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    弾丸フェリー(さんふらわあ)

    時間もお得格安船の旅

     船体の大きな太陽がトレードマークのフェリー「さんふらわあ」で関西と九州を1万円で往復できる格安プラン「弾丸フェリー」が人気だ。九州新幹線や格安航空会社(LCC)など移動手段が多様化するなか、「お得感」を前面に出して若者らを取り込む。船内のサービス向上策も奏功し、乗船客数は上向きつつある。(井戸田崇志)

    W杯からヒント 

     早朝の大阪・南港。接岸したさんふらわあから降りる乗客には、九州の若者が目立つ。足早に「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」(大阪市)を目指す人も多く、到着した日の夕方から夜に、再びフェリーで帰路につく。

    • 「さんふらわあ」で接客を担当する末松宣雄さん(左)と東若奈さん(神戸市東灘区で)=里見研撮影
      「さんふらわあ」で接客を担当する末松宣雄さん(左)と東若奈さん(神戸市東灘区で)=里見研撮影

     さんふらわあは神戸―大分、大阪―別府(大分県)、大阪―志布志(鹿児島県)の3航路を計6隻が往復し、出発は午後5~7時台、到着は午前6~9時台だ。関西から別府温泉を訪れたり、バイクを載せて九州ツーリングを楽しんだりする人も多い。

     「弾丸フェリー」を始めたのは2011年2月。鉄道より約4割安い運賃が魅力で、個室を使える「弾丸クルーズ」も含めた16年の利用者は、12年の2・8倍の4万9000人に上る。

     考案したのは、運営会社社長の井垣篤司(61)だ。08年に商船三井から前身のダイヤモンドフェリーに役員として出向した際、業績は低迷していた。航空機や鉄道に流れた乗客を取り戻そうと運賃を下げた結果、サービスが低下してさらに客足が遠のく「負の連鎖」に陥っていた。

     「このままではじり貧になる」。危機感を募らせた井垣がヒントにしたのは、サッカーのワールドカップ(W杯)観戦で旅行会社が企画して人気を集めた「弾丸ツアー」だった。税込み1万円の明快な価格設定も受け、じわりと利用客を増やしていく。接客責任者で事務長の末松宣雄(49)は「弾丸フェリーの販売開始からリピーターが増え、顔見知りになった人もいる」と話す。

     16年のさんふらわあ全体の乗客数は約54万人と前年並みだったが、4年前に比べると約1割増えた。熊本地震による乗客減を弾丸フェリーの人気が補い、「初めてフェリーを使うきっかけにもなっている」(井垣)。

    サービス向上 

     「カジュアルクルーズ」と銘打った営業戦略も打ち出した。出港時にデッキから紙テープを投げたり、乗員がドラを鳴らしたり。資金に乏しいなかで豪華客船のような高級感は難しいが、船旅の「非日常感」を演出する。

     コンサルタントを雇い、接客マナーも向上させた。神戸―大分航路に乗務する東若奈(24)は、「絶対に不快な思いをさせず、『また乗りたい』と思ってもらう」ことを心がけている。

     乗客の応対係は以前の半分の8~10人に減らし、受付や売店、船内の清掃もこなす。レストランも少ない調理員で対応できるバイキング形式に統一。瀬戸内のB級グルメなど多彩なメニューをそろえ、乗客アンケートでは食事を評価する声が増えた。

    大型投資で勝負 

     足元の業績が回復するなか、18年は勝負の年になる。大阪―志布志間で新造船2隻を導入し、個室は94室と2割増やすほか、レストランや展望浴場も拡張する。建造費が1隻約100億円の思い切った大型投資だ。

     競合するLCCや高速バスは、速さや深夜出発の利便性を打ち出す。弾丸ツアーを足がかりに船旅ファンをどう増やし、対抗するか。知恵と工夫の挑戦が続く。(敬称略)

     

    <弾丸フェリー> 到着した日のうちに帰港する船に乗れば、大人1人1万円(小学生は半額)で往復できる現地0泊・船内2泊の料金プラン。現地に滞在する日中の8~12時間で観光などを楽しめる。自家用車やバイクを船に載せられる料金設定もある。弾丸フェリーは相部屋だが、上級プランの「弾丸クルーズ」は個室利用で、料金は1人1万7000円から。

     

    平日の一般利用増やしたい 

    井垣篤司社長 61

    • さんふらわあの井垣篤司社長
      さんふらわあの井垣篤司社長

     フェリーを使った移動は、効率的かつ経済的だ。例えば、午前中に大分市内で用事がある場合、関西から行くなら通常は前泊する必要がある。フェリーなら早朝に着くのでホテル代が不要だ。宿泊代込みで相当お得と言える。

     車を運べるのも利点だ。さんふらわあの売上高のうち、トラックなど物流関連の利用が6割を占める。長距離ドライバーの過重労働が問題になっているが、フェリーなら長時間の運転を避けられるので、関連の客室は常に満室状態だ。

     残りの4割が観光客など一般利用で、比率は他社よりも高い。弾丸フェリーのほか、大阪―別府などの航路を片道ずつ利用する「舟遊しゅうゆうプラン」など独自商品の効果が出ている。

     フェリーは船内でゆっくり過ごせ、中高年や家族連れなど客層は幅広い。ただ、一般向けの客室の稼働率は平均約4割で、平日利用が少ない。新造船のPRなどで乗客を増やしたい。

     

    <こんな会社> 運営会社「フェリーさんふらわあ」は、海運大手の商船三井が99%出資する子会社。1942年設立の関西汽船と68年設立のダイヤモンドフェリーが母体で、2009年に両社の持ち株会社「フェリーさんふらわあ」が発足。11年に傘下2社と合併し、現在の形態となった。本社は大分市で、神戸市東灘区に本部事務所がある。16年度の売上高は134億円。従業員は350人(17年9月現在)。

    2018年01月17日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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