路上の生きざま 表現

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 手を伸ばして くう をつかむ、7人の男たちが行進する、ときに 裸足はだし で高く跳び上がる。冷気が身に染みる10月の夜、横浜・みなとみらいの広場で披露されたダンスパフォーマンス。白髪交じりのアタマ、少し突き出た下腹。ダンサーとは言いがたい体つきだが、その動きは独特の気迫を放つ。

公演を前に、リハーサルで踊る西篤近さん。ソケリッサは固定された振り付けではなく、その時の感覚を大事にする。「瞬間瞬間、変化していく楽しさがある」(横浜市南区で)
公演を前に、リハーサルで踊る西篤近さん。ソケリッサは固定された振り付けではなく、その時の感覚を大事にする。「瞬間瞬間、変化していく楽しさがある」(横浜市南区で)

 ダンサー・振付家のアオキ裕キさん(53)が率いるダンス集団「新人Hソケリッサ!」の公演だ。アオキさんを除く6人は元路上生活者、人生の「底」を経験した。2005年に結成されたが、メンバーは流動的、急にぷいっといなくなるメンバーもいる。

 バックダンサーやCMの振り付けなど一線で活躍してきたアオキさんは、01年、ダンス留学中に起きた米同時テロで人生観が変わった。帰国後、若者が路上ライブをする傍らで、おしりを出してごろんと寝ていたホームレスのおじさんが目に留まった。「こんな人たちと踊ったら、絶対おもしろい」

 ホームレスの自立を支援する雑誌「ビッグイシュー」の販売員に声をかけてメンバーを集めた。いろんなしがらみを捨て、路上に寝ていた人たちがいた。

 硬く冷たい地面の上に寝て、「死」とも隣り合う、ホームレスの人たちの動き、心のままの表現は普通じゃなかった。07年、東京・新宿の小劇場での旗揚げ公演は喝采を浴びた。

 メンバーの一人、平川収一郎さん(51)は、ソリの合わない父から逃げ、15歳で家出。住み込みで働いていたパチンコ店を33歳でクビになり、大阪・西成の路上で寝るようになった。

 「人生疲れたな」。新宿の歩行者デッキで独り寝ていた11年前、ビッグイシューの販売員仲間に誘われてソケリッサに入った。そこではおじさんたちが奇妙な格好でうごめいていた。「訳わからんことして、これダンスちゃうやろ」。でも皆、生き生きとしていた。

 今も毎日、都心の路上に立って雑誌を販売するが、時に通行人の視線が冷たく刺さる。「ひとりぼっちで突っ立ってると、どんなふうに死ぬんやろとかいらんこと考える。でも踊っている時は違う」。ソケリッサは自分の力――。不安もすべてのみ込んで体を動かす。自身の存在を踊りに託すように。(写真と文 池谷美帆)

 ◎10月10日~11月16日撮影

横浜・みなとみらいの公演で踊るメンバー。アオキさんと西さん以外はダンス未経験だが、「社会と切り離された体の踊りは『個』が立っている」とアオキさんは話す
横浜・みなとみらいの公演で踊るメンバー。アオキさんと西さん以外はダンス未経験だが、「社会と切り離された体の踊りは『個』が立っている」とアオキさんは話す

公演後、観客から声をかけられ、笑顔の山下幸治さん(左)とアオキさん。「ずっと認められたいと思っていた。でも集中して踊りきった時、それを超える達成感を感じた」と山下さん(横浜市西区で)
公演後、観客から声をかけられ、笑顔の山下幸治さん(左)とアオキさん。「ずっと認められたいと思っていた。でも集中して踊りきった時、それを超える達成感を感じた」と山下さん(横浜市西区で)

大阪市西成区で行ったワークショップで参加者と踊るメンバー(右)。中には地元のビッグイシュー販売員の男性の姿も
大阪市西成区で行ったワークショップで参加者と踊るメンバー(右)。中には地元のビッグイシュー販売員の男性の姿も

「ビッグイシュー」を売る平川さん。通行人は目の前を足早に通り過ぎていた(東京都港区で)
「ビッグイシュー」を売る平川さん。通行人は目の前を足早に通り過ぎていた(東京都港区で)

 

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