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[パラ友]車いすラグビー 池崎大輔選手(インタビュー全文)

 
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 読売新聞パラリンピック・スペシャルサポーターを務める俳優の中尾明慶さん(33)、仲里依紗さん(31)夫妻が、東京パラリンピック・車いすラグビーで、リオデジャネイロ大会に続く2大会連続銅メダルに輝いた池崎大輔(43)(三菱商事)にインタビューし、東京大会の感想や競技の魅力などに迫った。(対談はリモートで行われました)

悔しすぎる銅メダル

中尾明慶(以下、中尾)、仲里依紗(以下、仲) 「お疲れさまでした。銅メダルおめでとうございます」

池崎大輔(以下、池崎) 「ありがとうございます」(画面越しに銅メダルを見せる)

銅メダルを画面越しに見せる池崎選手=東京都江東区のパナソニックセンター東京で
銅メダルを画面越しに見せる池崎選手=東京都江東区のパナソニックセンター東京で

中尾・仲 「わぁー、すごーい。銅メダルだ!」

池崎 「銅メダルだけど、あまりうれしくないです。でも、銅メダルでも、みんなが喜んでくれるし、おめでとうと言ってくれるので、その一言には救われています」

中尾 「やっぱり悔しいという気持ちが一番なんですか」

イギリスに敗れ、涙を流す池崎選手
イギリスに敗れ、涙を流す池崎選手

池崎 「悔しい以外は何もないですね。自分たちは金メダルを目指して、5年間、金を取るためにやってきたのに銅メダルかよっていう。じゃあ何年やったら金を取れるんだ。自分を追い込んでここまで高めているのに、この結果というのは本当に悔しすぎる」

中尾 「そうですよね。試合を振り返ってどうですか。敗因とかそういったものが浮かぶものなんですか」

池崎 「リオからの5年間で、かなりチームは強くなって、金を取れるだけの力は持っていました。でも細かいところとか、自分たちの流れを作れなかったとか、ほんのちょっとしたところで、逃してしまった。自分たちの出来は良かったと思っています。ケビン・オアー監督は金メダルを取れるだけの力を付けてくれたし、チームを作ってくれた。それをコートで自分たちができなかった、悔しい思いしかない。準決勝でイギリスに負けて、こんなに泣いたことはないというくらい泣いたんですね。でもイギリスは強かった。自分の力がなかったことを素直に認め、まだやらなければいけない。チームとしても個人としても、もっと高め、強くなろうと思っています」

中尾 「3位決定戦はすごい白熱した戦いで、面白かったです」

池崎 「銅より輝いている自分たちの姿を届けることが出来てよかったと思います。それが唯一の救いです。自分が輝いている、脂がのっている最後かもしれない。そんな時に東京で出来て、たくさんの人たちに自分たちの姿を見てもらえたことはすごく良かった。『すごかったよ、良かったよ』とか、『勇気をもらえた』とか結果だけじゃないところで、喜んでもらえた。その声が自分にとっては天の声と言っていいくらいにうれしい。言葉というのがやっぱり自分を救ってくれる。結果ではない大切なものを、今回初めて知ったような気がしますね」

3位決定戦…気持ちを切り替えられたきっかけは?

中尾 「負けて、今まで経験したことのないぐらいの涙を流して、そこからどうやって気持ちを切り替えたのですか」

池崎 「イギリス戦は勝てば決勝戦という舞台で、その緊張というのも正直あったと思うんですよ。プレッシャーに押しつぶされながらも信頼できる仲間がいて、コーチがいて、スタッフがいて、チームがありました。それで挑んでも負けてしまった。金はそこで失ってしまったわけですよね。絶望感しかなかったです。『僕のパラリンピックは終わったな』というぐらいまで落ちました。まだ、試合があるのに。僕はメンタルも弱いところもあるし、なかなか切り替えができなかった。どこで切り替わったかというと、次の日の3位決定戦、コートに入ってオーストラリアの国歌が流れた時でした」

中尾・仲 「へぇー」

オーストラリアのライリー・バット選手と競り合う池崎選手
オーストラリアのライリー・バット選手と競り合う池崎選手

池崎 「ロンドン、リオでオーストラリアが金メダルを取って、国歌が流れているのを聞いていたんですよ。その時の悔しさがのしかかってきて、吹っ切れたんです。ウジウジしている場合じゃない、ファイナルだと思ってやろうと。今できるのは勝って銅メダルを取ること、自分らしいプレーをすること、体に染みついたことをしっかりやろうと。昨日のことを忘れて、勝つということだけに集中できました」

