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読売新聞パラリンピック・スペシャルサポーターを務める俳優の中尾明慶さん(32)と女優の仲里依紗さん(31)夫妻が、東京パラリンピックの陸上で金メダルを目指す佐藤友祈選手(31)(モリサワ)と対談し、パラ陸上競技の魅力や本番への思いを聞いた。

レスリング、合唱団を経験
中尾明慶(以下・中尾)、仲里依紗(以下・仲)「よろしくお願いします!」
佐藤友祈(以下・佐藤)「よろしくお願いします!」
中尾「いまは練習後ですか」
佐藤「午前中は練習してこれからまた3時頃から、午後トレーニングです」
中尾「大体朝にトレーニングして、今はパラに向けて午後もトレーニングして、という感じですか」
佐藤「はい。そうですね」
中尾「子供時代ですが、スポーツ、格闘技をやられていたとお聞きしたのですが」
佐藤「そうですね。レスリングです」
中尾「子供時代からスポーツは得意でしたか」
佐藤「いや、苦手でした」
仲「でもお父様が…国体(レスリング)で3位。それでも苦手な方だったのですか」

佐藤「レスリングをやるようになったきっかけもそもそも、低学年の頃って、マット運動から入るのですが、マット運動をしているのが楽しそうで、『僕もやりたい』と言って入ったんです。学年が上がるにつれて少しずつ、マット運動からタックルとか、そういう組み技ではないですが、レスリングの体のぶつかり合いが始まり、ちょっと僕の中でそれが、『え?こんな楽しそうに最初やっていたのに、みんな本気になりだしているのかな』と」
中尾・仲「ははは!」
佐藤「それでついていけなくて」
中尾「もう嫌になったんですね、レスリングが」
佐藤「そうですね。トラウマではないですが、基本的に争うのが好きではないので。何かもう仲良くしたいけれど仲良くできないみたいな…」
仲「平和主義者だったんですね」
中尾「では子供時代は夢とか、何かあったのですか。全然アスリートではなかったんですか」
佐藤「そうですね、子供の頃はそれこそSMAPのメンバーに入るみたいな」
中尾「思っていたんですか!?僕もジャニーズに入りたかったです。では芸能活動に興味があったということですか」
佐藤「そうですね。はい。目立つことをすることが好きだったので」
中尾「聞いた所によると、演劇も興味を持たれていた」
佐藤「演劇というか、中学校時代に、地元で少年少女合唱団みたいなのがあって、僕は入っていて、当時はソプラノで歌っていたのですが」
仲「えー!すごい、高い声が出るんですね」
中尾「ソプラノって高いの?」
仲「高いよ、あはは。『ハッハー』て感じだよ。すごい」
佐藤「その合唱団でミュージカルをしたことがあって、僕はミュージカルでワクワクドキドキして楽しかった。だからそっちの方のことをやってみたいなという感じで。関連を持ってSMAPさんにみたいな…」
中尾「当時好きな俳優さんとかいたのですか」
佐藤「そうですね。当時、そんなにめちゃめちゃドラマとか見ていた訳ではないですが…、あの米倉涼子さんとか」
中尾「そうなんですね。好きなあこがれの人」
佐藤「あと、木村拓哉さんとか香取慎吾君とか」
仲「ご自身が歌うことが好きだったり、合唱団に入ったりしたのが今のパラの競技にすごい役に立っているという感じですね。リズム感が大事とか、ギターをお父さまがやっていらっしゃったんですよね」
佐藤「そうですね。リズム良く車輪をキャッチするみたいな所が、今の競技に生きてきているかなという気が」
ロンドンパラで見たアスリートの姿に感動
中尾「プライベートな話になるのですが、病気をした時の気持ちというか、どういう感じでしたか」
佐藤「僕自身、健常者の頃は、障害を持つ人とあまり関わる機会がなかったんです。いざ自分が障害者になってしまった時に、これから何というか、僕の人生どん底だ、ではないですが、暗く感じたんです。で、1年半も病名がわからない時期があって、どうしたらいいのか、という感じでさまよっていたんですね。2012年3月にようやく、病名、診断が下りて、脊髄炎で障害者手帳も交付されて、ああ、何かようやく健常者でもない障害者でもない、宙ぶらりんの変な立場ではなくなった。これから好きなことというか新しいことにいろいろチャレンジしていける、ということで、その半年後のタイミングでロンドンパラリンピックを見て、それまで自分が社会的弱者という見方をしていた人たちが国を代表して、競技場を走っている。その選手たちの上半身がすごく鍛えられていてかっこ良かったんです。その瞬間、僕は次のリオパラリンピックに出場してそこで金メダルを取ると決めて競技を始めようという感じでスタートしました」
