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    防災地域で学ぶ ラジオ局から情報発信/避難所の運営サポート

    • 防災の日の特番を収録する関西大社会安全学部の学生ら(8月下旬、滋賀県草津市で)=浜井孝幸撮影
      防災の日の特番を収録する関西大社会安全学部の学生ら(8月下旬、滋賀県草津市で)=浜井孝幸撮影

     大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号、そして北海道地震。この3か月で、深刻な被害をもたらした自然災害が相次いだ。地域の防災や復興支援を担う人材の必要性は高まる一方だ。防災に関する教育・研究に力を入れる大学の取り組みを追った。(生活教育部 鈴木隆弘) 



    ◇実践力磨く

     関西大が2010年に設置した社会安全学部では、災害に強いまちづくりや防災教育、危機管理などを専門とする教員が、1~4年生計約1200人を教える。大学院もある。大阪北部地震では、大阪府高槻市のキャンパスを避難場所として開放。発電機を近くのJR高槻駅に持ち出し、学生が通勤客らのスマートフォンをボランティアで充電した。


     日頃から学内で学ぶだけでなく、実践力を身につけようと地域に出て活動する。災害情報論が専門の近藤誠司准教授(46)と、ゼミの学生は昨年6月から毎月2回、滋賀県草津市のコミュニティーFM局「えふえむ草津」で、市の情報番組の防災コーナーを担当している。


     先月下旬には、防災の日(9月1日)に放送されるラジオの特別番組を収録。学生6人が出演し、おいしい非常食や地区防災計画などを紹介した。4年高橋良知さん(22)は気象庁のホームページなど便利な防災情報を挙げ、「災害に備えるには、信頼できる情報源を知り、慣れておくこと」と呼びかけた。


     台本は毎回、学生が考える。市民に興味を持ってもらうため、避難所の紹介で具体的な学校名を盛り込み、熱中症予防の解説では市内の発症者数のデータを入れる。4年清水洋希ひろきさん(21)は「伝えることは難しいが、市民が知りたい情報は何かをいつも考える」と話す。


     ラジオは災害時に役立つメディアとして、11年の東日本大震災で再認識された。近藤准教授は「防災情報は多いが、他人事ひとごとと思っていては役に立たない。地域のラジオで防災を発信し続けることで、身近なことと考えてもらえる」と強調した。

    • 避難所で被災者の話に耳を傾ける兵庫県立大大学院2年の内藤悠さん(右端、広島県坂町小屋浦で)
      避難所で被災者の話に耳を傾ける兵庫県立大大学院2年の内藤悠さん(右端、広島県坂町小屋浦で)


    ◇被災者の声

     1995年の阪神大震災をきっかけに防災への関心が高まり、専門的に学ぶ学部や研究科などが増えた。阪神大震災から復興した兵庫県では、県立大大学院に昨春、減災復興政策研究科が設けられた。被災者支援や災害復興計画、自然災害史などの研究を進め、院生は被災地でボランティア活動をしてきた。


     7月の西日本豪雨では、死者・行方不明者が16人に及んだ広島県坂町小屋浦で、院生約20人が今月10日まで約2か月間、交代で避難所の運営を支援。トイレ掃除や段ボールベッドの準備のほか、被災者の言葉に耳を傾け、ニーズや悩みを把握して町やボランティアセンターに伝える役割を果たした。


     同研究科2年内藤悠さん(23)は、今夏の半分近くを坂町で過ごした。顔なじみになった被災者が全壊した自宅の再建への不安や、体調の悪さを口にすることもある。内藤さんは「住民によって被災の程度や悩みが異なり、遠慮して互いに相談できないときもある。外部の人が聞くことが大切」と語る。


     院生とともに支援に携わった同研究科の阪本真由美准教授(47)は、「長期の支援で被災者との間に人間関係をつくり、ニーズの変化や課題を把握しながら対応することを学んだ。今後も被災地での活動を続けていきたい」と話した。


    ◇学部横断で研究機関

     学部横断で地域の防災に取り組む大学もある。大阪市立大では東日本大震災を機に都市防災のプロジェクトグループがつくられ、2015年に「都市防災教育研究センター(CERD)」が設立された。現在は学内外の教員65人が活動している。


     同大学は、大阪市南部の6区と地域防災に関する連携協定を締結。センターは区ごとに自主防災組織の代表らを集め、それぞれ10回程度の防災教室を開いてきた。地元の地形や過去の浸水被害を知ってもらい、災害発生時の避難所開設の演習なども行う。防災教室の運営を担当する佐伯大輔・文学部准教授(45)は「災害時はリーダーが必要になる。人を育てることが地域の防災力を高める」と説明する。


     民間資格「防災士」を養成しようと、学生だけでなく、地域の住民も受講できる防災士養成講座も16年から開催。資格を得た学生たちは「防災士クラブ」をつくり、小学校などの防災教室で講師を務める。クラブ員の生活科学部3年肥塚やよいさん(20)は「平常時から正しい防災知識を広め、地域で支え合う関係づくりを進められれば」と力を込めた。




    ■入学選抜 専門職養成

     大阪大が8月23~24日、入学者選抜の専門職を育てる研修を実施し、全国の国公私立大から47人の教職員が参加した。

     昨年度に始めた。参加者は10グループに分かれ、架空の大学を設定。大学が受験生に求める人材像を示す「アドミッション・ポリシー」を分かりやすく作る実習に取り組んだ。学校からの推薦書や志望理由書などに基づいた書類選抜をした後、模擬面接のビデオを視聴して合否判定を行った。主催した阪大高等教育・入試研究開発センターは「国の入試改革で主体性を評価する選抜が求められ、専門職を育てる必要性を認識する大学が増えている」としている。


    ■フォーラムで政策提言

     兵庫県養父市と連携して地域活性化に取り組む神戸学院大現代社会学部の学生が9日、同市であった「地域おこしフォーラムinやぶ」で、政策提言や、地域の魅力を紹介する動画を発表した。

     2~3年生71人が「やぶ☆(らぶ)プロジェクト」として4月から活動。住民への聞き取り調査などを基に、高齢者のコミュニティーづくりや、新たな就農者の獲得について提言をまとめたほか、東京からIターンし、畜産農家で働く女性らを紹介する動画も披露した。担当する岡崎宏樹教授は「現地の住民や行政担当者からの反応を受け、学生は社会とのつながりの中で学んでいる」と話す。



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    2018年09月14日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大阪本社社会部から
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