仲 「すごいですね。でも5日間に5試合もされて、体調面とか体力とか大丈夫だったんですか」

池崎 「もちろん、しんどいんですよ。体をケアするリカバリーの時間をしっかりと作って、トレーナーにケアをしてもらいました。後は、熱いお湯と冷たい水に入る交代浴で疲労回復に努めました」

屈強な男性選手に立ち向かう倉橋香衣選手のすごさ

中尾 「初めて車いすラグビーを見たという僕の周りの友達からは『面白い』という声が多くありました。反響はありますか」

池崎 「車いすラグビーはかっこいいとか、そういう声を耳にするというのは、リオの時よりも、今回の方が多かった。本当にうれしいですよね。スリルがあって、興奮できて、ぶつかり合って、倒れて起き上がって。泥臭い男らしい競技だと思っているんですよ。でも、その中で男女混合っていう……」

フランスを破り、喜ぶ倉橋香衣選手(中央)(国立代々木競技場で)
フランスを破り、喜ぶ倉橋香衣選手(中央)(国立代々木競技場で)

仲 「そう! 私は見ていて冷や冷やしたんですが、怖いですよね」

池崎 「(女子の倉橋 ()() 選手は)そこに立ち向かって、ごっつい人を倒したりとかもしているんで。まあ、ちょっと尋常じゃないくらいの度胸と根性。すごく頼もしいですよ」

中尾 「体の強さというのは男性の方があると思うんですけど、それを感じさせないプレー。やっぱりテクニックがあるんですか」

池崎 「テクニックもあるし、ちょっとぶっとんでいるところもあると思うんですよ。言い方が悪いですけど。そうでないと。あんなに大きな人が立ち向かってくるのを、ブロックするとか、普通の人なら怖いと思うじゃないですか。それを平常心でやるというのが、本当に頼もしいですよ。オーストラリアのライリー・バット選手は世界ナンバー1プレーヤー。倉橋選手は一番障害が重い0・5ですが彼を止めた。この超スーパー、ビッグプレーでチームが波に乗れた。みんなで戦う、コートにいる選手とベンチにいる選手がチームとなって戦って勝てた。その結果の銅メダルです」

ベンチと一体感…車いすラグビーも「ワンチーム」

中尾 「ベンチにいるメンバーもずっと掛け声を続けていますよね」

池崎 「夢中で走っていると時間を見られない時もあるんです。そういう時はベンチの声にすごく助けられる。後ろから相手がきているとか、時間は何分何秒だとか。ゴールの前で守っている時も、相手にコミュニケーションを取られないようにずっと、オー、ワーと叫んでくれる。声でチームに一体感が生まれる。その声に助けられたというのはすごく覚えています」

橋本勝也選手(左)に話しかける池崎選手
橋本勝也選手(左)に話しかける池崎選手

中尾 「相手のコミュニケーションもかき消すくらいなんですね」

池崎 「これまでで一番、ベテランと若手が融合したチーム。試合ごとに成長した、いいチームでした。銅メダルを取った直後は泣いていなかったのですが、あまり出場時間がなかった一番若手の橋本勝也選手に『お前、出られなくて悔しかっただろう? でもその悔しさを絶対に忘れるなよ。絶対に俺たちを抜けよ。その力もあるから』という声を掛けたら号泣してしまいました」

パリ大会に向けて…さらに進化、変化

中尾 「3年後のパリ大会ですが、どのように考えていますか」

池崎 「『パリ大会で金メダルを取る』と言わないと決めました。心技体、これで金メダルを取れるというところまできたら『パリで金メダルを取ります』と言います。それまでは『世界一を取ります』と、ちょっと言葉を変えます。『金を取ります』と言って取れなかったんで。有言実行できない大人はかっこ悪い。今は自分を磨き直して成長し、チームも成長させて、高くて、届きそうで届かない山を、みんなでどうやって登っていくのかを考え、やっていきたいと思います」

中尾 「世界1位を取るためには、若手の成長が鍵になりますか」

池崎 「もちろんそうです。若手には伸びしろがあるし、伸びることによって車いすラグビーの戦い方も大きく変わってくる。コートに出ている選手の組み合わせ、様々なバリエーションがあるんですけれども、それが増える。若手はやるだけ伸びる。急成長するんです」

