ニュース

車いす警備員が奮闘中…元警察職員、パラ会場で手荷物検査

 
メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 東京パラリンピックの競技会場で、車いすを使用する警備員の男性が、手荷物検査などの業務に当たっている。業界団体によると、車いすの警備員は極めて珍しい。パラ開催をきっかけに、障害者の新たな仕事として広がるか注目されている。(高田悠介)

競技会場で手荷物検査を行う警備員の浜田さん(右)(25日、幕張メッセで)=川崎公太撮影
競技会場で手荷物検査を行う警備員の浜田さん(右)(25日、幕張メッセで)=川崎公太撮影

 「こちら開けていただいてもいいですか」「飲み物は入っていますか」

 25日、ゴールボールや車いすフェンシングが行われた千葉市の幕張メッセ。警備会社「ゼンコー」(さいたま市)から派遣された浜田久仁彦さん(61)が、会場に入る大会関係者に声をかけていた。車いすから相手を見上げつつ、目の前に置かれた手荷物のかばんを開け、中身を丁寧に確認する。浜田さんは「警備で確認すべき点を取りこぼさないよう無我夢中です」と言う。

 浜田さんは1歳の時にポリオ(小児まひ)を発症し、下半身を自由に動かすことができなくなった。松葉づえを使っても長時間1人で歩くことは難しく、車いすを使用。高校卒業後、民間企業を経て埼玉県警に就職した。昨年3月に定年退職するまで、鑑識課の事務職員として、指紋の資料管理などを担った。

 警備員への転身は、ゼンコーに勤める県警時代の上司の誘いがきっかけだった。足が不自由な自分に務まるかと不安に思ったが、「障害者の働く選択肢を増やしたい」と思い、今年1月に再就職。4月から埼玉県内の大学に派遣され、校舎の一つで入館者の本人確認証をチェックしたり、新型コロナウイルス対策の検温をしたりしている。

 「学生さんたちは、あいさつすると必ず返事をしてくれる。『丁寧に接しよう』と相手に思ってもらえるのは、障害を持つ警備員の強みかもしれない」。浜田さんはそう考える。

 迎えたパラリンピック。ゼンコーは、大会の警備を担当する企業の一つになっていた。自身も高校時代から30歳まで、地元の車いすバスケットボールチームで汗を流したパラスポーツ経験者。競技会場での勤務を打診されると、迷うことなく引き受けた。

 重い物を持って運んだり、階段を上り下りしたりすることはできない。だが、浜田さんは「ハンデがあってもできる業務を確実にこなし、車いすでも警備員を務められることを世界に示して、障害を持つ若い人たちの仕事の機会を増やしたい」と力を込める。

 ゼンコーは本業の傍ら、日本ゴールボール協会のオフィシャルサポーターになるなど、パラスポーツの支援にも力を入れる。海野弘幸社長(58)は「浜田さんに警備の経験を積んでもらい、どういった仕事であれば障害のある人にも任せられるか模索している。将来的には、パラ選手の雇用も目指したい」と話した。

障害者雇用「ほぼ手つかず」…警備業界が注目

 警察庁によると、都道府県公安委員会の認定を受けた警備業者は、昨年末時点で約1万社あり、警備員は約59万人に上る。警備業法では、精神障害で業務を適正に行うことができない人は警備員になれないと定められているが、身体障害については制限がない。

 約7000社が加盟する全国警備業協会によると、警備業界では近年、人手不足を背景に高齢者や女性、外国人を雇用する動きが広がりつつあるが、障害者については「ほぼ手つかずなのが実情」という。同協会の担当者は「ゼンコーの取り組みは業界の中でも新たな挑戦といえる。協会としても注目していきたい」としている。

無断転載・複製を禁じます
スクラップは会員限定です

使い方
2326153 0 東京パラリンピック2020速報 2021/08/30 15:00:00 2021/08/30 13:44:12 手荷物検査などをする浜田久仁彦さん(右)(25日午後2時49分、幕張メッセで)=川崎公太撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/08/20210830-OYT1I50095-T.jpg?type=thumbnail
続きを読む

「新型コロナ」のニュース

パラリンピック 新着ニュース