仲「ロンドン五輪パラって結構記憶に新しく感じるんです。つい最近だよね、って思うのですがこの短期間で、すごいですよね」
中尾「4年後までに金メダルを取るぞ!と決断して、ご家族はどうでしたか」
佐藤「僕自身がそれをやり切る、という感じではとらえていなかったと思います」
中尾「でもまさか本当にリオに行ってメダル取るなんてっていう…」
仲「小さい時レスリングが嫌と言っていた子だよな、って親からすると思いますよね」
中尾「争いごとが、苦手で。パラリンピックの世界では闘争心みたいなものは絶対に必要だと思うんですが。子供時代に苦手だった気持ちは変わってきたのですか」
佐藤「そうですね。まぁ基本的にボディコンタクトはないので、そういう意味では安心して」
中尾「痛いのはないから安心してっていう感じ」
佐藤「苦しいとかきついはあるのですが、それは逆に僕は好きなので。走っていてどんどん自分のことを追い込んで、苦しくなった時は先の景色を見ると常に決めている。だからゾーン(すごく集中した状態)に入ってパフォーマンスを発揮するみたいな」
中尾「ゾーンはあるんですか、やはり」
佐藤「僕はあると思っています。というか、実際入っているので」
中尾「よくアスリートの方が言いますが、その瞬間はどういう感覚に近いんだろう」
佐藤「高校時代におじいちゃんの影響で、囲碁をやるようになったんですよ。そのおじいちゃんが『友祈、夏休みだし囲碁やらんか』」って誘われて打つことになったんですが、その時に、教えてあげるからと言われたんです。ちょっとやってみようかなという感覚でやってみたら、見事にいいように誘導されてぼろ負け。それがめちゃめちゃ悔しくて。絶対半年以内におじいちゃんに勝ってやる!と決めて、地元の碁会所にも通って、やはりどんどんのめり込んでいくんですよね。で、のめり込んで、囲碁は結構静かなスポーツというか盤上のボードゲームみたいな感じなので、そういう時の集中した時のゾーンって、時間が経つのがめちゃめちゃ早いんですよ。逆にスポーツで、速度とかそういうのを求めていくようなもの。スポーツ系に関しては時間の経過がすごくゆっくりになります」
中尾・仲「へーえ!」
中尾「ゴールまでが長く感じるとしんどさはありますよね?それもあまり感じなくなるのですか」
佐藤「周りがすごくスローに見えるというか、自分自身、俯瞰して見ている感じなので、もうここで速度を上げていって今後ろからこの選手が追い上げてきた、みたいな感じで」
中尾「かっこいい。なんかドラマみたいだね」
仲「1年、このコロナ禍で延期になってしまった。その気持ちはやはり私たちでさえ、なんかすごく、寂しい気持ちというか、見る側としても思ったのですが。やはりやる側というか選手の気持ちはどうでしたか」
佐藤「昨年の2月ですか。国内でコロナウイルスの名前を初めて聞くようになって、もうその年の五輪パラリンピック開催は厳しいかも知れないなと思ったんですよ。でもモチベーションを落とさずに、中止にならなければ、まだこの4年間、5年なのか6年なのか分からないですが、やってきたものを出すチャンスは絶対あるからと思って、気持ちを切り替えて、もう4月くらい、3月初めくらいから、2021年を想定して調整を始めました。2020年に大会が行われていても、ちゃんと世界記録を出して金メダル獲得というのを達成していたと思いますけれど、さらにより準備期間をもらえたという感覚で過ごすようにして、ちょうど9月とかそのタイミングでパラ陸上の日本選手権が開催になったので、仮想東京パラリンピックで、そこに合わせるためにどういう感じで練習を組み立てれば良いかというのを、考えて調整していました」
中尾「延期されたことによって今、コンディションはめちゃくちゃいい状況になっているということですよね」
佐藤「仕上げていきます」

中尾「リオのライバルで、金メダルを取ったレイモンド・マーティン選手(米)にはどうしてもリベンジしたいという思いは強くありますか」
