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GZERO(Gゼロ)サミット コロナ きしむ世界

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 米政治学者のイアン・ブレマー氏らが共同議長を務める「GZERO(Gゼロ)サミット」(ユーラシア・グループ主催、読売新聞社など後援)が9~11日の3日間、開催された。新型コロナウイルスの感染拡大で、予定していた東京での開催を見送り、オンライン形式となる中、ポストコロナの国際情勢や米中の「テクノロジー冷戦」の行方などについて、世界の専門家と日本の政治家たちが熱心に議論した。

国際協調へ 日本に期待…基調講演 イアン・ブレマー氏 米政治学者

 新型コロナウイルスは、国内及び国際的な機関に対する人々の信頼の喪失を加速させた。コロナのために、私たちは団結するのではなく、更に分裂している。

 政府のリーダーを非難することは簡単だ。しかし、スケープゴートを探していると全体像を見失う。問題はGゼロだ。グローバルな問題に対処するために、集団的なグローバルな対応が必要であるにもかかわらず、それがないということだ。

 世界には、米国と中国という二つの勃興ぼっこうするテクノロジー超大国が存在する。これをT―2と呼ぶ。地政学的には、北京はまだワシントンには匹敵しないが、人工知能の研究及びデジタル経済、世界的インフラなどにおいては、米国と中国の間で差がなくなりつつある。5Gインフラをめぐる争いは、このライバル関係の中心であり続ける。新しいテクノロジーは、住んでいる場所、家、車、体までも監視し、データは保存される。社会全体にわたるパワーバランスの根本的な変化だ。中国では、そのパワーの多くが、直接的にも間接的にも国家に帰属する。米国では、それはまだ分からない。今のところ、T―2競争では中国が「勝っている」。

 バイデン氏が大統領である間、GゼロとT―2は共存するだろう。しかし、経済力をめぐるグローバルな競争は、一層ゼロサムになる。世界経済のデジタル化は、国家安全保障を通常戦力及び核戦力から、サイバー・情報戦争能力へと再定義している。全ての勢力に、既存の同盟の価値を再考させることになる。

 Gゼロから抜け出す道を見いだそうとするのであれば、米国の関与再開をはるかに超えたものが必要になる。新しい国際的なアーキテクチャー(枠組み)を生み出し、全ての主要民主主義国の間の妥協、協力、調整を必要とする。世界で最も健全な先進的な産業国、日本のリーダーシップを大いに必要としている。

 どのような国も単独では今日の世界が直面している課題に対処することはできない。私たち全てが役割を果たす必要がある。全く異なる価値観をもった様々な政治制度のリーダーたちが協力する方法を見いださなければならない。

ワクチン 米中火種に…パネル討論

 イアン・ブレマー氏 新型コロナウイルスは、世界各地で構造的な不平等を拡大させ、米中対立も激化させた。米国社会の分断は深刻化している。一方で中国はコロナを克服し、経済も伸びているが、コロナ対応が原因で世界から不信感を持たれている。ドイツと日本は、いずれも国内で反体制世論の高まりは大きくなく、多国間主義や法の支配を支持する国だ。ただ、両国とも、メルケル首相、安倍(前)首相という強力なリーダーが代わる政治の移行期に差し掛かり、国際秩序に影響を与えるには時間がかかると予想する。

オンラインで行われたGゼロサミット(写真は一部を除き同サミットのウェブサイトから)
オンラインで行われたGゼロサミット(写真は一部を除き同サミットのウェブサイトから)

 河野行政・規制改革相 2021年は米国が再び、民主主義国家をまとめ、国際秩序や規範を守るためリーダーシップを発揮するかどうか、注意深く見る必要がある。菅内閣は、50年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すと宣言した。産業政策の劇的な変化だ。日米両国が新しい政権の下、強い同盟関係を維持する必要がある。

河野行政・規制改革相
河野行政・規制改革相

 ケビン・ラッド元豪首相 英国や米国はワクチン接種に関して自国民を優先するが、中国は世界各地でワクチンを配布し、ワクチン外交を展開している。アジア太平洋地域の今後は、米国がリーダーシップを取り戻すかどうかにかかっている。

 ブレマー氏 バイデン前副大統領は、米国の最悪の危機のさなかに大統領に就任する。21年、バイデン政権にとって最も重要な課題はコロナ対策だ。ワクチン開発が進み、来夏頃に事態が好転しているかもしれないが、もし、うまくいかなければ、バイデン政権の支持率が激減する可能性もある。

 注目すべきは、ワクチン接種や気候変動対策だ。米国ではまず約2億5000万人の国民にワクチンを接種する必要があるが、隔離や監視により感染拡大防止に成功している中国は、早めに(途上国などに)ワクチン輸出をできる。また、中国は原子力発電や風力発電に力を入れ、将来のエネルギー分野を支配しようと考えている。バイデン政権はこれを許さない。ワクチンや気候変動対策で米中が衝突する可能性もある。

