[沖縄復帰50年]<4>方言と帰属意識 島言葉 受け継ぐ誇り 「使うな」差別の時代も

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 「ゆたさるぐとぅ うにげーさびら(よろしくお願いします)」

沖縄、平和つなぐ…本土復帰50年「慰霊の日」

 今月9日、沖縄県八重瀬町の小学校の教室に子どもの元気な声が響き渡った。琉球方言の島言葉(しまくとぅば)を学ぶクラブ活動だ。講師を務めたのは、NPO法人「県沖縄語普及協議会」が派遣した小渡錫●幸さん(61)。半袖姿の児童十数人は、沖縄独特のじゃんけん「ぶーさーしー」を紹介する小渡さんの話に聞き入った。(●は金へんに湯のつくり)

 琉球王国の歴史を持つ沖縄は、民謡や舞踊など豊かな伝統文化を持つ。その文化の「根っこ」とも言える島言葉の継承を目指す動きが沖縄で広がっている。

 同協議会では、島言葉を「会話の道具」ではなく、帰属意識などの意味を持つ「アイデンティティー」の源ととらえる。会長代行を務める国吉朝政さん(82)は「話せる人がどんどんいなくなっている。ウチナーンチュ(沖縄の人)としては、島言葉を第2国語として学校教育に導入してほしい」と訴える。

 県は2006年、9月18日を「しまくとぅばの日」に制定。17年には普及センターを設け、読本作成や人材養成を進めるが、21年の県民調査では、島言葉を話せる人はあいさつ程度を含めて43・2%と、13年の調査開始以来最低だった。一方で84・8%が「親しみを持っている」と回答した。

 方言を後世に残そうとする動きは全国でみられるが、沖縄には特殊な歴史的背景がある。

 センターには年配者から「自分らは『使うな』と言われたのに、今度は『使え』というのか」と戸惑いの声も届く。かつて差別の要因となり、なくすべき対象とされた時代があったためだ。

 戦前、県主導で徹底した「方言撲滅運動」が展開され、学校で方言を話した児童は罰として首から「方言札」を下げさせられた。太平洋戦争末期の沖縄戦では、日本軍が、方言で話せばスパイと見なすと通達。スパイ視された住民が殺害される悲劇も起きた。

 米軍統治下になり、島言葉は抑圧から解放された。米軍は当初、統治を円滑に進めるため、日本から離反させる離日政策を取り、琉球のアイデンティティーを意識させるのが得策と判断したためだ。米軍内には、公用語を英語にすべきだとの議論さえあった。こうした動きに教育界は反発。標準語教育を貫き、本土との同質性を重視する方向に傾いた。

 それでも復帰前、沖縄の人は「異国人」のようにみなされた時代もあった。

 復帰前の1969年、金城京一さん(73)は沖縄から横浜市鶴見区に移り住んだ。沖縄出身者が集まる通称「沖縄タウン」だ。職場で同僚から「日本語が上手ですね」と声をかけられ驚いた。悪意は感じなかったが、「英語を話していると思った」と言われた。

 言葉の壁は意識しないが、「標準語を話していると思っても、なまりは抜けない」と笑う。今は鶴見沖縄県人会の会長として、舞踊や三線といった沖縄の伝統芸能に触れる場の提供に注力する。参加者の3分の2は沖縄出身でない地元の人で、沖縄文化への関心の高さが誇らしい。

 「ヤマトンチュ(本土の人)になりたくて、なり切れない心」。78年から沖縄県知事を3期務めた西銘順治氏が複雑な沖縄の心を語った言葉だ。息子の西銘沖縄相は「人生の大半で差別された感覚があったのだろう。今はそんな意識はない」と淡々と話す。

 復帰から半世紀。島言葉を含む沖縄文化は、明るく、プラスに受け止める人が大半だが、アイデンティティーの問題はひとたび政治性を帯びると激しい論争を呼び起こす。

 革新と保守の一部を糾合した「オール沖縄」を主導し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画で、政府と対立した翁長雄志前知事は、島言葉の復興に力を注ぎ、演説でも多用した。支持基盤を広げるために「イデオロギーよりアイデンティティー」と唱え、基地問題の根源に差別があると主張した。たもとをわかった自民党県連から「ことさらに違いを際立たせ、分断をあおった」との批判を浴びた。

 高良倉吉・琉球大名誉教授(74)(琉球史)は、アイデンティティーに関して「狭い(沖縄)ナショナリズムに走らないことが一番大事だ」と指摘し、沖縄らしさをこう語る。「受け入れながら、かわしながら自分たちを保っていく。排他的でなく異文化を包み込む。米国統治時代もしなやかに対処し、圧倒的な米国に潰されなかった」

沖縄復帰50年、特集と最新ニュース
沖縄復帰50年
スクラップは会員限定です

使い方
「政治」の最新記事一覧
3005218 0 政治 2022/05/17 05:00:00 2022/05/17 05:00:00 2022/05/17 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/05/20220516-OYT1I50150-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)