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    古い水道管破裂相次ぐ 

    予算不足、交換追いつかず

    • 交換工事で取り出された水道管。市に記録が残っていないほど古く、表面には赤いさびが浮いていた(24日、大阪市東淀川区で)=枡田直也撮影
      交換工事で取り出された水道管。市に記録が残っていないほど古く、表面には赤いさびが浮いていた(24日、大阪市東淀川区で)=枡田直也撮影


     
    全国で水道管が老朽化し、破裂事故が相次いでいる。人口減で水需要が減っていく中、管を交換する自治体の財源も乏しい。水が値上げされ、当たり前には使えない時代が来るのだろうか。(羽尻拓史)


     目の前に、直径5メートル、深さ1・3メートルの穴がぽっかりと開いていた。

     10月27日午前5時頃、大阪市東住吉区の幹線道路で、地中の上水道管(直径1メートル)が破裂した。現場に駆けつけた時、すでに水は引いていたが、路面のアスファルトが崩落し、泥水はそばの「駒川駅前商店街」にまで流れ込んでいた。長靴姿の店員らが、高さ20センチほどまで覆われた外壁の泥を洗い流していた。

     道路は丸一日、片側が300メートルにわたり通行止めになった。その12日後に福岡市で起きた陥没事故に比べたら小規模だが、「大都市でこんなことが起こるとは」と、あぜんとした。

     破裂した管は61年前の埋設で、総務省令で定められた耐用年数(40年)をはるかに超えていた。大阪市の担当者は「これだけ古いと、いつ破裂しても不思議ではないんです」と申し訳なさそうに打ち明ける。

     ここだけではない。上水道の歴史が古い同市では、水道管5200キロ・メートルのうち40年超が43・3%(2014年度)に達し、政令市で最悪だ。破裂などの事故は毎年約200件あり、漏れて無駄になった水は15年度だけで約2400万キロ・リットル(約2億円相当)。全水量の6%に上る。

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     大阪市が業者に委託して行っている「漏水調査」に同行した。

     都島区の住宅街。調査員2人が、5メートルほど歩いては、大型の聴診器のような探知器を路面に当てたり、金属の棒を地中に差し込んだりして、水道管の音に異常がないかを調べる。

     「色んな音が聞こえてくるんですよ」と、職歴6年目の竹原功さん(46)が教えてくれた。バイクのエンジン音、民家で掃除機をかける音……。その中に「シャー」というかすかな音が聞こえれば、小さな裂け目から水が噴き出しているサインだという。

     市は管の更新(交換)を進めてはいるが、人員や予算面から年70キロ・メートルが精いっぱいで、老朽化のペースには追いつかない。そこで13年度から、亀裂を早期に見つけるため、この調査をしている。

     「地道な調査ですね」と問うと、竹原さんは表情を引き締めた。「東住吉のような事故が起きるたび、もっと早く見つけられなかったのかと思うんです。いつも緊張感を持たないと」

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    • 専用の器具を使い、漏水がないかを音で確認する調査員(大阪市都島区で)
      専用の器具を使い、漏水がないかを音で確認する調査員(大阪市都島区で)

     水道管の老朽化は全国的な課題だ。

     厚生労働省によると、14年度末時点で40年を超えたのは12・1%(約8万キロ・メートル)。一方、同年度中に交換されたのは約5000キロ・メートルにとどまり、このペースだと30年後には50%を超える見込みだという。

     日本水道協会によると、漏水などのトラブルは年間約2万2000件発生している。厚労省の有識者会議は今年1月、「遠くない将来、国民生活に重大な影響を及ぼす」と警告した。

     ただ、人口減で水需要は減り、交換費用の捻出はたやすくない。このため、多くの自治体が水道料金の値上げを始めている。

     日本政策投資銀行の集計では、07年度以降の5年間で全国の26%の334事業者が値上げした。大阪府吹田市の場合、今年4月から2年かけて10%上げる。

     大阪市では現在、年120億円の黒字があるものの、このままだと25年後には赤字に転落するという。値上げではなく民営化で経営をスリムにする構想もあるが、「市民生活を支える基幹インフラを民間に任せていいのか」といった慎重論も根強い。

     値上げはうれしくはない。それでも将来のリスクを考えると、早く何か手を打たなければならないのでは、と不安にもなる。

     自治体の水道経営に詳しい近畿大の浦上拓也教授に聞くと、「市民も負担増を覚悟しなければなりません」と指摘された。「今は黒字でも、大半の自治体が将来、大赤字になる。早期の値上げや市町村の事業統合など、30~50年先を見すえた戦略が必要です」



    強化型耐用65年以上

     老朽化対策としては近年、従来の鉄製管よりも強化された管も導入されている。大阪市では1995年の阪神大震災後、耐震性にすぐれた強化型の鉄製管を多用している。

     総務省令で定められた耐用年数(40年)は従来の鉄製管を想定したものだが、市の独自調査では、強化型の管は65年以上、使用に耐えられるという。自治体はこうしたハード面の進化にも望みを託している。

    2016年12月04日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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