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日米両政府が23日の岸田首相とバイデン大統領の会談後に発表する共同声明で、中国に対し、保有する核戦力の透明性を高め、核軍縮を進めるよう呼びかける方向で調整していることがわかった。被爆地・広島出身の岸田首相がライフワークに掲げる「核兵器のない世界」に向けた協力も明記する方針だ。

中国は保有する核弾頭数を公表していないが、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は昨年、米露両国に次ぐ350発を保有しているとの推計を発表した。2030年には少なくとも1000発を持つ可能性があるという。

米露には、26年を期限とする核軍縮の枠組み「新戦略兵器削減条約」(新START)があるのに対し、米中に協議の場がなく、「中国による核開発は野放しになっている」(外務省幹部)との指摘が出ていた。
日米両政府は世界的な核軍縮の進展に向け、中国を巻き込むことが不可欠との認識を共有している。日米首脳による共同声明に中国の核軍縮が明記されれば、異例だ。
16年に広島を訪問したオバマ大統領の下で副大統領を務め、核軍縮を持論とするバイデン氏は「核兵器のない世界」に理解を示している。首相と1月にテレビ会談した際には核廃絶に向けて共に取り組むことで一致した。日米両政府は、ロシアによるウクライナ侵攻で核兵器の使用が現実味を増す中、「核兵器のない世界」を訴える必要性は高まっているとみている。
両首脳は今回の会談で、8月に米ニューヨークで開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議の成功に向けて協力することも確認する方向だ。
覇権主義的な動きを強める中国や、弾道ミサイルの発射実験を重ねる北朝鮮など、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。日米は、将来的には核廃絶を目指しつつも、当面は米軍の核兵力は必要だとして、共同声明に米軍による核兵力を含む拡大抑止の日本への提供の保証を盛り込む見通しだ。