障害が価値生む社会に(垣内俊哉 ミライロ社長)

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垣内俊哉・ミライロ社長
垣内俊哉・ミライロ社長

 障害や国籍、年齢、性別の違いにかかわらず、誰もが利用しやすい施設や製品を設計・計画する考え方「ユニバーサルデザイン」を提唱している。2020年の東京五輪・パラリンピック、25年の大阪誘致を進める国際博覧会(万博)を控え、世界の目が日本に向けられるなか、ユニバーサルデザイン先進国を目指す取り組みを、ここ関西から発信したい。

 ユニバーサルデザインは1990年頃、米国の建築家、ロナルド・メイス氏が唱えたのが始まり。日本では主に障害者のバリア(障壁)を取り除くことを意味する「バリアフリー」という言葉が使われてきた。だが、多様な現代社会ではあらゆる人を対象にしたユニバーサルデザインという考え方に立つべきだと考える。

 国内の障害者数は約800万人。加えて、ベビーカーに乗る3歳未満の子供は約300万人、高齢者は約3500万人に上る。合わせると全人口の4割近くになる。

 私は生後1か月の頃、「骨形成不全症」と診断された。骨が弱く折れやすい病気で、2万人に1人の割合で発症するとされる。これまでに20回以上骨折した。十数回に及ぶ手術と入退院を繰り返したが、自分の足で歩きたいとの夢はかなわなかった。

 車椅子で生活するようになった小学5年の時、給食当番をサボったことがあった。一緒にサボった友人はみんな先生から叱られたが、私は叱られなかった。先生は「障害者だから仕方がない」と言った。この頃から私は障害者だと自覚するようになった。自身の心の中にバリアが生まれた。

「滋賀県立大学」(滋賀県彦根市)絵・うらたじゅん
「滋賀県立大学」(滋賀県彦根市)絵・うらたじゅん

 転機となったのは、大学進学後、ホームページ製作のアルバイト先で上司に言われた言葉だった。

 「歩けないことに誇りを持て」

 アルバイト先では、営業を任されていたが、車椅子に乗っていることで顧客から覚えてもらい、一番の売り上げを上げることができた。歩けないからこそできることがある。見方を変えれば、障害が価値になることを学んだ。

 例えば、日本人の9割が右利き。駅の改札口、切符の投入口は右側にある。右利きが利用しやすいように整備された環境は、左利きにとっては逆にバリアになる。

 しかし「自分にあった環境はないか」「環境を自分に合わせられないか」との視点に立てば、新たな気づきや価値を見いだすことができる。左利き用の道具の販売店は、見方を変えることでビジネスの機会になる好例だ。

 車椅子に乗ると目線は高さ106センチ。この視点をかしたビジネスをしようと、20歳の時に大阪市で「ミライロ」を立ち上げた。経営理念は、「バリアバリュー(障害を価値に変える)」とした。

 障害のある当事者が監修することで、誰もが使いやすい施設や製品を効果的に作れる。何がバリアなのか見極めないと、バリューに変えることはできない。それが我々の役割だと考えている。

 滋賀県立大(滋賀県彦根市)でのバリアフリーの設備状況の調査を手始めに、バリアフリーのコンサルティングを展開している。今では社員数が52人となり、8人は何らかの障害があり、その経験や感性を活かし活躍している。

 5年前に日本ユニバーサルマナー協会を設立し、障害を持つ講師を企業などに派遣して障害者・高齢者の支援にまつわる知識や心理などを紹介する「ユニバーサルマナー検定」という研修を始めた。600社以上で実施し、6万人以上が資格を取得された。ユニバーサルデザインが受け入れられるようになってきたと感じる。

 東京五輪・パラリンピック開催で、世界から多様な人々を迎える日本では、ユニバーサルデザインの追い風が吹いている。「いのち輝く未来社会のデザイン」をうたった大阪万博が実現すれば、勢いはさらに加速するだろう。

 日本は世界の中でも、バリアフリー化が進んでいると言われている。なかでも大阪は、困っていたら「どうしたん」「なんかできることある」と気さくに声をかけてもらえることが多い。そんな土壌があるからこそ、ユニバーサルデザインの普及に向け、関西からできることがもっとあるのではないだろうか。

 

 

◇かきうち・としや 2012年立命館大卒。在学中にミライロ設立。東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会アドバイザーを務める。18年のジャパンベンチャーアワードで経済産業大臣賞。29歳。

45788 0 広論 2018/10/13 05:00:00 2018/10/13 05:00:00 2018/10/13 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181023-OYTAI50004-T.jpg?type=thumbnail

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