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    「かっこいい」で偏見壊す

     東京都内のスタジオ。カメラのシャッター音に合わせて車いすタレントの中嶋涼子さん(32)と曽塚レナさん(29)がポーズを決める。

     国内では珍しい障害者専門のタレント事務所「ココライフ タレント部」(本部・東京)の写真撮影の現場だ。事務所には脊髄損傷や脳性まひ、筋ジストロフィーなどのタレントが所属する。

    • PR用写真を撮影中の中嶋涼子さん(右)と曽塚レナさん。「強く、美しく、生きるパワーを伝えられるような女性になりたい」と話す(東京都渋谷区で)
      PR用写真を撮影中の中嶋涼子さん(右)と曽塚レナさん。「強く、美しく、生きるパワーを伝えられるような女性になりたい」と話す(東京都渋谷区で)

     中嶋さんは9歳の時、横断性脊髄炎になり、車いす生活になった。人目が気になり引きこもりがちに。通勤電車内で「邪魔だよ」と言われたこともあった。悔しかった。「障害があっても暮らしやすい社会に」と、車いすならではの悩みをさらけ出すような動画を公開してきた。得意の英語を生かし、さらに活動の幅を広げたいと考えている。

     曽塚さんは27歳のときに階段から転落して脊髄を損傷。「もう歩けないんだと、落ち込むことに際限がなかった」と振り返る。多くの輝いている車いすの仲間と出会ったことで、「かっこいい自分になって、車いすや障害者のイメージを壊したい」と前を向く。

     同事務所は女性障害者向けのフリーマガジンを発行するNPO法人「施無畏せむい」が3月、「障害者が芸能界にもっと進出してもいいはず」と開設した。6月のオーディションには全国から200人以上の応募があった。現在所属タレントは33組。ボイスレッスンや表現力などの勉強会を開き、オリジナル曲の収録、インターネット専用の番組も始めた。

     東京パラリンピックも控えて注目を集め、企業の広告やモデルに採用されるほか、イベントへの出演依頼も相次いでいるという。

     「死や絶望と向き合い、修羅場を乗り越えてきた人たちだけに表現できることがある」と同事務所の守山菜穂子プロデューサー(43)。海外の映画で障害者がかっこいい役で普通に出演している例を挙げ、「日本にもそんな時代がすぐそこにある」と期待を込める。(4月22日から9月28日に撮影)

     (写真と文 守屋由子)

    • 製薬会社の企業広告の撮影に臨む上田菜々さん(20)。小学3年のときに脊髄性筋萎縮症と診断された。初めは車いすを見られるのが嫌だったが、おしゃれを楽しむうちに自信を持てるようになった。ネイリストとしても活躍。前向きな生き方が会社のイメージに合うと、モデルに起用された(大阪市北区で)
      製薬会社の企業広告の撮影に臨む上田菜々さん(20)。小学3年のときに脊髄性筋萎縮症と診断された。初めは車いすを見られるのが嫌だったが、おしゃれを楽しむうちに自信を持てるようになった。ネイリストとしても活躍。前向きな生き方が会社のイメージに合うと、モデルに起用された(大阪市北区で)

    • ファスナーのYKKが開いた展示会でモデルの梅津絵里さん(41)(中央)はユニバーサルデザインのドレスについて来場者に説明した。27歳の時に難病の「全身性エリテマトーデス(SLE)」を発症し、6年間入院した。「寝たきりで天井ばかり見ていた過去の自分に楽しい未来が待っていると教えたい」とほほ笑む(大阪市中央区で)
      ファスナーのYKKが開いた展示会でモデルの梅津絵里さん(41)(中央)はユニバーサルデザインのドレスについて来場者に説明した。27歳の時に難病の「全身性エリテマトーデス(SLE)」を発症し、6年間入院した。「寝たきりで天井ばかり見ていた過去の自分に楽しい未来が待っていると教えたい」とほほ笑む(大阪市中央区で)

    • オリジナル曲の収録をする弱視の北原新之助さん(28)。進行性の網膜色素変性症のため矯正ができない。クラシックの声楽家として活動の場を増やし、将来、障害を持つ音楽家のために役に立ちたいと事務所に所属した(東京都文京区で)
      オリジナル曲の収録をする弱視の北原新之助さん(28)。進行性の網膜色素変性症のため矯正ができない。クラシックの声楽家として活動の場を増やし、将来、障害を持つ音楽家のために役に立ちたいと事務所に所属した(東京都文京区で)

