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    クーピーペンシル(サクラクレパス)

    大人の1本彩り進化

     「全部が芯の色鉛筆」のクーピーペンシル は、誰もが知るサクラクレパスの看板商品だ。世の中にない商品を開発するDNAは受け継がれ、大人向けの画材や高級筆記具など新たな分野に派生している。(白櫨正一)

    子供の定番

    • クーピーペンシルをモチーフにした高級ボールペンの開発に携わった今川清隆さん(右)と広瀬泰治さん(大阪市中央区で)=枡田直也撮影
      クーピーペンシルをモチーフにした高級ボールペンの開発に携わった今川清隆さん(右)と広瀬泰治さん(大阪市中央区で)=枡田直也撮影

     クーピーの発売は1973年。「折れずに、消しゴムで消せる色鉛筆はないか」。子供のお絵描きを見ていた親からの声で、ロングセラー商品は生まれた。

     ポリエチレン樹脂を芯の主成分に採用し、鮮やかで濃い発色を実現。顔料が紙の繊維に入りにくく、消しゴムで消せる利点もあった。直径8ミリの軸の最後まで使って色を塗れるなど画期的な製品で、第2次ベビーブームを追い風に子供向け画材の定番となった。

     少子化で画材市場が成熟するなか、2005年以降は河出書房新社の「大人の塗り絵」と連携し、重ね塗りしやすい専用クーピーを発売して人気に。営業担当者が塗り絵の技法を学び、取引が少なかった書店の店頭で実演しながら売り込んだ。営業担当だった橋爪博志(61)は「高齢化にも目を向け、粘り強く売り続けた」と振り返る。

    ブランド生かす

     時代に対応してきたクーピーだが、社内では別の悩みもあった。クーピーやクレパスが画材市場で高い占有率を誇る一方、もう一つの主力事業の筆記具市場で看板商品が育たなかったのだ。商品は売り場で脇に追いやられ、業界では「サクラの商品は子供向けの印象が強すぎる」と言われた。

     「店頭からサクラの筆記具が消えてしまう」

     15年春、危機感を強めた社長の西村彦四郎(62)は、筆記具事業を強化する新商品の開発を決断する。消費者アンケートでは、会社のイメージに対する回答は「懐かしい」が最も多く、サクラマークの認知度が極めて高いことが判明した。

     こうしたブランド力を最大限に生かせる開発テーマは「新しい懐かしい、をつくる」に決定。先端のデザインにクーピーを模し、サクラマークを入れた高級ボールペンの開発が始まった。

    高級志向に挑戦

     布や革、樹脂など多くの素材で試作品を作る中で、目を引いたのが真ちゅうだった。適度な重みがあり、使い込むほど変色して風合いも変わる。商品企画担当の広瀬泰治(47)は「自分だけの1本になる『新しさ』も提案できる」と考えた。

     本体を半透明のアクリル樹脂で覆う製法を採用し、本体の真ちゅうへの光の反射も計算して独特の落ち着いた色味を出した。協力工場に何度も足を運び、光にすかしながら調整を繰り返し、納得がいくまで数か月かかった。

     17年9月に発売したボールペン「001」「002」は、いずれも年間売り上げ目標を前倒しで達成するヒットになった。「うちでも売らせて」と要望する文房具店が相次ぎ、消費者からは「筆記具もやってたんですね」との声が寄せられた。

     マーケティング部長の今川清隆(56)は「筆記具でもクーピーのようなロングセラー商品を作り続けたい」と意気込む。発売から45年を経て、今も進化を続けるクーピーペンシル。その彩りは鮮やかさを増している。(敬称略) 

     

    <クーピーペンシル> 

     1973年発売で12、15、18、24、30、60色のセットがある。2011年には会社創立90周年を記念した90色も限定発売した。缶容器のデザインは発売当初から変わらず、クーピー柄の化粧品やゴルフ用品など他社と連携した商品も多い。17年発売の高級筆記具「サクラクラフトラボ」シリーズのボールペンは「大人向けのクーピー」との位置付けで、5色から選べる「001」(税別1本5000円)と、10色ある「002」(同2200円)。  

     

    知恵・工夫で新たな価値 

    西村彦四郎社長(にしむら・ひこしろう) 62 

    • サクラクレパスの西村彦四郎社長
      サクラクレパスの西村彦四郎社長

     当社は、色や美術教育を通して子供たちの心を豊かにしていこうと大正時代にスタートした会社だ。絵を描く楽しさを届けるため、市場になかったクレパスやクーピーペンシルを開発し、長く親しまれてきた。

     国内の文房具市場は約6000億円で減少傾向にある。少子化で市場は成熟し、非常に厳しい。だが、知恵と工夫で新しい価値を持つ商品を出していけば、十分に伸ばしていけると考えている。

     クレパスやクーピー、水彩絵の具などの画材事業の市場シェア(占有率)は非常に高く、ブランド力もある一方で、ボールペンやサインペンなどの筆記具事業での存在感は薄かった。今後は、筆記具市場でのサクラブランドの確立に向けて挑戦していく。

     大人向けのクーピーもそうした取り組みの一つで、新たなカテゴリーを作れるような付加価値の高い商品を出し、ロングセラーに育てていきたい。

     海外展開も加速させる。17年にはベトナムで新工場を稼働させ、生産体制も拡充した。成長市場のアジアで販売を伸ばしたい。売上高に占める海外比率を現在の45%から、21年度には55%に引き上げるのが目標だ。 

     

    <こんな会社> 

     1921年、創業者の佐武林蔵氏が子供向けのクレヨンを製造販売する日本クレィヨン商会を設立。25年にクレヨンとパステルの長所を兼ね備えた「クレパス」を開発し、70年に現社名となった。マーカー「マイネーム」や水性ゲルインキボールペン「ボールサイン」など筆記具も取り扱う。本社は大阪市。2017年12月期の連結売上高は347億円。従業員数は1200人。

    2018年09月26日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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