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    地域一丸 鳥取の挑戦

    • 専門スタッフと啓発の戦略を練る渡辺病院の山下副院長(左)。街のあちこちでポスターやチラシが設置されていた(鳥取市で)=前田尚紀撮影
      専門スタッフと啓発の戦略を練る渡辺病院の山下副院長(左)。街のあちこちでポスターやチラシが設置されていた(鳥取市で)=前田尚紀撮影

     この連載が始まった昨年の「12月7日」は、アルコール依存症に関わる全ての人に、特別な意味を持つ。2013年のその日、参院本会議で、依存症対策を国や自治体の責務と位置付けた「アルコール健康障害対策基本法」が成立した。

     「賛成177、反対0」

     飲酒運転や自殺が社会問題化し、世界保健機関(WHO)が深刻な健康問題として各国に対応を求めたことが背景にある。何より、自助グループや医療関係者が何度も国会議員に働きかけたことが大きい。

     それから3年余り。同法が求める対策計画を都道府県で唯一完成させ、実行しているのが鳥取県だ。なぜ人口最少県(約57万人)が先陣を切れたのか。重要な役割を果たした人がいた。

     福間裕隆県議(74)。14年6月の県議会本会議で「私の体験を発表させていただく」と切り出し、国鉄マンだった20歳代の頃の依存症体験を披露した。

     幼子がいながら、借金を重ねて酒につぎ込み、出産祝いやミルク代まで飲み代にした自分。「死んでしまえ」と荒縄を投げてきた父、第2子を中絶した妻……。「当時を思い出すと胸が張り裂けそうになる」と告白。計画策定を迫り、平井伸治知事は「鳥取から先導的に対策を実施していく」と応じた。

     昨年3月、計画は完成。そのとりまとめをしたのは、依存症対策の拠点・渡辺病院(鳥取市)の山下陽三副院長(62)だ。

     1月28日、雪の残る鳥取で会った山下副院長は「計画は様々な立場の意見を反映できた」と振り返った。

     例えば、かかりつけ医の研修会を明記した。一般病院の患者には、多くの「隠れ依存症者」が存在するが、知識不足で兆候に気付かない医師も多いためだ。研修会は今月4日から始まる。

     啓発用DVDでは、地元の男性が顔も名前も出して自殺未遂に至るまでの半生を赤裸々に語る。「体験談が最も心に響く」という断酒会の経験則が生きる。

     拠点病院には相談・啓発の専門スタッフを置き、民生委員や保護司らも相談員として組み込む。

     地域の力を結集した〈鳥取モデル〉に学ぶ点は多い。

             ◎

     連載への反響は1月末で120通を超えた。当事者の断酒成功談もあれば、家族の人生を台無しにした懺悔ざんげ録もあった。かすかな希望すらない日々を送る妻の悲痛な叫びも届いた。

     「意志が弱いだけ」「弱者面するな」といった否定的な反応も。父を依存症で失った私にとって予想はしていたがショックだった。

     ただ、私が本当にこの連載を届けたいと考えたのは、そういう読者だ。

     依存症が他の病気と同じとは、私も思わない。入り口に、その人の弱さがあることも否定しない。

     でも、自業自得という一言で片づけないでほしい。病の本質から目をそらさないでほしい。依存症への根強い誤解や偏見が、本人やその家族を孤立させているのは、事実なのだから。

     社会も変わらなくてはならない。次回からは、そのために必要な知恵と経験を持つ人々にインタビューを行う。(社会部 上村真也)

             ◇

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    2017年02月01日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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