[自民党研究 政党を問う]第1部 地方・党員<7>選挙支える「ドン」の力

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県議 細かな後援組織

逆らえない

 国会議員ら来賓が居並ぶ中、最初にあいさつに立ったのは富山県議の米原しげる(75)だった。

 「あんた上手になったね。安心して聞いていられる。選挙に出たらどうですか」

 1月19日、富山県砺波となみ市で開かれた自民党会合。米原が進行役の女性をそう持ち上げると、会場がどっと沸いた。場が和むと、米原はおもむろに参院議員、堂故茂(66)(富山選挙区)に視線を移した。「堂故さんが2期目にチャレンジされる。今まで以上にご支援を賜りたい」

 富山のドン――。こう称されることもある米原は、1987年から8期にわたり県議を務める。クレーンリース会社を営み、富山経済同友会の代表幹事も務め、県政財界の重鎮となった。元首相の森喜朗(81)とは旧知の仲だ。

 米原の力を象徴するのが、地元・砺波市の党員数だ。有権者の1%を占めれば合格とされる中、同市は5%を超える。「米原さんに逆らって砺波市で選挙は出来ない」(地元支部関係者)

 2018年7月に堂故の参院選公認が決まるや、米原は堂故に出席が必要だと思われる会合を伝え、日程を押さえさせた。春からは市内の企業など約200団体を一緒に回る手はずだ。「国会議員を私らが支えてやらなきゃいかんという気持ちでやっている」。米原は力を込める。

 選挙区が都道府県単位と広い参院選は、地方議員の支えなしに成り立たない。選挙区は狭い衆院選でも、地縁・血縁のない衆院議員には、地元に根付く地方議員の協力が不可欠だ。

 中選挙区時代は、異なる派閥に所属する自民党議員同士が、同じ選挙区でしのぎを削った。地方議員はそれぞれの国会議員に連なり、選挙やカネの面倒を見てもらった。元自民党幹事長の小沢一郎(76)が93年に離党し、新生党を結成した際は、小沢に連なる岩手県議もこぞって離党し、県議会で新会派を結成した。

 だが、小選挙区制が導入されると、きめ細かく後援組織を地元に張り巡らせる地方議員が国会議員を支える構図が強まった。その結果、米原のように「ドン」として国会議員や自民党本部から一目置かれるベテラン県議が各地で生まれた。

災害でも

 ドンが力を発揮するのは選挙だけではない。自民党熊本県連で語り草となっているのが、県連会長を務める県議、前川おさむ(58)の熊本地震での対応だ。

 地震発生翌日の16年4月15日、上京中だった前川は地元選出国会議員らと飛行機で熊本に戻った。つり天井の一部が垂れ下がった県連会議室に、防災服姿の国会議員や地方議員約50人が集まり、対応を協議した。

 「発生から72時間は人命第一だ。地元の要望事項があっても県庁には電話せず、窓口を一本化しよう」

 会議でそう決まり、取りまとめ役を託されたのが、当時は県連幹事長だった前川だ。「水がない」「電気が届かない」「トイレが使えない」――。携帯電話は鳴り続けた。1日200本を超える電話を、前川は8年近く幹事長を務めた人脈と持ち前の調整力でさばいていった。

 「地元の要望を直接伝えたいのは政治家の本能だが、みんな我慢してくれた」。前川は淡々と話すが、参院議員の馬場成志(54)(熊本選挙区)は「前川先生でなければ出来なかった」と振り返る。

首相と電話

 18年9月1日、水戸市内のホテルで山口武平(享年97歳)のお別れの会が開かれた。山口は茨城県議を14期55年、県連会長を22年務めたドン中のドンだ。

 竹下派7奉行に数えられ、総裁選にも出馬した梶山静六とは県議当選同期の盟友。竹下登、小渕恵三、小泉純一郎(77)といった歴代首相とも直接電話できる間柄だった。お別れの会には政財界の約1000人が集まり、首相の安倍晋三(64)のビデオメッセージも流された。

 弔辞を読み上げたのは、前日、北京で日中財務対話を終えたばかりの副総理兼財務相、麻生太郎(78)だった。「巨星つ。山口先生の歩みは、自民党そのものの歩みであります」

 山口が去っても、各地でドンの時代はしばらく続きそうだ。(敬称略)

 

優先度高い「地方活性化」

 自民党は多くの地方議会で多数派を形成し、党の組織を下支えしている。

 総務省によると、2017年末の都道府県議は2614人で、うち48・4%が自民党議員だ。無所属は19・2%で、自民党籍を持っている議員らを含めれば保守系で半数を超えるとされる。

 市区町村議員は3万101人のうち6・7%が自民党議員だが、全体の70・6%を占める2万1246人が無所属で、このほとんどが保守系とみられる。

 読売新聞社の自民党員調査では、自民党に優先して取り組んでほしい政策や課題を複数回答で聞いたところ、「地方の活性化」は73%で、「経済政策」79%、「震災復興や防災対策」75%に続いて3番目に多かった。一般有権者では、7番目の67%だった。地方を重視する党員の声を、まず地方議会で受け止めるシステムが確立されている。

 自民党の伊吹文明・元衆院議長は「地方議員は中選挙区、大選挙区で党の公認(や推薦を受けた候補)が10人も15人もいる中、死に物狂いで上がってこないといけないからしっかりしている」と指摘する。

443017 1 政治 2019/02/14 05:00:00 2019/02/14 08:59:22 2019/02/14 08:59:22 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190213-OYT1I50072-T.jpg?type=thumbnail

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