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男子3000メートル個人追い抜き(運動機能障害C2)で川本
予選で世界新→次々抜かれ帰り支度→上位失格3決へ

川本は予選で勝負に出た。「今までの走りでは勝てない。オーバー(ペース)になってでも」。スタート直後から右脚で目いっぱいペダルを踏んだ。レース中に笑顔が見えるのは好調の証し。ゴールして大型画面に「WR」が表示されると、左腕を誇らしげに掲げた。

喜びはつかの間、ライバルたちが次々に自身が出したばかりの世界新記録を上回る。全レース終了時、モニターに映された名前は5位の位置にあった。
広島県出身。生まれてすぐに病気で左の太ももから下を切断した。高校時代は障害者野球で活躍して日本代表にも選ばれた逸材は2015年、体験会を機に自転車の道へ。16年のリオデジャネイロ大会に出場すると、その後は拠点を静岡に移し、本番会場の伊豆ベロドロームで練習を積んできた。
競技を始めた時から東京大会だけを見据え、「死ぬ気でやった」との自負がある。けがも乗り越えてきた。自信のなさからレース序盤にペースを抑えすぎる悪癖も、この大舞台で克服した。レース後、充実感も悔しさも残る結果をかみ締め、長いようで短かった日々を思い返すと、涙があふれた。
帰り支度をしているところに、思わぬ一報が届いた。ベルギー選手が失格となり、川本の予選4位が確定。銅メダルをかけたマッチレースに進めることになった。体も心も「100%で臨めた」という一戦は、後半に失速して完敗。それでも、力を出し尽くしたから笑顔だった。「きょう一日はすごく早かった」。慌ただしくも、いい日になった。
(平沢祐)
藤田、後半伸びず8位
4大会連続出場となった藤田でも、東京大会の初戦は「少し緊張があった」という。序盤に加速がうまくいき、速いペースで進んだ分、スタミナを消耗して後半に伸びを欠いた。狙っていた自己記録にも届かず、予選8位と悔しい結果となった。あとに控えるロードに照準を合わせるつもりで、「気持ちを切り替えて、しっかりコンディションを整えたい」と語った。