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昨年10月、東京五輪・パラリンピック大会組織委で競技の運営を担うスポーツディレクター(SD)に就任した小谷実可子さん(54)に、東京パラリンピックへの思いを語ってもらった。(聞き手 清水暢和)

選手時代の感覚では、数年先の時期のぼんやりとした憧れとは違い、半年前は大会を現実に感じられる時期だと思う。SDとしては安全、安心な形で五輪・パラリンピックを成功させたい気持ちでいっぱい。
私がパラリンピックを最初に強く意識したのは、1998年長野冬季大会。メディアの特派員のような形で観戦したが、衝撃だった。それまでは「障害を抱えながら、頑張っている選手」というイメージ。けれど、生で見て、障害も一つの特徴で、鍛え抜かれた選手の技術、プレーぶりは五輪競技と何も変わらないと感じた。レベルの高いアスリートは、オリパラ関係なくすごく美しい。座位のチェアスキーの選手が滑るさまを「スイレンの花のようだ」と表現した記憶がある。
ただ、パラを巡る環境については、まだ課題も感じる。SDに就任する前、都内で行われていたパラバドミントンの試合を街を歩いている際に偶然知り、観戦した。試合は本当に見応えがあったが、後で聞いたところ、かなり有名な、強い選手も出場していたと知った。選手のストーリーなどの情報を分かって見た方が、その競技をもっと楽しめるはず。試合の告知を含め情報発信は課題の一つで、これから重要になると考えている。
新型コロナウイルス感染拡大で大変な中だからこそ、パラリンピアンに期待したい。予期せぬ事故、病気や大きな困難にぶち当たり、そこから前を向き、工夫して努力して進んできた方々。今、様々な制約があり、苦労を強いられている方々に、パラリンピアンの力強い姿が前を向くメッセージになると考える。
東京2020大会が、障害のある方々との垣根をなくす、大きなきっかけになってほしい。オリパラ開催はゴールではない。何十年か先、その都市が、国が、どう変わったかが重要。東京大会は、理想の社会に向けた一つの通過点であってほしい。