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50歳でパワー強化、自転車・杉浦の衰えぬ向上心[Tokyo2020+]エース出陣

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自転車・杉浦佳子 50

出身地の静岡で行われる自転車での活躍を誓う杉浦佳子=酒井健作氏撮影
出身地の静岡で行われる自転車での活躍を誓う杉浦佳子=酒井健作氏撮影

 5月にベルギーで行われたロードのワールドカップ。タイムトライアル(20キロ)で、1位の選手とは約25秒差の3位に入った。それまでは優勝者に1、2分離されることもあっただけに、手応え十分。新たな選手の台頭も肌で感じることができ、1年半以上ぶりの海外での戦いは刺激になった。

 2016年、自転車レース中に転倒。事故から半年でパラ自転車に挑戦し、17年の国際大会で銅メダルを獲得。その後は世界選手権を制するなど主にロードで強さを発揮し、パラリンピックでのメダルが期待される存在に駆け上がった。

 昨年3月に東京大会の延期が決まった。本番を迎える時には50歳。若い選手がぐんぐん力をつけていることを想像すると、身を引くべきだと考えた。ただこの頃も記録は伸びていた。コーチに「49歳も50歳も変わらない。やるだけやったら?」と背中を押され、現役続行を決意。今年3月、内定を勝ち取った。

 延期された期間で、パワーアップできた実感がある。例えば、高い強度で30秒ペダルをこぎ、少し休んでは再び30秒こぐ動作を繰り返す練習。短時間に強いパワーを凝縮するのは苦手だったが、こなせる本数が増え、ノルマの12本を完遂できるまでになった。トラックとロードレースでの競り合いで必要になる力だ。ハンドルを持つ手と顔がより近くなるよう、フォームも改善した。3月から感じるようになった左脚の付け根の痛みと付き合いながら調整を進めている。

 転倒事故の後、「私は何で生きているんだろう。周りに迷惑もかけている。何で死ねなかったんだろう」と考えた。練習で大きな手応えを得ても、床につく頃には「他の国の選手も絶対に強くなっているな」との思いが浮かんでしまう。目が覚めると、練習のメニューをこなせる自信すらなくなる。「正直に言うと、今でも逃げ出したい」

 不安がよぎる度、練習に没頭することでそれを打ち消してきた。突き動かしているのは、周囲の支えにこたえたい気持ちだ。自身の存在を知った人が「自分もリハビリを頑張る」と言ったと耳にした。毎日目標を立ててくれるコーチがいる。仕事を休んでサポートしてくれる人がいる。応援を続ける家族、動ける体にしてもらった医者や理学療法士――。みんなに喜んでもらいたいという気持ちを胸に、大舞台に臨む。

 意欲が湧いてくる理由はもう一つ。自転車の会場が出身地の静岡だからだ。障害のきっかけになった事故は静岡でのレースだったが、「(治療を受けて)生き返ったのも静岡」と笑う。

 「結果がどうであれ、これだけやったらいいよ、と言ってもらえるようなレースをしたい」。ペダルをこぐ足に全身全霊を込める。(平沢祐)

  すぎうら・けいこ  1970年生まれ。静岡県出身。2016年、自転車レースで転倒し、高次脳機能障害や、手足のしびれなどが残った。18年に国際自転車競技連合が主催したパラサイクリングのロード主要大会のレースで、8戦7勝。パラリンピックは初出場。楽天ソシオビジネス所属。

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2289394 0 東京パラリンピック2020速報 2021/08/17 05:00:00 2021/08/23 12:27:48 出身地の静岡で行われる自転車競技での活躍を誓う杉浦佳子(撮影・酒井健作) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/08/20210816-OYT1I50117-T.jpg?type=thumbnail
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