佐藤「そうですね。リオで金メダルを取ると決めて競技を始めていたので、それが銀メダルになってしまってすごい悔しくて。メダルを取れたのはうれしいが、とりあえず銀メダルかと、悔しかったです。たぶん、金メダルを取っていたら、東京大会に陸上で出ていたかどうかも怪しいくらい、とりあえず銀メダルでリオ大会を終われて良かったなと今では思っています。東京大会、さらにその先への連覇への目標みたいなものができてきたので、たぶん、リオで金を取っていたら、世界記録を狙うというところまで考えはいかなかったと思います。東京大会で、自国開催で世界記録を更新して金メダルを取る方が、ストーリー的にもかっこいいというか」
中尾「かっこいいですね。今回もマーティン選手が一番のライバルになりますか」
ライバルは自分自身、東京では世界記録で金メダルを
佐藤「世界各国から来る選手たち、もちろん日本で他に出場する選手もたくさんいるが、その選手を含めてみんなライバルだと思っています。でも一番はやっぱり世界記録を2018年に打ち立てたときの僕が一番のライバルであり、条件もトラックのコンディションも含めて、体のコンディションも含めて、そろっていたので、ちゃんと記録を出すことができた。今度はトラックコンディションがどんな状態であろうと、世界記録を出して金メダルを取ると決めているので、そこに向かっていくにはやっぱり、世界記録を出したときの自分のビジョンというか、ゾーンがライバルになってきます」
中尾「すごい楽しみだね」
仲「本当にすごい、絶対に最有力候補じゃないですか。絶対に金という期待はうれしいですか。それとも、金、金と言われていたら、もうやめて、となるのか、どっちなんだろうな」
中尾「僕なんか眠れなくなりそう。プレッシャーで」
佐藤「緊張はします。というか、緊張しなくなったら僕は競技を引退すると決めている。緊張感がなかったら、120%以上の力を発揮するなんてことはできないと思っているので。緊張できているこの環境がすごい、自分にとって幸せだし、自分にとって価値のあるものだというふうに思っています。みんなが期待してくれれば、期待してくれる分だけ、世界記録のタイムが0・01秒ずつどんどん縮まっていくという気がします」
仲「いい緊張感になるということですよね」
中尾「もう間もなくじゃないですか。心境は」
佐藤「もう楽しみですよ。だって、1年延期になっているわけですから、5年かけて調整してきたものを発揮する、もちろん、コロナの影響で無観客になるか、有観客になるかはわからないけれど。それでも、どんな状況であれ、ベストを尽くしてちゃんと目標として公言している世界記録更新と金メダル獲得は達成したい。オリンピックは健常者のスポーツの世界ナンバー1、人類ナンバー1を決める大会だと思うんですよ。パラリンピックは例えば障害を負ってできなくなったところにとらわれるのではなく、残された機能を最大限に生かして競技をして、記録を出す潜在能力を引き出すところが競技の魅力だと思っているので、これをこのコロナ禍だからこそ、多くの人たちに伝えていかないといけないと思っています。今はオリパラ含めて、なかなか選手たちが応援してくださいと大声を上げて伝えられることは少ないけれど、僕はできないところにとらわれて考えていくよりも、どうやったらできるかということを考えていく方が何千倍も幸せだろうなと思っているので、それを体現して、しっかりと記録を出して、結果を残していくことによって、伝わる人が増えていくだろうなと感じています」
中尾「レスリングから逃げた子供とは思えないくらい芯が強くて、すごいなと思います。思いも強くて。その一番の原動力というのは? 支えてくれる家族もいると思いますが」
佐藤「やっぱり思いを強く持っているのは、僕が過去、障害を持たれた方たちに対して、社会的弱者みたいな感じで決めつけ、そういうところから実際にロンドンのパラリンピックを見たときに、そんなんじゃない、この人たちは全然、社会的弱者じゃない、という。確かにサポートとか必要なことはあるかもしれないけど、できるところに目を向けてやっていて、かっこよかったんですよ。その思いが、僕の芯をずっと作り続けている」
妻の存在が心の支えに
仲「2019年に奥様と結婚されて、新婚ほやほやじゃないですか。奥様とはいかがでしょうか」
中尾「急な恋バナです」
佐藤「めちゃめちゃかわいいですよ」
中尾・仲(爆笑)
佐藤「合宿をやっているけど、岡山と東京で今は離れているので、6月10日から28日まで合宿でずっと離ればなれなので、すごいさみしいです」
仲「奥様との出会いは」
佐藤「妻との出会いは、僕が去年まで会社員として勤めていた会社があって、そこの親会社に妻がずっと勤めていて、2015年9月に初めて会って、そこからは普通に同僚みたいな感じで、2018年の夏頃に、妻と一緒にお昼ご飯を食べてみようかなと僕が思って。そこから、2か月後、3か月後くらいに付き合い始めました」
