「力持ち」世界一決定か、上半身のパワーのぶつかり合いに注目…パラパワーリフティング

 世界一の力持ちを決める戦い「パワーリフティング」。五輪の「ウエイトリフティング」に近い競技ですが、パラリンピックでは、「胸」「肩」「三頭筋」の筋肉だけの力勝負になります。日々の鍛錬を一瞬にぶつける、熱い戦いの魅力を解説します。

上半身だけの力で211キロの超人

トレーニングするパラ・パワーリフティングの坂元智香選手(7月23日撮影)

 パワーリフティングは、重りがついたバーベルを押し上げ、持ち上げられる重量を競う競技。パラリンピックでは、下肢に障害がある選手が、台に横たわった上でバーベルを押し上げる「ベンチプレス」で競います。

 筋力トレーニングではポピュラーな「ベンチプレス」ですが、上半身の筋肉を使っているようで、実は下半身の踏ん張りも記録に大きな影響を与えます。踏ん張りがきかないパラアスリートはシンプルに上半身の筋力のみが試されるのです。

 日本パラ・パワーリフティング連盟の吉田進理事長は「細かなルールの違いはあるが、健常者のベンチプレスと比べるとパラ選手の方がほぼ記録は上だ」と話します。

 実際に2016年リオ大会で男子59キロ級に出場したシェリフ・オスマン選手(エジプト)は、特別試技で211キロを挙げました。似たルールで行う健常者のパワーリフティング世界記録は170キロ台で、パラパワーリフティングの金字塔になっています。

選手の表情に「一瞬」が映る

 階級は男女で各10階級に分かれ、正しい姿勢でバーベルを持ち上げて静止し、審判が合図をしたらバーベルを戻します。ただ、単純な力比べだけではなく、選手はバーを持ち上げて静止する技術なども求められます。

東京パラリンピックのテスト大会で競技に臨む選手(2019年9月27日撮影)

 「実はそこに見所もある」と、吉田理事長。「一見すると単純にバーが上がったか否かの競技にも見えるが、その記録が認められるか否かは審判の目による。そこに一喜一憂できる楽しみも競技にはある」と話します。

 バーベルが少しでも傾いたら失敗で、可否は3人の審判が判定します。選手は試技を3回行うことができ、申告した重量の少ない選手から持ち上げていき、3回目が終わった時点で最も重い重量を持ち上げた選手が勝利となります。

 吉田理事長オススメのアングルは、選手の上から撮るカメラだといいます。「競技の一瞬に全てをかけてきた選手の努力が表情ににじむ。その顔を見てもらうと競技の奥深さが分かります」と語ってくれました。

 コーチが試技に付き添うことができ、集中力をとぎらせないように静かに準備をしたり、選手を鼓舞したり。色んな方法で支える人たちがいるのもこの競技の特徴です。

53年ぶりメダルはなるか

 パワーリフティングが採用されたのは、1964年東京大会。当時は「ウエイトリフティング」という名称で競技が行われ、脊髄損傷の男子選手のみが出場できました。パワーリフティングという名前に変わったのは88年ソウル大会から。この大会から出場できる障害の幅が広がり、2000年シドニー大会から女子も参加できるようになりました。

 競技は世界的に広まり、中東やアジア、アフリカといった各国に強豪がいます。日本は、1968年テルアビブ大会で、当時の「ウエイトリフティング」のフェザー級で銅メダルを獲得しましたが、以降はメダルから遠ざかっています。東京大会は4人が出場して、上位を狙います。

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