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自衛隊の前身、警察予備隊の発足から今夏で70年を迎える。今なお国際的には「軍」、国内的には「実力組織」と説明するための矛盾と制約は、議論なき「再軍備」に原点がある。国際情勢の激変や新型コロナウイルスの世界的流行は、この節目の年に「軍」と改めて向き合うよう、国民に迫っているように見える。(編集委員 伊藤俊行)
制限していた「作戦」の言葉を使用、変わる自衛隊
新部隊の名称に、陸上幕僚長を務めた岩田清文・元陸将は「ようやく」と感慨深げだった。
5月18日に航空自衛隊に発足した「宇宙作戦隊」のことだ。心に響いたのは、部隊名に冠された、従来は使用を制限されてきた「作戦」の2文字だった。
無謀な戦争に突入した旧日本軍のイメージから離れるため、自衛隊では「大佐」は「1佐」、「作戦」は「運用」などと言い換えてきた。警察予備隊からして、そうだ。「軍による安全」ではなく、「軍からの安全」の発想が強かった。2016年の退官まで「軍事は悪」の風潮を肌で感じてきた岩田氏は昨年、「中国、日本侵攻のリアル」を出版した。衝撃的な題と裏腹に、強調したのは「特殊な情報、知識、経験に基づく軍の思考は政治家、国民と落差が生じやすい。それを埋めずに軍が政治に介入した歴史もある。国民と政治家が軍事情報に正しく触れることで統制が利く」という点だ。

また、何度も携わった国連平和維持活動(PKO)が「強制力に頼る」方向に変質しており、「今のPKO5原則では部隊を出せなくなる。自衛隊のあり方を再考しないと、安倍首相の言う積極的平和主義も果たせない」と見る。
「自衛隊史論」などを著した中京大学の佐道明広教授は「能力も練度も高い自衛隊が『軍』でないというのは、国民が幸福だったゆえの悲劇」と見る。
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