仲 「ご自身はどうですか?」

池崎 「今、僕は43歳で、パリは46ですよ(笑)。成長しつつも、体を壊さないためのトレーニングをしなければならない。すごく難しいです。量より質。けがをしたら出られなくなってしまうので、ケアをしながら成長させるというプランも立てなければならない。しっかりやって現役でパリに行きたいなと思っています」

中尾 「見ていると年齢の壁は感じませんでしたけど、リオと比べ、年齢の壁を感じた瞬間はありましたか」

池崎 「正直ないです。リオの時より上がっています」

中尾 「じゃあ、全然大丈夫ですよ。46歳になってもパフォーマンス上げていけます」

池崎 「年を取るのは老化でなく進化であるという誰かの名言があるんですよ。アスリートというのは、年を取れば引退とか、体力の限界があるけれども、パラスポーツというのは年を取ってもやれるんですね。だから自分も年を取るたびに進化しなければいけない。5年間やって3位というのは、それ以上に変化をつけなければいけないと思うんですよ。次の3年間、自分が成長するために、何をしなければいけないのか。いろんな視点から自分を見て、何かを変えなければいけない。頭を真っ白にして、新しいものをどんどん取り入れていきたいなと思っています」

露天風呂で癒やされたい!

中尾 「今、一番、何をしたいですか」

池崎 「川の音であったり、富士山だったりと、美しい景色を見て、澄んだ空気を吸いながら、露天風呂に入って、何も考えずに自然と触れ合いたいです」

中尾 「脳が疲れていますね。癒やしを求めていますね」

池崎 「癒やしが欲しいです」

中尾 「大会が終わっても、こうした取材などがあって忙しいですものね」

池崎 「メダルというのは通過点なんですよ。本当に僕たちがやらなければいけないことはこの先にあるんですよ。パラスポーツと車いすラグビーの普及です。こうして記事に出ることで多くの人に見てもらえる。車いすラグビーをどんどん発信していかなければいけない。ファンも増やして応援する人も増やしたい。(注目されて)熱が上がっているので、パリまでの3年間にそれを冷まさないように、熱い状態で迎えたい。だから発信していかなければいけない。立ち止まっている暇はない、風呂に入ってる場合ではないんです(笑)」

仲 「風呂には一度、入ってください」

池崎 「はい(笑)。コロナ禍の中で、自分たちの見えないところで多くの困難を乗り越え、自分たちが輝ける舞台を作ってくれた人たちに感謝しています。目標とか夢は、舞台がなければできません。スポンサー、応援してくれた人たちにも感謝です。今度は恩返しをしなければならない。パラスポーツを通じて心の強さや、共生社会を作るにはどうしたらいいのかなどを伝えたい。(東京パラリンピックで盛り上がった)熱を冷まさないように、イベントや講演をしたり、学校でパラ教育をしたいのですが、コロナ禍でそれができない中、どうやったらできるのかを考えていて、悩みの一つです。やることは山ほどあります。だからやっぱり、風呂に入っている場合じゃない(笑)」

世界選手権に注目

中尾 「次はデンマークで来年に行われる世界選手権ですね」

池崎 「パラリンピックの次に大きい大会で、前回は日本がチャンピオンになっています。これからトレーニングを積んで、連覇できるようにやっていきたい。そうやってネタを作らないと、メディアも扱ってくれない。そしてしっかり発信できればいいなと思っています」

中尾・仲 「期待しています。ありがとうございました」

中尾明慶さん(左)と仲里依紗さん
中尾明慶さん(左)と仲里依紗さん

 ◇ なか・りいさ  1989年10月18日生まれ。長崎県出身。ドラマ・映画に出演するほか、モデルとしても活躍。TBS日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」に出演中。映画「クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」が公開中。映画「土竜の唄 FINAL」が11月19日に公開予定。

 ◇ なかお・あきよし  1988年6月30日生まれ。東京都出身。役者としてだけでなく、様々な分野で幅広く活躍。テレビ東京「SUPER GT+」ではMCも務める。日本テレビ系連続ドラマ「ボクの殺意が恋をした」に出演中。

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2339268 0 東京パラリンピック2020速報 2021/09/04 05:10:00 2021/09/04 05:10:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/09/20210902-OYT1I50083-T.jpg?type=thumbnail
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