丸亀製麺の釜揚げうどん(トリドールホールディングス)

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打ちたてもっちり感動提供

 トリドールホールディングス(HD)のうどんチェーン「丸亀製麺」で人気の「釜揚げうどん 」は、素材となる小麦の香りやうまみを味わえる看板商品だ。シンプルゆえにごまかしが利かず、社員が追い求める理想の味が凝縮されている。

(畑中俊)

年間1700万食

 「釜からあげるタイミングが重要なんだ。食べたときに中心に歯が少し当たる感じ」「表面に透明感が出て、少し膨らんだ状態がベスト」

 丸亀製麺大崎センタービル店(東京都品川区)の厨房ちゅうぼうで、麺職人の育成責任者「麺匠」の藤本智美さとみ(57)の声が響く。指導を受ける店長の内山未幸(24)が麺の状態に目を凝らした。「この色つやなら大丈夫」。藤本がうなずき、湯気が漂う中、ゆでたての麺がわんに盛られていく。

うどんのゆで具合を確かめる丸亀製麺の藤本智美さん(左)と内山未幸さん(東京都品川区で)=宮崎真撮影
うどんのゆで具合を確かめる丸亀製麺の藤本智美さん(左)と内山未幸さん(東京都品川区で)=宮崎真撮影

 ゆがいた麺を、薬味とつけだれで味わう「釜揚げ」は、麺の味がもっとも引き立つ食べ方だという。「かけうどん」「ぶっかけうどん」と並ぶ定番中の定番で、全国の店舗で年間1700万食が提供される。

全店に製麺機

 焼き鳥店から始まったトリドールHDがうどんチェーンに参入したのは、社長の粟田貴也(56)が香川県丸亀市の製麺所で食べたうどんの味に心を打たれたことが契機だった。粟田は「打ちたて、出来たての感動を伝えようと思った」と振り返る。

 外食産業では、工場で調理の下準備をする「セントラルキッチン」を採用する企業が多いなか、初期投資がかさむ製麺機をあえて全店舗に設置し、麺を粉から作る。讃岐うどんを提供する昔ながらの製麺所の雰囲気を再現しつつ、打ちたての麺を提供するための工夫でもある。

教育体制

 こだわりの麺を支えてきたのが、社内の教育体制だ。麺作りに秀でた約100人の「麺職人」の頂点に立つ「麺匠」の肩書をもつのは藤本のみ。2003年の入社以来、一貫して麺作りに携わってきた。

 藤本の入社当時、丸亀製麺の店舗は兵庫県内の4店だけだった。神戸市内の5号店の店長を任された際、うどんの奥深さに引き込まれた。「うどんには作り手の思いが表れる。丁寧に作れば作るほどおいしくなる」。ゆで時間、塩水のバランス、麺を保管する湿度。最良の方法を求め続けた。

 店舗数が急速に拡大する中で、どの店でも高い水準の味を実現するため、スタッフの育成責任者となった。「どうしてその味になったのか、どうすればもっとおいしくなるのか」。一緒にうどんを作りながら後輩に考え抜かせ、各自の理想像を磨いてもらう指導法にこだわる。

 思いは若手にも引き継がれている。内山は「麺は気温や湿度など様々な条件に左右される、まさに生き物。常に状態が変わるなかで、いかにおいしく出せるかが腕の見せ所」と語る。

 店舗数は国内で800店を超え、海外を含めると1000店以上に増えた。メニューも「明太釜玉うどん」や「とろろ醤油しょうゆうどん」など多様化しているが、「原点は釜揚げにある」との信念が揺らぐことはない。

(敬称略)  

 

<釜揚げうどん>

 2000年11月、兵庫県加古川市で丸亀製麺の1号店がオープンした時からの主力商品で、各店舗の看板にも「讃岐釜揚げうどん」と大きく書かれている。北海道産の小麦100%の自家製麺を使っており、ゆで時間は、気温や湿度などにもよるが約15分。水で締めないため、もっちりとした食感を楽しめる。「並」が290円、1・5倍のサイズの「大」が390円、並の2倍の「得」が490円。 

 

海外へ 味の現地化不可欠

粟田貴也(あわた・たかや)社長 56

トリドールホールディングスの粟田貴也社長(東京都品川区で)=畑中俊撮影
トリドールホールディングスの粟田貴也社長(東京都品川区で)=畑中俊撮影

 釜揚げうどんは、「手作り、出来たて」の丸亀製麺の理念を、最も分かりやすく表す商品だ。ゆでたての麺を釜からすくい上げてすぐに提供するため、食べた時に麺本来の味を楽しんでもらえる。

 売上高や利益は大事な指標だが、まずはお客さんに来店してもらい、食べて喜んでもらうことに重点を置きたい。外食は楽しめることが重要で、店でうどん作りを実演しているのも、「見て楽しむ」体験をしてほしいからだ。

 外食産業は労働集約型で、人手不足もあって事業環境は厳しい。せっかく入社してくれた社員に対しては、悩みなどに向き合う社内の支援体制を充実させ、長く働いてもらえるようにしたい。そうすれば仕事の習熟度が深まり、顧客満足度の向上にもつながる。

 さらなる成長には、海外での成功も欠かせない。まずはうどんに親しんでもらう必要があり、例えばタイでは、トムヤムクン風の酸味があって辛いスープを用意するなど、味の現地化を心がけている。価格を抑えることで、「日本食は高い」というイメージも変えていきたいと思っている。 

 

<こんな会社>

 1985年に兵庫県加古川市で焼き鳥店「トリドール三番館」として創業し、90年にトリドールコーポレーション(現トリドールホールディングス)となった。本社は神戸市。セルフうどんで国内首位の「丸亀製麺」の店舗数は国内805店、海外213店を数える(9月末)。釜飯や焼き鳥の「とりどーる」、焼きそば専門店「長田本庄軒」などの外食チェーンも展開する。2018年3月期の売上高は1165億円、従業員数は3811人(3月末)。

46186 0 ヒット&ロングラン 2018/10/24 15:00:00 2018/10/24 15:00:00 2018/10/24 15:00:00 うどんを茹でる丸亀製麺の「麺匠」藤本智美氏(左)。東京都品川区で。2018年9月7日撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181026-OYTAI50005-T.jpg?type=thumbnail

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