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[スキャナー]宣言下五輪 綱渡り…きょう開幕 感染拡大なら政権打撃

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 きょう開幕の東京五輪は新型コロナウイルスの感染拡大に 翻弄ほんろう され、史上初となる1年延期後、大半の競技が無観客での開催となる異例の経過をたどった。開幕直前には開会式の楽曲制作者と演出担当者が相次いで辞任・解任という事態になり、苦難のスタートとなった。(政治部 藤原健作、栗山紘尚)

狂った目算

 「組織委員会は重く受け止めていると思う。これから準備すべき点は準備し、しっかりやってほしい」

 菅首相は22日、首相公邸前で記者団にこう語り、開幕直前になってもトラブルが相次ぐ大会組織委員会への不満をにじませた。

 過去の差別的な言動を理由とした演出担当者の解任劇は、新型コロナ禍での開催という難題を抱える大会に、追い打ちをかける形になった。

 新型コロナの感染拡大が続く状況下で、首相が五輪成功への切り札だと考えていたのが、ワクチンだ。

 今年1月、東京などに2度目の緊急事態宣言を発令した後も、「ワクチンさえ打てば夏には雰囲気はガラリと変わる」と周囲に繰り返し語り、接種進展による感染状況の劇的な改善に期待をかけていた。

 しかし、ワクチン接種の開始が遅れたことや変異ウイルスの出現で感染は収まらず、首相の目算は狂った。

規模縮小重ね

 政府が「完全な形」での開催を掲げていたのと裏腹に、3月には海外客受け入れ断念、6月には国内観客数「上限1万人」の設定へと、少しずつ観客の規模縮小を重ねざるを得なかった。東京都への4度目の緊急事態宣言発令が決まった今月8日には、大半の競技会場での無観客に追い込まれた。

 その結果、有観客で行われている他のスポーツイベントと、無観客の五輪は、対照的な姿となっている。政府の基準では、緊急事態宣言下でも5000人までの観客は認められているからだ。

 組織委の幹部は、来日した国際オリンピック委員会(IOC)理事から「サッカーの強化試合などで客を入れているのに五輪本番はなぜ無観客なのか」と尋ねられ、答えに窮した。幹部は「『五輪には国民の理解が必要だから仕方がない』と話したが、納得してもらえなかった」と振り返る。

首相は強気

 首相の強気で楽観的な姿勢は変わっていない。20日の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューでは「競技が始まり、国民がテレビで観戦すれば考えも変わる」と語った。五輪で国内の 閉塞へいそく 感が解消されれば、次期衆院選に向けて政権に弾みを付けられるとの戦略を描いている。

 ただ、五輪の運営は綱渡りで、成功裏に終わるかどうかは見通せない。

 選手は入国前から厳重に健康管理し、定期的に検査するルールだが、既に、複数の選手がコロナ陽性を理由に出場辞退を決めている。選手間での感染が拡大すれば、試合の不成立が相次ぐことも予想される。組織委内では「世界から大会運営は失敗したとの 烙印らくいん を押されかねない」との懸念が強まっている。

 数万人規模となる選手や関係者の活動範囲を区切り、外部との接触を遮断する「バブル方式」も、既に限界が露呈している。政府内で「最悪のシナリオ」とされているのが、五輪の関係者から外部の一般の国民に感染が広がり、首都圏などの医療が切迫する事態だ。

 国内の感染者数は、五輪終盤の8月初旬にピークに達するとの分析もある。

 新型コロナの担当閣僚の一人は「五輪のために医療体制が揺らぐことになれば、政権は立っていられなくなる」と危機感をあらわにした。

招致決定後 苦難の連続…エンブレム盗用疑惑、森氏辞任

 2013年9月、日本は五輪の招致レースでトルコやスペインを破って東京開催を勝ち取り、国内は祝賀ムードに包まれた。当時の安倍首相は「震災からの復興を成し遂げた日本の姿を世界中に発信する」と宣言し、「復興五輪」を掲げた。

 招致決定後は、大会の準備・運営を巡るトラブルの連続だった。コスト膨張を理由とした新国立競技場のデザイン見直しや大会エンブレムの盗用疑惑、組織委員会の森喜朗会長の辞任など、組織委の幹部やスタッフの言動が世論の批判を浴びることもしばしばだった。

 特に、20年に入って新型コロナウイルスの流行が始まると、事態は一変した。安倍氏は同年3月、「安全・安心な大会」の実現のためとして、トーマス・バッハIOC会長との電話会談で、五輪の史上初の1年延期で合意。同年8月、首相退任を表明した記者会見では、「当然、私の次のリーダーもその考え方のもとに目指していく」と強調した。

 政権を継いだ菅首相にとって、五輪推進は、自ら屋台骨として支えた安倍前政権の政治遺産(レガシー)を守る意味合いもある。

 だが、アスリートたちが競い合う非政治的な「祭典」であるはずの五輪は、感染拡大が続く中での開催が妥当かどうかという政治問題となり、国民への説明が最重要課題になった。

 世論では五輪開催への反対論も根強く、自民党の閣僚経験者は「首相も『安全・安心』を繰り返すばかりで、開催の意義を丁寧に説明してこなかった」と振り返る。

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2228157 1 政治 2021/07/23 05:00:00 2021/07/23 05:13:02 2021/07/23 05:13:02 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210722-OYT1I50145-T.jpg?type=thumbnail

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