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    義足に 個性キラリ

     夕闇迫る石川県中能登町の夏祭り会場には近隣住民約5000人が集まった。涼しい風が吹き始めたステージに登場したのは、地元特産の着物姿の女性5人。しっかりとした足取りで客席の前まで歩み出てポーズを決めると、おもむろに裾の布をはぎ取った。スポットライトに輝いたのは義足だ。観客は、一瞬静まり返ったが、すぐに拍手が湧き起こった。

    • 観客の拍手に応える(左から)須川まきこさん、大西瞳さん、村上清加さん、阿部未佳さん、小林久枝さん。5人は病気や事故で足を失い義足になった。大西さんは「足を切っても私は私、何も変わらない。同じ境遇の人にも、そのことに気付いてほしい」と訴える(石川県中能登町で)
      観客の拍手に応える(左から)須川まきこさん、大西瞳さん、村上清加さん、阿部未佳さん、小林久枝さん。5人は病気や事故で足を失い義足になった。大西さんは「足を切っても私は私、何も変わらない。同じ境遇の人にも、そのことに気付いてほしい」と訴える(石川県中能登町で)

     義足の女性たちによるファッションショーが注目を集めている。これまで石川の他、横浜や大阪でも開催された。企画したのは障害者スポーツの撮影を続ける写真家の越智貴雄さん(36)だ。「義足は隠さなければいけないという先入観を取り払うきっかけになれば」と話す。

     この日のショー終了後、モデルを務めた会社員の小林久枝さん(52)の義足に、観客の少女が恐る恐る触った。小林さんが「かっこいいでしょ」と笑顔を向けると、少女もほほ笑み返した。

     会社員の須川まきこさん(41)は9年前、悪性の腫瘍で左足を股関節から切断した。2年間、入退院を繰り返し、「自分は欠陥品だ」と落ち込んだ。大好きだったファッションも「ワンピースも着られないんだ」と思うと楽しめなくなった。

     そんなときテレビ番組で大西瞳さん(38)を見た。リオデジャネイロ・パラリンピックに陸上100メートルで出場を目指すアスリートだ。ミニスカート姿で堂々と街を歩く姿に衝撃を受けた。大西さんが所属するクラブに直接会いに行き、悩みを相談するうち「自分だけじゃない。無理に頑張る必要もない」と気付き、楽になった。

     それ以来、義足を隠さないでも、おしゃれを楽しめるようになった。今は「義足も含めて新しい自分だ」と思える。そして今度は自分が勇気を与える側になろうと決め、ステージに立つ。

     写真と文 川口正峰(8月2日から10月21日に撮影)

    • ショーの後、小林さんの義足に触る女の子。そばで見守る父親は「みなさんの明るさにイメージが変わりました」と感心していた(石川県中能登町で)
      ショーの後、小林さんの義足に触る女の子。そばで見守る父親は「みなさんの明るさにイメージが変わりました」と感心していた(石川県中能登町で)

    • 須川さんが描いた、自身をモデルにした義足を着けた女性のイラスト。描くことは自分を客観的に見つめる心のリハビリにもなった(東京都内で)
      須川さんが描いた、自身をモデルにした義足を着けた女性のイラスト。描くことは自分を客観的に見つめる心のリハビリにもなった(東京都内で)

    • 仕事が終わってから陸上トラックで練習する大西さん。夢であるパラリンピック出場に向け週5回、汗を流す(東京都内で)
      仕事が終わってから陸上トラックで練習する大西さん。夢であるパラリンピック出場に向け週5回、汗を流す(東京都内で)

    • 銀座を歩く村上さん。6年前、事故で右足を失った。「これが私の足。ひとつの個性ととらえてもらえれば」と普段から義足を隠さない(東京都中央区で)
      銀座を歩く村上さん。6年前、事故で右足を失った。「これが私の足。ひとつの個性ととらえてもらえれば」と普段から義足を隠さない(東京都中央区で)

    2015年11月02日 15時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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