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    西国巡礼つなぐ祈り

     6月上旬、日本三景の天橋立(京都府宮津市)近くにある西国三十三所の第二十八番札所・成相寺なりあいじは濃い霧に包まれていた。かさをかぶり、色とりどりの雨具を羽織った男女約30人が雨にぬれた石段を1歩ずつ上っていた。

    • 兵庫県と京都府の境にある小坂峠へ向かい、山道を進む人々。池に白装束が映り込む(5日、京都府福知山市で)
      兵庫県と京都府の境にある小坂峠へ向かい、山道を進む人々。池に白装束が映り込む(5日、京都府福知山市で)

     西国三十三所の草創1300年を記念した「徒歩巡礼法灯リレー」。参加者たちは、険しい参道を登り切り、法灯に照らされた本堂で読経した。最高齢で東京都千代田区の元大学教授土谷茂久さん(83)は「永遠にきつい登りが続くわけではない。人生も一緒でいい経験となる」と手を合わせた。

     西国三十三所は、長谷寺(奈良県桜井市)の徳道とくどう上人が718年に定めたと伝わる。各札所はいずれも観音菩薩ぼさつを本尊とする。弘法大師・空海が開創した四国八十八か所霊場より約100年古いとされる。

     同リレーは、第一番札所・青岸渡寺せいがんとじ(和歌山県那智勝浦町)から第三十三番札所・華厳寺けごんじ(岐阜県揖斐川町)までの巡礼路約1000キロを十数回に分けて歩く。2016年5月にスタートし、20年に全札所を踏破する予定で、今回は、兵庫県朝来市から京都府舞鶴市までの約100キロを3泊4日で巡った。

     今では車で各札所を巡る人も多い。同リレーを企画した第五番札所・葛井寺ふじいでら(大阪府藤井寺市)の森快隆住職(76)は「先人たちの息づかいを感じられる道中にも意味がある」と話す。

     西国三十三所札所会広報委員長の田中良宜りょうぎ・六角堂執事(51)は言う。「交通や仮想現実が発達しても、匂いや風、音、空気などの臨場感は各札所を訪れないと感じられない。100年後も巡礼は続いているのではないでしょうか」。巡礼の道はこれからもさまざまな出会いをつないでゆく。

    (写真と文 尾賀聡)

    • 先達、法灯を先頭に第二十八番札所の成相寺本堂へと向かう人たち(6日、京都府宮津市で)
      先達、法灯を先頭に第二十八番札所の成相寺本堂へと向かう人たち(6日、京都府宮津市で)

    • 般若心経などのお経を唱えながら錫杖(しゃくじょう)を振り鳴らす修験者(6日、京都府宮津市の成相寺で)
      般若心経などのお経を唱えながら錫杖(しゃくじょう)を振り鳴らす修験者(6日、京都府宮津市の成相寺で)

    • ネコのイラストが描かれた布で覆われた笠。雨や日光を遮る笠は徒歩巡礼で重宝する(7日、京都府宮津市で)
      ネコのイラストが描かれた布で覆われた笠。雨や日光を遮る笠は徒歩巡礼で重宝する(7日、京都府宮津市で)

    • 記念事業の一つ「月参り巡礼」では、通常の印に加え、草創1300年を記念した特別なご朱印(左上)も授与される。最大3時間待ちになった札所もあったという(4月22日、兵庫県加東市の播州清水寺で)
      記念事業の一つ「月参り巡礼」では、通常の印に加え、草創1300年を記念した特別なご朱印(左上)も授与される。最大3時間待ちになった札所もあったという(4月22日、兵庫県加東市の播州清水寺で)

    • 数日間でぼろぼろになった手作りのワラジ。山道では足袋だけでもいいが、舗装路ではワラジがクッションになるという(5日、京都府福知山市で)
      数日間でぼろぼろになった手作りのワラジ。山道では足袋だけでもいいが、舗装路ではワラジがクッションになるという(5日、京都府福知山市で)

    2018年06月25日 15時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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