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伝統的スタイル
菅首相は就任時、日米同盟を基軸にしながら、インド太平洋地域を重視していくという安倍内閣の外交路線を踏襲すると表明した。

バイデン米大統領との初の電話会談で、日米安全保障条約5条の沖縄県・尖閣諸島への適用を確認し、米国から「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現を目指すと基本的姿勢の表明もあった。順調な滑り出しだ。
4月には対面の首脳会談も行われる。日米はうまくそりが合い、連携が進みつつあるように見える。
バイデン氏はトランプ前米大統領ほど、自らの意見を常に打ち出すスタイルではない。日米両政府が事務レベルで積み上げ、こなした上で首脳レベルで合意するという、伝統的な外交スタイルでやっていくのが自然ではないか。
安倍内閣の時は、国家安全保障会議(NSC)が設置され、安倍晋三首相自らが外交で前面に出る機会が多かった。全く同じことを菅首相がやる必要はない。安倍氏と首相の外交には、個人的なスタイルの違いが当然ある。首相が最もなじむやり方でやればいい。
インド太平洋地域では、中国の台頭に伴う脅威が先鋭化している。中国は力による現状変更、既成事実化を目指している。同盟は平時もそうだが、大きな困難に直面した時に真価を問われる。「対中国」を考えれば、日米同盟の拡大と深化が重要だ。
拡大とは、地域的な協力の拡大で、日本、米国、オーストラリア、インドの4か国の枠組み「Quad」(クアッド)などが挙げられる。深化とは、日本の防衛能力の問題だ。現在の日米共同演習や、米軍と自衛隊の統合運用のあり方などが十分であるか検証するべきだ。
「怒る時は怒る」
日本が世界において、今よりも大きな役割を果たすためには、努力や犠牲を払う必要も出てくる。武力は誰も使いたくないが、武力に対する概念をもう少し国際水準に従って考える必要はあるだろう。無制限にやるべきだというのではなく、日本にふさわしい防衛の形を作るということだ。