックへの関心が高まっている。障害のある人が、自分もパラスポーツをやりたい、あるいは代表選手になりたいという気持ちで高ぶっているということ。そういう意味では、国内での競技大会の魅力を上げるとか、パラリンピック本番以外でも、いろいろとやることは重要だ。競技大会の魅力を上げるという意味では、競技大会(の数)を多く増やすことは難しいが、まずは内容を充実させたい」

 ――鳥原会長はサッカー経験がある。日本ではサッカーもマイナー競技だった時代から盛り上がった。障害者スポーツの盛り上がりにも通じる部分があるのでは?

 「トップで活躍する姿も必要だが、小さな子供たちや中学生、高校生が、(競技の)裾野、裾野でスポーツを通じて健全な精神を育てることが大事。そういうスポーツの価値を障害者の誰もが享受できるようにする。これが一番大事なところ。そういうことを考えると、日本全国のいろいろな地域で、障害の種類や程度に応じて、誰もがスポーツを楽しめる環境を作ることが最大の課題だと思う」

 「まず、社会全体が障害者スポーツの価値を知りたいという意識にならないといけない。そのための意識を巻き起こすのがパラリンピック。今回はそういう意味で東京大会開催は非常に大きなチャンスだ。裾野を広げるための環境整備につながってこそ、パラリンピックの価値が見いだせるということだと思う」

鳥原 光憲 (とりはら・みつのり) 1943年、東京都出身。67年に東京ガス(本社・港区)に入社し、社長、会長を歴任し、現在は特別参与。2011年にJPSA会長に就任し、14年からはJPC会長も兼務する。東京大学や東京ガスではサッカー選手として活躍し、現役引退後は現J1・F東京の前身のチームの監督も務め、Jリーグ入りにも貢献した。現在もサッカーの観戦を趣味にしていて、F東京の試合には多く足を運んでいる。

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1760742 0 東京パラリンピック 2021/01/11 05:00:00 2021/01/11 05:30:11 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210109-OYT1I50075-T.jpg?type=thumbnail
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