「足りなくなったマスク」が教えてくれる危機管理…「コロナ後」、経済も含む視点で

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◆…元統合幕僚長 折木良一氏 70…◆

 新型コロナウイルスの世界的流行は我々の生活や経済に甚大な被害を与えた。日本にとって国家的な危機であり、感染症対策は安全保障上の重要課題に浮上した。気がかりなのは各国が対策に忙殺される中、中国が海洋進出などを強めていることだ。東日本大震災で自衛隊の災害派遣を指揮した元統合幕僚長の折木良一さんに国家の危機に直面した時の判断や行動、戦略的対処法、コロナ禍を受けた東アジアの安全保障のあり方を聞いた。(編集委員 吉田清久)

国家的危機の対応、ベターから始めてベストに近づける

「東日本大震災が発生した時は防衛省の一室で陸海空の幕僚長も集まって、会議中でした。ものすごい揺れ。ひょっとすると関東大震災級の大地震ではないかと感じました」(都内のオフィスの中庭で)=青山謙太郎撮影
「東日本大震災が発生した時は防衛省の一室で陸海空の幕僚長も集まって、会議中でした。ものすごい揺れ。ひょっとすると関東大震災級の大地震ではないかと感じました」(都内のオフィスの中庭で)=青山謙太郎撮影

 危機に直面した時、真っ先に把握すべきは、その危機が「どんな特性を持つのか。どれぐらいの範囲に影響を及ぼしているのか」ということです。

 次に、「国家レベルの非常事態になるのか、あるいは一部の地方や業界にとどまるのか」をしっかりと見極めます。それによって、我々の取り組み方が大きく異なってくるからです。

 国家レベルの危機だと判断したら、今度は「何をやるか」の優先順位を決めます。その場合の一番の「物差し」は国民の命です。

 私が携わった東日本大震災では、最初に大地震と津波災害、その後に福島第一原発の事故が襲ってきました。地震発生後、直ちに状況を把握し、自衛隊として取るべき対応や手段、「戦力配分」(部隊や装備の配置)を判断しました。もちろん、事態は刻々と変わります。想定外のことも次々と起きたため、絶えず自衛隊の対応や配置を修正しました。

 福島第一原発事故の場合、敵は放射能で、姿が見えません。最初はいったい何が起きているのかもよくわかりませんでした。警察・消防当局とも連携し、状況を見定めながら、まずはベターな手段を取るよう心掛けました。そして、ベターから限りなくベストに近づけていきました。

 新型コロナの場合も「見えない敵」が相手ですから、ベターからベストに近づけていく手法が参考になると思います。発生から時間がたち、「3密対策」「医療体制の拡充」など、対応の基本は明らかになっています。

 いま大切なのは、今回の対応を教訓とし、情報を広く共有することです。自衛隊は「日々の訓練」という形で情報を分かち合い、その積み重ねをノウハウとして蓄積しています。

「ダイヤモンド・プリンセス」の船内に派遣された自衛隊員(防衛省提供=2020年2月16日撮影)
「ダイヤモンド・プリンセス」の船内に派遣された自衛隊員(防衛省提供=2020年2月16日撮影)

 自衛隊は、新型コロナ感染者が多く発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に派遣され、検査、消毒などを実施しました。出動した約2700人(延べ人数)の隊員に一人も感染者が出ませんでした。感染防護基準の順守の徹底など、日々の訓練、培ったノウハウに基づき行動した結果にほかなりません。

 医療面でも、自衛隊は国内外の災害派遣の教訓を生かし、普段から様々なシミュレーション(模擬訓練)を行っています。

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1443778 0 政治 2020/08/31 09:00:00 2020/08/31 09:00:00 2020/08/31 09:00:00 元統合幕僚長の折木良一氏。東京都千代田区で。2020年7月17日撮影。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200824-OYT1I50029-T.jpg?type=thumbnail

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