留学生と社会問題学ぶ/英語で200科目学位取得

議論育むグローバル人材

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 日本人の学生と外国人の学生が共に学ぶ取り組みが増えている。少人数で与えられたテーマについて議論する中で、異なる価値観をぶつけ合って合意を図る過程を経験する。実践している三つの大学を訪ねた。(生活教育部 新井清美)

 

 ◇多様な価値観

 同志社大今出川キャンパス(京都市上京区)で5日、日本人学生7人と、欧米やアジアの9か国からの留学生12人が「Issues in Intercultural Communication(異文化コミュニケーションにおける問題)」の授業を受けていた。やり取りは全て英語だ。

授業で差別をテーマに議論する日本人学生と外国人留学生(5日、京都市上京区の同志社大今出川キャンパスで)=浜井孝幸撮影
授業で差別をテーマに議論する日本人学生と外国人留学生(5日、京都市上京区の同志社大今出川キャンパスで)=浜井孝幸撮影

 「民間の施設が、特定の人々の入場を禁止するのはOKだろうか?」

 この日のテーマは「差別」。同大学グローバル教育センターのロバート・アスピノール教授(56)が、外国人客の利用を断った温泉施設の例などを示し、問いかけた。学生は4~5人のグループに分かれ、「自分の国では考えられない」「民間施設なら経営者に決定権があるのでは」と話し合った。ドイツやフランス出身の学生が過去のテロ事件から「移民への差別が根強い」などと述べ、日本人学生が聴き入る場面もあった。

 短期留学の経験がある経済学部3年の河野晴愛はるなさん(21)は「英語で相手を説得できる話し方に磨きをかけられる」。オランダ・ライデン大からの留学生でスペイン出身のギジェルモ・バニョスさん(20)は「東アジアを研究しており、日本人学生との議論は実践的な学びそのもの」と喜ぶ。

 同センターは2016年に設置され、日本文化や環境問題など37教養科目を英語で提供。今秋の履修者は延べ465人のうち日本人291人、外国人174人だ。

 あたらし茂之・同センター所長(51)は「たんなる交流とは異なり、日本人学生も留学生も学びを通して多様な価値観を深く知ることができる。ものの見方が固定しがちな日本の学びを変えたい」と語る。

 

 ◇教員を国際公募

 英語での授業だけで学位を取得できる大学もある。

 岡山大(岡山市)は昨秋、「グローバル・ディスカバリー・プログラム」を始めた。英語で79科目を実施しており、21年に環境科学、経済・経営、人文社会の3分野で計200科目にする予定だ。学生が関心に応じて履修し、分野にかかわらず学士レベルの教育を受けたことを表す「学術」の学位を得る。

「政治学入門」の授業で意見を述べる学生(11月下旬、岡山大で)
「政治学入門」の授業で意見を述べる学生(11月下旬、岡山大で)

 専任教員の国際公募をし、外国人と日本人計9人を新たに採用した。受講生は現在、日本を含む21か国の1、2年生86人。入試を春に加え、海外から受験しやすい秋にも行っている。

 11月下旬の「政治学入門」の授業では、19人が外国人労働者の受け入れ方針などについて意見を述べ合った。米国出身のマヤ・プライスさん(20)は「先生やクラスメートとの距離が近く、学びの内容が濃い」と話す。

 希望すれば同大学の10学部の専門科目も受けられる。1年生の植田七菜子さん(19)は途上国の教育問題に興味があり、「様々な分野が関係するので、学びたいことを選べるのは理想的」と教育学部などの授業も受講。長期の海外経験はなく、「英語での授業は大変。録音して復習している」と言う。

 プログラムディレクターの中谷文美あやみ・文学部教授(55)は「語学レベルも考え方も異なる人が隣にいるのが当たり前という感覚を養ってもらいたい」と期待を寄せる。

 

 ◇日本語でも

 こうした取り組みの多くは英語で行われるが、立命館大では日本語でも実施されている。

 「グローバル人材養成プログラム」で、11年から日本人学生と外国人留学生がチームを組み、企業から示された課題の解決策を提案。主催するキャリアセンターの部長、紀国きのくに洋・経済学部教授(53)は「違う考え方の人とプロジェクトをとりまとめる力は日本語でも身につく。日本で就職しても世界の人々と働く機会は増える」と狙いを語る。

 毎年定員(40人)を超える応募があり、面接などで選抜される。今年度は6月から5チームで、情報通信技術を活用した新しい働き方などを考えた。企業から「具体的な根拠を示して」と注文がつくことも。チームで話し合い、11月下旬に大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)で各企業を前に発表。学生は「挫折や失敗もしたが、その分成長できた」と振り返った。

 異なる価値観の人と一緒に何かを作り上げていく力は、グローバル化の進展でますます必要になるだろう。3大学では将来の社会を先取りした学びが繰り広げられていた。

 

 ■教育や施設連携協定

 関西大(大阪府吹田市)と武庫川女子大(兵庫県西宮市)は11月28日、相互交流を推進する包括連携協定を締結した。教育や研究、産学連携、学生交流、教職員の人材育成などで協力するという。具体的な計画として、武庫川女子大が開講する「保育士試験対策特別講座」を関大の学生が受講できるようにするほか、施設の相互利用や、入試広報での連携を検討している。

 大阪市内で記者会見した芝井敬司・関大学長は「自らの組織に閉じこもらず、連携を進める」と強調。瀬口和義・武庫川女子大学長は「互いに補完し、充実した研究、教育を行いたい」と話した。

 

 ■和菓子店とコラボ

 大阪府南部にキャンパスを持つ帝塚山学院大と、和菓子店「福壽堂秀信ふくじゅどうひでのぶ」(大阪市住吉区)が連携協定を結んだ。同大学の教員らが和菓子をPRするキャラクター「あずきんちゃん」を作成。11月下旬に同店の創業70周年記念イベント「あずきんちゃんフェスタ」を開き、約400人が訪れた。

 連携協定の締結は今年5月。フェスタでは小豆を使ったプリンやコーヒーゼリーなど、人間科学部食物栄養学科の学生らが同店と開発した商品が限定販売された。子ども向けに配布したあずきんちゃんの塗り絵なども好評だったといい、同大学は「さらに連携を深めたい」としている。

54467 0 月刊大学 2018/12/13 15:00:00 2018/12/13 15:00:00 2018/12/13 15:00:00 授業で議論する学生ら(5日、京都市上京区で)=浜井孝幸撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181217-OYTAI50009-T.jpg?type=thumbnail

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