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米が「台湾有事」に警鐘、対中「最前線」で攻防続く[返還合意50年 沖縄の今]<2>

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 「台湾の情勢は、日本の安全保障に直結しています」

 ロイド・オースティン米国防長官は3月16日、防衛省内で行われた岸信夫防衛相との会談で、覚悟を促すように念を押した。

 米バイデン政権は、中国の台湾侵攻は近い将来に起こりうる現実の脅威だとして、危機感を強めている。

 沖縄本島から台湾までは約580キロ・メートル。日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)からは約110キロ・メートルしかなく、台湾の山並みが望める日もある。

 オースティンの発言は、ひとたび台湾有事が発生すれば、沖縄を始めとした日本の安全に大きな影響が出るとの警鐘を鳴らしたものだ。初対面では異例の踏み込んだ発言で、終了後の記者会見などでは紹介されなかった。

 沖縄県の本土復帰後も、米軍は一貫して沖縄への部隊駐留を重視してきた。日本の防衛に加え、朝鮮半島や台湾海峡での有事に即応するために、沖縄は地理的な優位性があるためだ。

 中国が軍事力を背景に海洋進出を強めるにつれ、沖縄の戦略的な重要性はさらに高まっている。

 中国はA2ADと呼ばれる戦略で、米軍の西太平洋からの排除を目指している。日米防衛当局は、台湾有事などで米中が衝突する事態になれば、中国は艦隊を太平洋に展開すると想定している。

 沖縄は、中国が米軍の進入を阻止する防衛ラインである「第1列島線」上にある。中国から見れば、沖縄本島などの南西諸島は、艦隊の太平洋進出を抑える「ふた」のような存在だ。

 第1列島線を巡る攻防は、既に始まっている。

 4月4日、一面に雲が広がる天候の中、中国の山東省青島を母港とする空母「遼寧」やミサイル駆逐艦が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を通過し、東シナ海から太平洋上へ展開した。遼寧はその後、日本の最南端・沖ノ鳥島の西方海域へ進み、公海上で艦載機の発着艦訓練を繰り返した。

 遼寧の行動は、海上自衛隊と米海軍がつぶさに把握していた。海自の護衛艦と米ミサイル駆逐艦マスティンが、わずか数千メートルの距離で遼寧を挟んで並走し、監視していたのだ。

 中国海軍の創設72周年を迎えた4月23日、中国共産党機関紙傘下の環球時報(電子版)はマスティンの動きに関し、「遼寧も米艦を監視し、米艦が訓練の標的になっていた可能性もある」との軍事専門家の見方を挑発的に伝えた。

 防衛省は、遼寧が見せた今回の一連の動きは、太平洋に進出する航行ルートを多数確保するための訓練の一環だと分析している。

 日本政府も、台湾有事が日本防衛と切り離せないのは、十分に承知している。岸は4月17日午後、航空自衛隊のU4多用途支援機で与那国島に降り立った。

 岸は、島の西端にある展望台から台湾方向を眺めた後、近くにある陸上自衛隊与那国駐屯地を訪問した。約50人の与那国沿岸監視隊員らを前に、「諸君は国境防衛の最前線で我が国の防衛に重要な役割を果たしている。我が国の平和と安定は、自らの双肩にかかっていると強く自覚してほしい」と激励した。

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2129970 0 政治 2021/06/17 05:00:00 2021/06/17 05:00:00 2021/06/17 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210617-OYT1I50018-T.jpg?type=thumbnail

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