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[共生の現場]ホストタウンの自覚 商店街 ニーズに合わせ対応

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 東京都世田谷区の京王線下高井戸駅前にある「下高井戸商店街」。食料品や日用品などの約300店舗が軒を連ねるが、26日夕、コロナ禍の影響なのか、買い物客は少なめに見えた。

下高井戸商店街の豆腐屋「いづみや」で店員とやりとりする視覚障害のある瀧さん(左)(26日、東京都世田谷区で)
下高井戸商店街の豆腐屋「いづみや」で店員とやりとりする視覚障害のある瀧さん(左)(26日、東京都世田谷区で)

 老舗の豆腐屋「いづみや」には、視覚に障害のある日本大学4年、 瀧楓花たきふうか さん(21)がいた。自宅と大学の間に商店街があり、よく立ち寄るのだという。

 「商品は何種類くらいありますか?」と瀧さん。店長の藤田恵美さん(45)は、瀧さんの 白杖はくじょう に目をやると、具体的な数字を交えながら丁寧に説明した。

 「20種類はありますね。変わったものだと、枝豆やピーナツを使ったお豆腐とか。こんにゃくは1枚250グラムで120円です」

 藤田さんがこうした接客を心がけるようになったのは、世田谷区が東京パラリンピックの「共生社会ホストタウン」になり、2019年10月、米国の選手団を商店街に招いて「バリアフリー点検」を行ったのがきっかけだ。車いすの選手から「棚が高くて商品を取りづらい」などと指摘され、多様な客のニーズに合わせた対応を意識するようになったという。

 瀧さんは「商品の大きさや量を丁寧に説明してもらえると、すごくありがたい」と感謝する。パラを機に生まれた意識の変化が、着実に実を結んでいた。

     ◎

 共生社会ホストタウンは国が17年に募集を始めた。パラ選手との交流を通じ、街のバリアフリー化を加速させるのが狙いで、国が関連事業に最大1000万円の費用援助も実施。世田谷区を含む全国109自治体が選定された。

 福島市もその一つで、スイス選手団を受け入れた。だが、26日午前、練習場所の体育館がある「十六沼公園」に市民の姿はまばら。館内から、バドミントンのパラ選手がラケットでシャトルを打つ「パン、パン」という乾いた音だけが響いていた。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、選手と一緒にバドミントンを行うなどの交流イベントはほとんど実現しなかった。この日、公園に散歩に来ていた同市の大学生、鈴木 めぐみ さん(19)は「一緒にバドミントンをやってみたかった」と話し、立ち入ることのできない体育館をさみしそうに眺めていた。館内で練習していたカリン・ステル選手(50)も「日本の皆さんともっと接したかった」と語った。

 福島市は東日本大震災でスイスから様々な支援を受け、恩返しのためにホストタウンに名乗りを上げたという。被災地の思いは、どこまで届いただろうか。

     ◎

 共生社会ホストタウンは、大会後の交流継続も念頭に置いている。世田谷区や福島市も今後、市民とパラリンピアンとの交流を模索していくという。

 28日午後6時。下高井戸商店街で呉服店を営む 旦尾あさお 衛さん(66)は、米国選手団が出場する車いすラグビーの試合をインターネットで観戦し、「よし、いけ!」と拳を握っていた。

 商店街は近い将来、再開発を計画している。パラにはコロナ禍という横やりが入ったが、ホストタウンの経験を生かした街づくりが進むよう期待したい。

(山下真範、池田寛樹)

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2323030 0 東京パラリンピック2020速報 2021/08/29 05:00:00 2021/08/29 00:16:32 社会面用、豆腐店で熱心に質問する視覚障害者の瀧楓花さん(左)(8月26日、東京都世田谷区で)=米田育広撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/08/20210828-OYT1I50204-T.jpg?type=thumbnail
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