仲「家庭ではご自身はどんな感じですか?」
佐藤「競技やってる時の感じじゃないです。同じ部屋、空間に妻がいないと落ち着かないです」
中尾「それじゃ、競技の時もできれば会場に来てほしい、そばで見ててほしいという感じ?」
佐藤「そうですね」
仲「結婚されてから、さらに頑張ろうという力が湧いてきましたか」
佐藤「はい」
中尾「競技を見ていて、車いすの前のタイヤが少し浮くじゃないですか。怖かったりしませんか、また、タイムのロスにつながったりはしませんか」
佐藤「理想は浮かさない方がいいんですけど、トラックレバーといって、コーナーに差し掛かる時に、そのレバーをたたいて前輪に角度をつけて曲がるようにするんですけど、そのたたく瞬間はどうしても浮いてしまうんです。コーナーから直線へ入る時、その逆もそうですけど、トラックレバーをたたくタイミングで、その時に車輪が浮いている感じです。それ以外ではしっかり地面に接地して伸びていく感じで。浮いている箇所としては最初のトラックレバーをたたくバックストレートに入ったとき、またバックストレートからコーナーを曲がるとき、コーナーからまたストレートに戻るときがトラックレバーをたたくとき。その時に恐らく浮いている。
中尾「400メートルと1500メートル(でリオパラメダル)ですよね。僕らが観戦する時にどの辺がポイント、注目点になりますか」
佐藤「400メートルは完全にレーンがセパレートで決まっているので、戦略は全くないんです。力と力のぶつかり合いじゃないですけど、最初にスタートした瞬間から、いかに早い段階でトップスピードにのれるかが魅力で、僕はスタートが出遅れるんですけど、それでも後半に持ち味の持久力とか粘り強い伸びで、先頭を一気に抜き去っていくんです。そこが400メートルの魅力。1500メートルは最初からオープンレーンで、スタートの速い選手たちが前に出ますが、その選手たちを外レーンから追い越していって、早い段階でトップに立つ。僕の抜け出したタイミングで後ろについてきた選手は、風よけにして体力温存で走るわけです。後半にその体力を使うことができるので、僕はそれをさせないくらい力をつけるというか、差を広げる。
中尾「そうすると、1500メートルは外からも抜いたうえに、相手との距離もあけなきゃいけない。体力的にもそこがポイントに。他の人よりも厳しい条件ですね」
仲「それでも勝てる持久力があるわけですね」
中尾「競技中、心拍数はどのくらいまで上がるのか」
佐藤「1回、過去に競技中に測ったことがある心拍数は197とか」
中尾「すごい。その状態で全力でこぎ続けて、かつ後半はめちゃめちゃ伸びていくんですね」
佐藤「1500で他の選手たちが僕の後ろについて風よけに使おうとしても、僕はそれをさせないつもりです。だから僕はおそらく、パラ本番では)かなり面白い走りを皆さんにお見せできるんじゃないかなと」
中尾「そういうプランで行こうかなという感じなんですね。圧勝を見せようと。すごい楽しみです
佐藤「ほかの選手たちは記録っていうよりも、パラリンピックのタイトルのメダル、順位を狙ってくる選手が多いと思います。そうなった時に、みんな、どこかしら(体力を)温存するというか、(記録を狙うほどには)出し切らない可能性が高いです。記録を出すためには前半から突っこんでどんどんいかなければいけない」
中尾「世界記録を出すためには、相手を見ている場合ではないと」
佐藤「はい」
仲「ライバルは自分自身なんですね」

車いすは「たたいてこぐ」
中尾「車いすのマシンはどうやって動かすのですか」
佐藤「専用の樹脂グローブを手に着けて、外側にある小さいリング(ハンドリム)をたたいてこぐんです」
中尾「たたいてこぐ?」
佐藤「はい、上から下にたたいてこいで…」
中尾「突き指とかしないのかな」
佐藤「高速で回すので、樹脂グローブで手はガードされてます。素手だと皮がむけたり痛かったりして回せない」
仲「どのぐらいでコツをつかめるようになりますか」
佐藤「グローブが壊れて新しく作り直したりするんですけど、なじむまでに2か月ぐらいはかかりますね」
中尾「グローブは重要ですか」
佐藤「重要です。健常者でいうシューズみたいなもので。シューズがちょっと大きすぎても合わないし、ソールの高さが微妙でも合わなかったりするじゃないですか」
中尾「そうすると、車いすのマシンももちろん大事ですけど、グローブの調整の方が頻繁にする?」
