[New門]角栄さん、コレで「列島改造」…議員立法

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 [New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「議員立法」。

脳死移植、虐待防止…党派を超え

 法律には2種類ある。中央省庁を中心とした政府が作る「閣法」と、国会議員がまとめた「議員立法」だ。数は少なくとも、社会には多彩な影響を与える――。議員立法はそんな「小粒でもぴりりと辛い」存在だ。

 「脳死は人の死といえるか」

 そんな重いテーマを突きつけたのが、脳死臓器移植を認める臓器移植法だ。最も知られる議員立法の一つだ。

 1997年、国会での採決では「個人の死生観にかかわる」などとして、ほとんどの党が党議拘束を外した。賛否は国会議員一人ひとりの判断に委ねられたわけだ。

 成立後、臓器移植がテーマの映画やドラマなどが多数生まれた。移植を心待ちにする患者と、臓器提供者(ドナー)の家族らの葛藤は、人々の心を揺さぶり続けている。

 埼玉県桶川市のストーカー殺人事件などをきっかけに、与野党は2000年、ストーカー行為規制法を制定した。

 同年には子供の育児放棄などの問題化を受け、児童虐待防止法も成立した。いずれも議員立法だった。

 被害に苦しむ人、弱い立場の人を救いたいとの思いで与野党が一致すれば、スピード立法が可能であることを示した例といえる。

「政治主導」

 大統領制の米国では、法案提出は上下両院の国会議員しかできない。成立数こそ毎年、数百本にとどまるが、年1万本近い法案が提出される。

 1950年、日本の国会議員団による米議会の視察が、日本の議員立法に影響を与えた。視察後、当時の与党・自由党は議員立法を原則とする方針を決め、同年の通常国会で81本を成立させた。「政治主導」を目指す動きだったとみることもできる。

 議員立法を最大限活用したことで知られるのが田中角栄元首相だ。47年に初当選を果たした田中氏は、閣僚経験もない30歳代の若手議員の立場で、50年代を中心に30本を超える議員立法を生み出した。公共事業予算確保のため道路特定財源を創設した議員立法などで、田中氏が首相就任前に世に問うた「日本列島改造論」の下地を作った。

 金融危機対応に揺れた98年の「金融国会」では、与野党の若手議員ら「政策新人類」が金融再生関連法をまとめた。当時は旧大蔵省汚職で「官」が揺れており、政治のリーダーシップが脚光を浴びた。

社会が多様化 立法の「主役級」にも

 議員立法は2016~19年に計617本が提出されたが、成立は101本どまり。与野党の賛成が見込めないと審議しない慣例が影響している。閣法は同時期に300本提出され、299本が成立した。数で圧倒する閣法は、年金や教育、税など国の根幹を担う。

 だが、議員立法は近年、独自の地位を築きつつある。

 03年、心と体の性が一致せず苦しむ性同一性障害の人の戸籍上の性別変更を認める特例法が成立した。16年にはカジノの合法化を国に促すカジノ解禁法も制定された。昨年6月、ペットショップの犬猫へのマイクロチップ埋め込みを義務化した改正動物愛護法が成立。専用機器で首の皮下のチップを読み取ると、飼い主の連絡先などの登録情報が分かる仕組みで、捨て犬や捨て猫の防止が狙いだ。

 社会の価値観に関わるこうした法律は、議員立法が多い。政府の立場で一律に法的判断を下すことが難しいためだ。LGBT(性的少数者)の権利保護、データ社会のルール作りなど、社会の要請はますます多様化・複雑化していく。変化に柔軟な議員立法が「主役級」の重みを持つ時代がやってくるかもしれない。

[MEMO]「第3次ブーム」年100本超

 議員立法はいま、「第3次ブーム」にある。

 第1次は、戦後間もない頃だ。政府が法案をつくり、形だけ議員が提出する「政府依頼立法」が頻発した。特定の業界や地域の振興を図る「お土産法案」と呼ばれる立法も多かった。

 議員立法の乱用を防ぐ狙いから、1955年の国会法改正で、法案の提出には発議者以外に衆院は20人以上、参院は10人以上の賛成者が必要となった。予算関連法案ならば、衆院50人以上、参院20人以上とハードルが上がる。衆院では、法案への賛成者が規定の人数を超えても、所属会派の承認がないと法案を提出できないという慣例もある。

 第2次ブームは1990年代後半。臓器移植法などが社会的に注目された。

 そして、2016年、参院へ提出された議員立法は124本と参院では初の100本超えを記録した。17年は130本、18年も100本だった。第3次ブームの牽引けんいん役は、16年参院選で議席を伸ばし、党単独で参院に法案提出が可能になった日本維新の会だ。同党は「100本提出」を掲げ、多くの議員立法を提出した。元参院議員の松井孝治慶大教授は「議員立法が政党のアピール合戦に使われている」と分析している。

 政治部 田島大志 2008年から与野党や国会、首相官邸などを担当。主に政局、外交、憲法問題を追いかけている。

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