 河野氏 中国が自由な国際秩序に挑戦していることは、脅威だ。中国は香港における「一国二制度」を破壊し、台湾の民主主義も脅かしている。国際社会は、中国がルールを破るなら、高い代償を中国に払わせなければならない。「自由で開かれたインド太平洋」を推進する上では、日米同盟に加え、インドと豪州を加えた4か国の連携も必要となる。(米国と英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5か国が軍事機密を共有する)「ファイブ・アイズ」を(日本を加えた)「シックス・アイズ」にすることも真剣に検討すべきだ。

 中国は、国連機関の事務局長などのトップに、多数の候補者を立て始めている。国際機関でガバナンスを刷新し、立て直す必要がある。

対中技術競争 連携が必要

梶山経済産業相
梶山経済産業相

 梶山経済産業相 疫病の恐怖におびえ、分断が進む世界では自国優先主義が横行し、米中対立の深刻化など、国際協調にかつてない強い遠心力が働いている。コロナの影響が比較的軽微で、欧米に比べて社会の連帯が強固な日本が、今こそ世界のあるべき道筋を照らす存在になるべきだ。

 〈1〉環太平洋経済連携協定(TPP)の拡大などを通じた自由で公正な経済空間の再構成〈2〉データの自由流通に関する国際ルール作り〈3〉2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)の実現など環境政策――の三つの分野で、日本は世界を主導していく。

 ブレマー氏 グローバル化が進んだ世界で中国が技術超大国になった。米中両国は多くの面で相互に依存しているが、データや5Gなどを巡る争い「テクノロジー冷戦」は拡大している。来年発足するバイデン新政権は、米IT企業や、中国に懸念を抱く米国の同盟国とより緊密に連携を取る必要がある。

 グーグル元会長のエリック・シュミット氏 米国が超大国の時代から、米中両国が「安定した緊張関係」を保つ時代に変化してきた。ただ、「冷戦」ではなく、あくまで競争関係だ。通信機器大手「華為技術」(ファーウェイ)や動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」などの中国企業の台頭に対抗するため、米国や日本、インド、韓国など西側諸国が、より良いものを生み出す必要がある。

     ◇

飯塚恵子 読売新聞編集委員
飯塚恵子 読売新聞編集委員

 飯塚恵子・読売新聞編集委員 米中対立の間で、日本がどう行動するかに注目している。トヨタ自動車など日本のリーディングカンパニーが中国企業と先端技術を一緒に開発する動きがある。どのように中国と技術革新を共有するか、日本が世界にモデルを示せる可能性もある。(パネルディスカッション後のラウンドテーブルに参加)

途上国も公平に

 米免疫学者のラリー・ブリリアント氏 現在、世界各地で「第2波」「第3波」の感染拡大が起こっている。今後数か月から半年程度は痛みを伴う厳しい時期が続くかもしれないが、世界では約150種類のワクチンが開発中だ。来年夏頃の収束を期待したい。

 ビル&メリンダ・ゲイツ財団のガーギー・ゴッシュ氏 途上国や低所得国はワクチンの確保が容易ではない。国際的なワクチン提供の枠組みに各国が協力することが必要だ。

西村経済再生相
西村経済再生相

 西村経済再生相 日本は4月7日から約1か月半、緊急事態宣言を発令し、外出自粛や休業要請を行った。7月に感染が再拡大したが、リスクの高い地域や業種に限定して検査や休業要請を行った。マスク着用や「3密」回避に加え、スーパーコンピューター「富岳」などで様々なデータを分析し、感染拡大防止と経済活動再開の両立を試みている。

多国間主義を重視 菅首相あいさつ

 ウィズコロナ、ポストコロナ時代の国際情勢は、コロナの対応の中で高まった自国中心主義や米中対立などとも相まって、これまで以上に予見しにくく、また、制御しにくいものとなっていく可能性がある。

 そういう状況だからこそ、日本外交・安全保障の基軸たる日米同盟を一層強化していく。同時に、日本は、基本的価値を共有する国々と連携しながら、「自由で開かれたインド太平洋」を戦略的に推進するとともに、中国をはじめとした近隣諸国との安定的な関係を構築していく考えだ。

 そして、新型コロナが人類に未曽有の挑戦を突きつける中、我々は、この危機によって「分断された世界」ではなく、危機を乗り越えるべく「団結した世界」を実現していく必要がある。そのためにも、我が国は、多国間主義を重視し、国際社会が団結・協力して進める取り組みをリードしていく決意だ。

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1715322 0 政治 2020/12/21 05:00:00 2020/12/21 05:00:00 2020/12/21 05:00:00 Gゼロ・サミット開幕に先立ち、オンラインで基調講演を行うイアン・ブレマー氏 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201220-OYT1I50048-T.jpg?type=thumbnail

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