佐藤「グローブはラバーのゴムをはって、ハンドリムを滑り止めにしてたたいてこぐ感じなので、調整といっても、そのゴムが薄くなってはがれてきたタイミングで貼りかえるとか、その程度の調整でそれ以外に大きく変えることはないです」
仲「けがをしそうになったことはないですか?」
佐「何回かありますね。練習していて、集中しすぎて、ガードレールにぶつかったりしたことも。競技場で練習するんですけど、たまに、健常者の方、学生がゴールした瞬間に疲れて倒れこんだり、その場で止まって座っちゃったりとかしたときに、それを轢くわけにはいかないので、よけるんですけど、そのよける反動でレーサーが一回転して、車いすから投げ出されたりして、ちょっと首を痛めたりとか。
中尾「(このインタビューが終わって)きょう午後の練習はどんなことをするんですか?」
佐藤「競技場1周400メートルですが、その400メートルのインターバルトレーニング。休憩は1分つなぎ、3分だったかな」
中尾「その400メートルは全力でこいで、1分休んで、また全力でこいで? それを何セットやるんですか」
佐藤「5本を3セットですね」
中尾「15本ですか?」
佐藤「そうです」
中尾・仲「取材を受けている場合じゃないですよ。休みましょう」
佐藤「400メートルを全力でこぐんですけど、だいたい、インターバル走の時は60秒ペースくらいで走るんです。そのタイムを落とさないようにして走る。でも普通は落ちてくるんです。それを1分のつなぎで5本走って、3セットのセット間のレストは15分くらいおいて、走っていく」
中尾「楽しいですか、練習含めて?」
佐藤「苦しいけど楽しいです」
仲「ちゃんとお休みの日はあるんですか」
佐藤「完全に体を動かさない日というのはあまりなくて。アクティブレストといって、体を軽く動かしながら休むみたいな日は週に2回とか、2回といっても午前中にアクティブレスト、また別の日の午前中にアクティブレストみたいな感じなので、完全なオフというのは、今のところ、ほぼ、ないです」
2度目のパラリンピックに、プロ選手として
中尾「休日のリラックス法というか、オフの楽しみというかはありますか」
佐藤「ネット配信サービスで映画を見ます」
仲「最近見たので面白かったのは?」
佐藤「最近といっても1か月以上前ですけど、(中尾さんが出演の)ルーキーズとか」
中尾「ありがとうございます!(笑)」
佐藤「あとは小学校のころから好きだった、ポケモンとか。大人になってあまり見てなかったので、見てみようと思って、劇場版の映画を」
仲「意外と感動しますよね、ポケモンって。泣くよね。ところで、2月からプロになられたということですが、なんでプロになろうと思われたのですか」
佐藤「もともと2020年の東京パラリンピックが終わったら、プロに転向して独立してやっていこうと思っていました。でも、コロナの影響で1年延期になって、どうしようかなと一瞬迷ったんですね。東京パラで金を取ってプロに転向する、独立するというビジョンを思い描いていたので。ただ、コロナ禍だからこそ、プロに転向して、僕が結果を出していくことで、誰か一人でもいいからその人の心に響いたら、その人の思い込み、自分にかけている制限、リミットを外していけるような感じにつながっていくと思いました。それで、このタイミングでプロに転向することが必然だったんだなという感じでとらえて転向を決断して、去年11月に前に所属していた会社の人に「プロに転向します、だから会社を辞めさせてください」とお話して、今年の2月にモリサワと所属契約を結びました」
中尾「ウエートトレーニングはするんですか」
佐藤「ウエートトレーニングは補助に入ってもらって、軽いのはしています。あまり重たいものでトレーニングできないんです」
中尾「目標タイムってあるんですか」
佐藤「僕が持っている400メートルの世界記録が55秒13なんですけど、とりあえず54秒台を本番では出したい」
中尾「あまり気温が高くない方がいいですか」
佐藤「そうですね。暑くない方がいいと思いますが、暑い中でもしっかりタイムを出したい」
中尾「風もありますよね」
佐藤「一番影響があるのは風と雨ですかね」
仲「晴れている方がいいですもんね。私、晴れ女なので行きましょうか」
中尾「普通の人が車いすを1周こいだら、どのくらいかかるんだろう」
佐藤「背中とか首とかめちゃめちゃ筋肉痛になりますよ」
中尾・仲「ありがとうございました。応援しています。頑張って下さい。奥様にもよろしくお伝え下さい」