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    ビッグデータ活用力磨く

    将来予測や新ビジネスに

     「データサイエンス」について教える学部やコースを新設する大学が増えている。コンピューターや統計学を駆使してデータに潜む特徴を探り、将来予測や経営戦略に生かす力をつけるという。文系、理系を融合した新たな学問領域に精通した人材をどのように育てるのだろうか。(生活教育部 辻阪光平)

     

    ■数字から見える

     

     京都産業大(京都市)は今春、既存のコンピュータ理工学部(定員135人)を情報理工学部(同160人)に改組し、データサイエンスなど10コースを設けた。同コースでは日常生活や経済活動で生み出される膨大な量のビッグデータを解析して課題を解決するデータサイエンティストや、人工知能(AI)を扱う技術者らの養成を目指す。

     

    • 分析結果について話し合う指導教員(中央)と倉本さん(右端)ら学生(京都市の京都産業大で)=長沖真未撮影
      分析結果について話し合う指導教員(中央)と倉本さん(右端)ら学生(京都市の京都産業大で)=長沖真未撮影

     「応用プログラミング」の授業では統計的な解析手法を学び、自らの選んだテーマで分析する。3年倉本真圭まさよしさん(21)は6種類の硬貨について、過去35年間の年ごとの製造状況の特徴を分析。1980年代前半に10円硬貨の製造が多いなど五つのパターンに分類した。

     

     「80年代前半は飲料など10円単位の商品が流行したのかもしれない」と考え、資料を調べ議論したが結論は出ていない。「数字の分析で意外な傾向が見えることがある。原因を探るには歴史や文化の知識も必要で、関心がどんどん広がる」と言う。

     

     同コースではコンピューターのプログラミングのほか、AIの学習理論や技術も学べる。平井重行准教授(47)は「データを解析し、結果を活用して新たなサービスを生み出せる人材を輩出したい」と力を込める。脳科学など他のコースの関連する科目も併せて履修できる。今春の学部の志願者は5423人と、コンピュータ理工学部だった前年度から倍増した。

     

    ■学部開設続々

     

     広島大(広島県東広島市)も今春、新設した情報科学部にデータサイエンスコースを設置。大阪府立大(堺市)はマネジメント学類(旧経済学部)に経済データサイエンス課程を新設した。「経済・経営分野におけるビッグデータの収集や分析能力を磨き、官公庁や企業で企画立案に貢献する人材を養成したい」と学類長の杉村延広教授(64)。

     

     国内初のデータサイエンス学部を昨春開設した滋賀大(滋賀県彦根市)では、産官学の連携が進む。共同研究や学生のインターンシップ(就業体験)の受け入れなどで金融機関やメーカー、自治体など約50団体と提携。社員らから「大学で学び直したい」という声も多く、1期生が卒業するよりも早く、来春、修士課程を開設する見通しだ。

     

    • 各自のノートパソコンを講義に持ち込み、学習を進める学生ら(滋賀県彦根市の滋賀大で)
      各自のノートパソコンを講義に持ち込み、学習を進める学生ら(滋賀県彦根市の滋賀大で)

     提携先の自動車部品メーカー・デンソー(愛知県刈谷市)は、生産ラインにセンサーを取り付けて大量のデータを分析することで、熟練作業員の経験に頼る品質管理を効率化する共同研究に取り組む。広報担当者は「高い専門性を持つ大学との提携で、より質の高い製品作りにつなげたい」と期待する。

     

     学部長の竹村彰通教授(66)は「測定技術や通信環境が発展してデータがあふれているのに、そこから価値を引き出す人材が足りない。多くの学生が学べるよう、産官学で教育環境を強化していきたい」と語る。

    ■阪大全学生対象プログラム

     

     全学生を対象にデータサイエンスを教える取り組みも進む。

     

     大阪大(大阪府吹田市)は今春、全学部生向けの教育プログラム「数理・データアクティブラーニングプラン」を本格導入した。所属学部や数学の習熟度に応じて基礎から応用まで学べる37の科目群からなり、1年生ら約1400人が受講している。

     

     阪大は2015年に既存の組織を発展させて「数理・データ科学教育研究センター」(同府豊中市)を設け、同プランを開発。副センター長の鈴木たかし特任教授(65)は「データを処理して結果を解釈する力は全学生が身につけるべき素養になりつつある。重要性を認識する学生も多い」と言う。

     

     文部科学省は16年、阪大など6大学を、データサイエンスの教材づくりを担う教育拠点校に選定。政府が先月閣議決定した成長戦略「未来投資戦略」では、文系理系を問わず、全ての学生がデータサイエンスを学べる環境を整備する方針を掲げた。

     

     国が力を入れる背景には、深刻な人材不足がある。AIの導入分野は市場動向の予測や新薬開発、惑星探査など幅広く、世界中で優秀な技術者の奪い合いが起きている。経済産業省は国内で、AIなどを扱うIT(情報技術)人材が20年に37万人不足すると推計している。

     

     

    □高齢者ビジネス考える

     

     関西学院大人間福祉学部(兵庫県西宮市)で今年度、日本の高齢者ビジネスについて考える授業が開設された。3、4年生17人が実習や議論を通じて学んでいる。

     

     介護事業を手がける「ベネッセスタイルケア」の社員が講師を務める。4~7月に全14回の講義があり、学生は高齢者施設を見学したり、業界の市場調査について学んだりしてきた。最終回の13日には、「地域に根ざした大学と介護施設との望ましい連携のあり方」をテーマに発表を行う予定だ。担当する坂口幸弘教授は「福祉や介護の制度について大学で学んだ内容が、実社会でどう成立するかを実感できているようだ」と語る。

     

    □人間教育の実現目指す

     

     桃山学院教育大(堺市)で7日、「未来をつくる人間教育フォーラム」が開かれた。

     

     同大学が今春開設されたのを記念して開催され、大学関係者ら約180人が参加。大杉住子・大学入試センター審議役が「新しい時代をひらく教育課程」と題して基調講演。この後、「『人間教育』の実現をめざす教師のあり方を考える」をテーマにパネルディスカッションが行われ、橋本光能・大阪府教育庁教育監や森田英嗣・大阪教育大副学長ら4人が議論。「有能な駒」ではなく、「指し手」を育てる「人間教育」ができる教師を、どのように育成していくかについて話し合った。

    2018年07月12日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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