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海兵隊訓練 中国けん制…基地負担配慮 地元と交流[返還合意50年 沖縄の今]<5>

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 「島の住民や土地所有者に不安と困難をもたらし、おわび申し上げたい」

 在沖縄米海兵隊の政務外交部長で大佐のニール・オーウェンズは9日、沖縄県北中城村のキャンプ瑞慶覧(フォスター)で、抗議に訪れた県知事公室長の金城賢に陳謝した。うるま市の津堅島で2日深夜、普天間飛行場(宜野湾市)所属の海兵隊ヘリコプター「UH―1」が畑に不時着し、県民から不安の声が上がった。

 事故防止や騒音の低減を求める金城に、オーウェンズは「しっかり対応したい」と述べた上で、「高度な即応体制を維持するために訓練は必要だ。これにより、米国の日本防衛義務が果たされる」と説明した。

 防衛省の調査では、普天間飛行場での離着陸回数は2017年度は1万3581回だったのに対し、昨年度は1万8970回まで増加した。飛行場に近い宜野湾市大謝名での測定で基準を超えた騒音の確認件数も、17年度の7376回から20年度には9600回に増えた。

 最近の騒音状況の悪化は、激しい訓練の裏返しでもある。沖縄の基地所属の自衛隊幹部は「軍事的圧力を強める中国に対し、米軍が訓練を強化してけん制している」と分析する。

 海兵隊は組織改編や戦略見直しも進めており、昨年3月に公表した「2030年の戦力設計」で、即応性の高い「海兵沿岸連隊」を創設する方針を打ち出した。

 ワシントンの海兵隊司令部は取材に対し、バーガー総司令官が同連隊を沖縄、グアム、ハワイに配備し、27年までに運用開始することを目指していると明らかにした。

 さらに、海兵隊は近年、 島嶼とうしょ 部に迅速に展開し、対艦・対空ミサイルの拠点などを築く「遠征前方基地作戦」の訓練も始めた。有事に、南西諸島も含めた西太平洋での優位性を確保するためだ。

 今や、沖縄の米軍の存在は日本の防衛やインド太平洋地域の安定に、欠かせない存在となっている。

 しかし、かつては激しい戦闘を繰り広げた相手でもある。沖縄は23日、沖縄戦終結から76年の「慰霊の日」を迎える。この日は毎年、県全体が祈りに包まれる。

 現在も、米軍関係の事故や犯罪という負の側面がつきまとう。県警によると、昨年の米軍人などの犯罪の検挙件数は39件。県全体の犯罪検挙件数に占める割合は1・1%だが、過去、凶悪な犯罪が起きる度に、県民の反米感情が悪化した。

 米軍は安定した駐留を続けるためにも事故防止や綱紀粛正を図るとともに、住民との交流で相互理解を深めようとしている。

 6月3日の朝、名護市豊原の集落と国道329号を結ぶ市道に、Tシャツ、短パン姿の若者7人が現れた。近くのキャンプ・シュワブ所属の海兵隊員だ。

 「足を引いて、根っこから刈るんだ」「オーケー」

 気温30度を超す日差しの下、隊員たちは慣れない手つきで鎌を振るい、歩道脇の土手に生い茂った雑草を片っ端から刈り取った。

 シュワブは豊原や隣接する辺野古の一帯にあり、普天間飛行場の代替施設が建設されている。辺野古移設には革新勢力の反対が強く、大きな政治問題となっている。それでも、シュワブと地元との関係は良好だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大で共同作業を控えるようになる前は、草刈りは海兵隊と住民が一緒に汗を流した。隊員による英会話教室も人気だ。辺野古地区では、手こぎ船が海上を駆ける沖縄の伝統行事「ハーリー」や地区の運動会などにも海兵隊が毎年参加してきた。

 「シュワブ」や「フォスター」など、沖縄の海兵隊基地の多くは、沖縄戦で戦死した海兵隊員の名を冠している。悲劇の記憶が消えることはないものの、県民と米軍は、互いに新しい関係を模索してきた。

 在沖縄米軍トップの四軍調整官で海兵隊中将のハーマン・クラーディーは、沖縄への思いをこう語る。

 「我々は、基地があることで周辺に与える負担をできるだけ減らしたい。沖縄の人々の良き隣人でありたい」(敬称略)

  ◆慰霊の日= 1945年の沖縄戦で旧日本軍司令官の牛島満中将らが自決し、組織的戦闘が終結したとされる日。現在、県は条例で6月23日を慰霊の日と定め、最後の激戦地となった糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園で毎年、「沖縄全戦没者追悼式」を開いている。

グアム・ハワイへ9000人移転予定

 米国は日米安全保障条約に基づき、日本防衛とアジアの安定、ひいては米国の安全保障のために軍を日本に駐留させている。在日米軍の兵力は約5万5000人で、このうちどれだけ沖縄に駐留しているかは明らかにされていない。

 在沖縄米軍は陸海空軍と海兵隊で構成され、ひときわ存在感が大きいのは海兵隊だ。日米両政府は2012年、沖縄の海兵隊のうちグアムやハワイなどに計約9000人を移転し、沖縄に残す兵力を1万人規模とする計画を公表した。当初は移転時期は「14年まで」とされていたが、13年の合意では、移転は「20年代前半に開始」とされた。

 米軍は抑止力を強化するため、沖縄やグアムなど複数の基地に分散した兵力を柔軟に活用する方針で、沖縄の海兵隊の重要性は増す。

 米軍人らの犯罪の扱いは日米地位協定が定める。軍人らに対する裁判権は米側が優先するとの規定などには県民の批判を招いてきた。このため、日米両政府は凶悪犯罪容疑者の起訴前の身柄引き渡しを可能にするなど、運用改善を図ってきた。

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2147669 1 政治 2021/06/23 05:00:00 2021/06/23 05:00:00 2021/06/23 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210623-OYT1I50003-T.jpg?type=thumbnail

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