[自民党研究 政界を問う]第1部 地方・党員6 続く世襲 公募組は苦戦 人材の画一化に懸念

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「皆が納得」

 しめやかなお別れの会が、弔い合戦を参列者に表明する儀礼ともなった。

 「北川の魂、北川の命をぜひ、北川家に受け継いで仕事をしてもらいたい」

 1月24日、大阪府寝屋川市の市民会館。急逝した自民党衆院議員、北川知克(大阪12区)の遺影を前に、実行委員長の元参院副議長、山東昭子(76)はそう声を震わせ、会場前方の遺族に目をやった。

 会が終わると、党府連へと急ぐ若者の姿があった。北川のおいの晋平(31)だ。4月の補欠選挙に向け、府連が始めた候補者の公募に応じるためだった。

 府連は書類選考で絞り込んだ4人と面接し、最終的に晋平を選んだ。決め手になったのは、「北川家の継承者」(府連幹部)であることだ。記者会見に臨んだ晋平は、「遺志をしっかりと引き継ぎ、全身全霊で戦う」と力を込めた。

 大阪12区には、北川の父で元環境庁長官の石松の代から、40年以上にわたって北川家を支えてきた後援会網が根付く。支援者の一人は「北川一族の候補なら皆が納得して戦える」と晋平の公認決定を歓迎する。

 一日の長

 こうした世襲劇は、中選挙区時代からの個人後援会が強固な自民党では珍しいことではない。小選挙区制で政党主導が強まり、公募選考も定着したとはいえ、「地盤、看板(知名度)、かばん(資金)」が引き継がれる世襲候補には一日の長があるからだ。

 自民党の党・政治制度改革実行本部によると、2017年衆院選の小選挙区当選者のうち、世襲議員の割合は自民党が33%(72人)で最も高く、国民民主党の12・5%(2人)、立憲民主党の10%(2人)を大幅に上回る。自民党総裁は19代の森喜朗(81)を挟み、15代の宮沢喜一から25代の安倍晋三(64)まで世襲議員が続く。森も、9期連続無投票で石川県根上町長を務めて県内屈指の影響力を誇った茂喜の長男だ。

 消えた公約

 もっとも、世襲への批判も根強い。人材の多様性が損なわれ、時代への対応力を失うとの懸念からだ。

 「決まった家から代々議員が出るなら、江戸時代の藩と同じ。出生にかかわらず、志ある人物が公平に競争するべきだ」。静岡県議を経て、公募で出馬した衆院滋賀1区で3回の当選を重ねる大岡敏孝(46)は、こう主張する。

 大岡は18年、実行本部の議論の中で、候補者公募に親族が応じる場合は早期の引退表明を義務づける提言案をまとめた。だが、世襲議員らから反発が続出し、最終段階で削られた。

 自民党は09年衆院選の政権公約でも、世襲候補は「次回の総選挙から公認または推薦しない」と明記したが、その後も引退議員の子弟が公認され、なし崩し的に公約から姿を消した。当時、選挙対策副委員長として世襲制限を主導した官房長官の菅義偉(70)も、今は言及しなくなった。

 相次ぐ不祥事で「魔の3回生」と呼ばれる当選3回議員には公募組が多い。地縁も血縁もない候補の苦戦が目立つことも、世襲批判の矛先を鈍らせる。

 弁護士出身の文部科学相、柴山昌彦(53)は、自民党本部の公募候補の第1号として04年の衆院埼玉8区補欠選挙で初当選以来、議席を守り続けている。昨年末、所沢市内にようやく初めての地区後援会が誕生した。世襲議員のように張り巡らせた組織がないため、地元入りする際はあらゆる会合をはしごし、得意ではない酒も口にして顔を覚えてもらう努力を怠らない。

 「公募がなければ、私は絶対に政治の世界にいなかった。政治は誰もが挑戦できる場であることを証明しなければならない」

 自民党の古くて新しい課題は、次の時代へと引き継がれる。  (敬称略)

 党員 世襲制限「不要」57%

 読売新聞社の自民党員調査で、世襲を制限すべきだと思うかどうかを聞いたところ、「制限する必要はない」が57%で、「制限すべきだ」の37%を上回った。一般有権者への同じ質問では「制限する必要はない」49%、「制限すべきだ」43%で差が小さく、自民党員は世襲制限に否定的な傾向が強いことが浮かんだ。

 東大の内山ゆう教授(政治学)は「自民党員は基本的に保守的なため、世襲への抵抗感が少なく、世襲議員の方が信頼できるという人が多いのではないか」と分析する。

 党員では特に、今の自民党に「満足している」と答えた層で、世襲制限は不要と思う人が67%に上り、現状への満足度が世襲に対する寛容さにつながっていることがうかがえる。

 内山氏によると、英国下院でも1割弱の世襲議員がいるが、政党が候補者の選挙区を決めるため、日本のように地盤が引き継がれて世襲議員が有利になる面は少ないという。「世襲が一律に悪いわけではないが、政界への新規参入が難しくなるのは問題だ」と指摘する内山氏は落選した際に復職しやすい制度の整備など、新規参入を支援する仕組みの必要性を訴えている。

 ◆世襲

 親族から選挙地盤などを引き継ぐこと。読売新聞は国会議員について、〈1〉3親等以内の血族に国会議員がいる〈2〉配偶者及び2親等以内の姻族に国会議員がいる――のいずれかで、地盤か看板を継いでいる場合を原則、世襲と定義している。3親等は、ひ孫、おじ・おば・おい・めいなど。

440821 1 政治 2019/02/13 05:00:00 2019/02/13 05:00:00 2019/02/13 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190213-OYT1I50001-T.jpg?type=thumbnail

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