過疎の町支える生命線

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 82歳の天野冬子さんは浜松市天竜区春野町の山あいに住む。街と結ぶ市営バスがやってくるのは週2日だから、買い物や病院通いに三輪バイクは欠かせない。しかし、最寄りの給油所まで片道19キロ・メートル。「もっと近くで給油できたら――」

市施設の駐車場で行われた「移動式給油所」の実証実験。地下タンクを使わず、タンクローリーから計量器を通して直接給油する(昨年12月4日、浜松市天竜区春野町で)
市施設の駐車場で行われた「移動式給油所」の実証実験。地下タンクを使わず、タンクローリーから計量器を通して直接給油する(昨年12月4日、浜松市天竜区春野町で)

 全国の過疎地で給油所の減少が止まらない。経済産業省が定義する、同一市町村内の給油所が3か所以内の「SS(サービスステーション)過疎地」は2012年度末に257市町村だったが、17年度末には312市町村に増えた。

 背景にあるのは、家族経営の後継者不足、低燃費車の普及や過疎によるガソリン販売量の減少。加えて、設置から50年をめどに求められる地下タンクの改修費用が追い打ちをかけている。

 06年に給油所が6か所あった春野町でも現在は2か所に減った。天野さんが通うスタンドは22年にも閉鎖されるという。経営者の花島基さん(66)は「まもなく地下タンクが寿命の50年を迎える。後継者もいない。通ってくれるお年寄りを思うとつらい」と語る。

 深刻な事態を受けて、同省は「移動式給油所」の実証実験を始めた。14年2月の関東甲信地方などに被害をもたらした大雪では、各地で道路が寸断され、ガソリンや灯油の供給が止まり、生活が混乱した。「給油所の維持は過疎対策だけでなく、災害対策としても重要です」と同省の石油流通課課長補佐の成瀬輝男さんが説明する。

 春野町内のもう一つの給油所は、隣接の商店と併せて井堀たみ子さん(70)がたった一人でやりくりする。営業は週3日。地域の人たちが足しげく通うものの経営は厳しい。「みんなが困るから、やめるにやめられん。ボランティア感覚よ」と井堀さんは笑った。

 (写真と文 菅野靖)

給油客に声をかける井堀さん(左)。かつては週に1日の休みだった。現在は一人でやっているため、週4日休んでいる(1月16日、浜松市天竜区春野町で)
給油客に声をかける井堀さん(左)。かつては週に1日の休みだった。現在は一人でやっているため、週4日休んでいる(1月16日、浜松市天竜区春野町で)

愛用の三輪バイクに乗る天野さん。車1台がやっとの細いくねくね道を、1時間弱かけて最寄りの給油所へ通う(昨年12月5日、浜松市天竜区春野町で)
愛用の三輪バイクに乗る天野さん。車1台がやっとの細いくねくね道を、1時間弱かけて最寄りの給油所へ通う(昨年12月5日、浜松市天竜区春野町で)

井堀さんが経営する「杉川スタンド」の給油所(中央)と商店(左)。どちらも地域になくてはならない存在だ(昨年12月3日、浜松市天竜区春野町で)
井堀さんが経営する「杉川スタンド」の給油所(中央)と商店(左)。どちらも地域になくてはならない存在だ(昨年12月3日、浜松市天竜区春野町で)

長野県天龍村では、ただ一つ残った給油所をいかに維持するのか、住民代表や村職員などが集まって会議が行われた。従業員の男沢秀幸さん(奥)は厳しい現状を訴えた(昨年11月7日)
長野県天龍村では、ただ一つ残った給油所をいかに維持するのか、住民代表や村職員などが集まって会議が行われた。従業員の男沢秀幸さん(奥)は厳しい現状を訴えた(昨年11月7日)
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62239 0 ズームアップ 2019/01/21 15:00:00 2019/02/04 10:50:24 2019/02/04 10:50:24 市施設の駐車場で行われた移動給油所の実証実験。地下タンクを使わず、タンクローリーから計量器を通して直接給油する(昨年12月4日、浜松市天竜区春野町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190121-OYT8I50081-T.jpg?type=thumbnail

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