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    お酒の「トリセツ」必要

      ◇「百薬の長」、「万病の元」にも

      酒に寛容な日本で、過度の飲酒を戒め、酒造業界に対策を求める。その先頭に立ってきたのが、今成知美さん(60)。1983年に設立されたアルコール薬物問題全国市民協会(略称・アスク)(東京)の代表だ。なぜ日本では酒がこんなにあふれているのでしょう。

     

      「日本は農耕社会で酒を飲むのは祭りなど年に数回のハレの日でした。日常的に飲むようになったのは戦後から。洋酒が高度経済成長期に普及し、消費量が増えました。ただその頃、酒はまだ男性の世界。劇的に変わったのは80年代です」

      そう言って今成さんは当時発売された、かわいいペンギンのキャラクターをあしらったビール缶を見せた。どう見てもジュース缶だ。

     

      「このペンギンのCMは大ブームになりました。これに象徴されるように、酒造業界のターゲットは若者や女性に広がり、果汁味の酎ハイが出て、イッキ飲みブームも起きました」

     

      アスクは酒造業界と広告規制の対話を重ね、昨年は広告に関する業界の新たな自主基準も発表された。

      

      「未成年に近い25歳未満のモデルは使わない。喉元アップや『ゴクゴク』などの効果音は使用しないことになった。でも『プハー』はありますよね。欧米のCMで飲酒シーンはまれです」

     

    • 「社会の認識が変われば、依存症の予防も早期発見もできます」(東京都中央区で)=岩佐譲撮影
      「社会の認識が変われば、依存症の予防も早期発見もできます」(東京都中央区で)=岩佐譲撮影

     

      広告に限らず、大量飲酒を促す社会の課題は多い。

     

      「酒の自動販売機の撤廃が進んだかと思うと、今度は規制緩和でコンビニやスーパーで24時間、買えるようになった。酎ハイは今、水より安い。飲み放題の店も増えました」

     

      ただ便利さや安さを求めるのは消費者の自然な心理。規制強化を求めると批判も受けるでしょう。

     

      「お酒を全面否定しているわけではありません。でもお酒って、最初はいい顔していても、どこかでひっくり返って刃になる。その変わり目って、皆さんが思っているよりずっと手前にあるんですよ。多くの人にとって『百薬の長』ではなく『万病の元』なんです」

     

      アスクは依存症者の家族や支援者らが結成した。活動の原動力は、飲酒を後押ししても、依存症などの負の側面には目を閉じる社会への危機感だ。今成さんも、家族の依存症に悩んだ経験が原点にある。

     

      「依存症って、意志薄弱な人がなるのではなく、いま飲んでいる延長線上にある。害を減らしながらつきあうには『トリセツ』(取扱説明書)が必要です」

      飲酒欲をあおるCM、酒豪自慢をする芸能人、酒談議で盛り上がる宴席……。取材後、目に付くようになった光景は、酒の「トリセツ」を持たない日本社会を象徴しているように思えた。海外ではどうなのか。次回は各国の事情を聞く。

      ◇今成知美さん

     東京都出身。フリーライターを経て現職。酒の正しい知識を伝え、イッキ飲みや飲酒運転の撲滅に向けた活動に取り組む。

      

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    2017年03月15日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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