    • 聴覚障害の岡本かおりさん(42)は講演会で、海外に行ったときの体験を表情豊かに手話で話す。「長いまつげの女の人が……」など大きなパフォーマンスに会場は盛り上がった(神奈川県厚木市で)
      聴覚障害の岡本かおりさん(42)は講演会で、海外に行ったときの体験を表情豊かに手話で話す。「長いまつげの女の人が……」など大きなパフォーマンスに会場は盛り上がった(神奈川県厚木市で)

    • レコーディングに臨む姉妹デュオグループの「SAKURANBO」(サクランボ)。オリジナルの楽曲は100曲近くにのぼる。二人とも先天性骨形成不全症で、骨がもろく今まで60~70回骨折を繰り返してきた。優しいギターの音色と歌声で「ありのままを生きること」をテーマに活動する(9月22日、東京都文京区で)
      レコーディングに臨む姉妹デュオグループの「SAKURANBO」(サクランボ)。オリジナルの楽曲は100曲近くにのぼる。二人とも先天性骨形成不全症で、骨がもろく今まで60~70回骨折を繰り返してきた。優しいギターの音色と歌声で「ありのままを生きること」をテーマに活動する(9月22日、東京都文京区で)

    • イベントで講演と歌を披露する小澤綾子さん(35)。20歳で筋ジストロフィーと診断された。「車いすになり、ゆくゆくは寝たきり」と言われ絶望したが、自分が生きているだけで喜んでくれる家族らの存在に、「自分は幸せだ」と思えるようになった。今年3月には本「10年前の君へ 筋ジストロフィーと生きる」も出版。「生きていて良かった」。そんな思いを伝えていきたいと会社の休みを利用して全国をかけまわる(8月26日、大阪市北区で)
      イベントで講演と歌を披露する小澤綾子さん(35)。20歳で筋ジストロフィーと診断された。「車いすになり、ゆくゆくは寝たきり」と言われ絶望したが、自分が生きているだけで喜んでくれる家族らの存在に、「自分は幸せだ」と思えるようになった。今年3月には本「10年前の君へ 筋ジストロフィーと生きる」も出版。「生きていて良かった」。そんな思いを伝えていきたいと会社の休みを利用して全国をかけまわる(8月26日、大阪市北区で)

    • 大阪に拠点を置くダンサーの森田かずよさん(41)。二分脊椎症、側わん症など多くの障害がある。この日は鍛えられた123センチの体でフラダンスを披露し、観客を魅了した。18歳から女優・ダンサーとして活動しており、海外での公演経験もある。東京での活動をさらに増やしたいと今回、事務所と提携した(5月12日、大阪市生野区の聖和教会で)
      大阪に拠点を置くダンサーの森田かずよさん(41)。二分脊椎症、側わん症など多くの障害がある。この日は鍛えられた123センチの体でフラダンスを披露し、観客を魅了した。18歳から女優・ダンサーとして活動しており、海外での公演経験もある。東京での活動をさらに増やしたいと今回、事務所と提携した(5月12日、大阪市生野区の聖和教会で)

    • オーディションに参加し、手話ダンスで独自性をアピールする聴覚障害のダンサー・MiCHiさん(6月2日、東京都中央区で)
      オーディションに参加し、手話ダンスで独自性をアピールする聴覚障害のダンサー・MiCHiさん(6月2日、東京都中央区で)

    • オーディションで、かつらを取って、カメラテストに臨む薬剤師の木村祐太さん(28)。15歳のときに骨肉腫となり、昨年、左の骨盤から下を切断。がんサバイバーとして、「どんな状況でも自分は楽しみたいし、自分が活躍することで病気の人の励ましになる」と応募し、見事、合格を勝ち取った(6月2日、東京都中央区で)
      オーディションで、かつらを取って、カメラテストに臨む薬剤師の木村祐太さん(28)。15歳のときに骨肉腫となり、昨年、左の骨盤から下を切断。がんサバイバーとして、「どんな状況でも自分は楽しみたいし、自分が活躍することで病気の人の励ましになる」と応募し、見事、合格を勝ち取った(6月2日、東京都中央区で)

    2018年10月01日 15時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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