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防衛省は新年度から、高速・大容量通信規格「5G」の導入に向けた実証実験に乗り出す。自衛隊の基地に5G網を張り巡らし、様々な機器をネットワーク化する「スマート基地」構想と呼ばれるもので、将来の防衛装備品への導入や前線部隊での活用につなげたい考えだ。

実証実験は、北海道千歳市の航空自衛隊千歳基地で2年間行う。5Gは携帯電話事業者による全国向けの通信システムがあるが、今回の実証実験はこれとは別に、自衛隊が基地局を整備して、限られた区域で運用する「ローカル5G」を採用する。
5Gは大容量の高速通信を多くの機器で同時に行えるのが強みで、小型無人機(ドローン)や無人車両につないで、基地の警備に充てることが可能になる。装備品の稼働状況や燃料・補給品に関するデータを即時に分析し、より効率的な運用につなげることもできるという。
有効性が確認できれば、他の自衛隊基地に広げるほか、将来は災害対応などで派遣された部隊が現地でローカル5G網を設置して情報をやりとりすることも想定している。防衛省幹部は「省人化・無人化が進めば、慢性的な人手不足の解消につながる」と期待を寄せる。
一方で、各基地では部隊間の指揮連絡や航空通信などで様々な無線を利用している。実証実験では、5Gが他の無線に影響を与えないかどうか確認する作業を行う。情報漏えい対策も重要な課題だ。関連費用として防衛省は新年度予算案に4億円を計上した。
将来の戦闘では、5G網での部隊運用が必須とされ、米国防総省は昨年5月、5Gを積極活用する戦略を取りまとめた。中国も積極的な利用を目指すなど各国が実戦配備を急いでいる。これに対して日本は対応の遅れが指摘されており、防衛省は実証実験を通じて5Gの環境を早期に整え、出遅れを挽回したい考えだ。