疫病の教訓をどう生かす…論説委員 川嶋 三恵子

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 時は天平、奈良の都。澤田瞳子さんの『火定』は、天然痘が猛威をふるう中、病院にあたる施薬院職員や医師が奔走する物語だ。

 疫病の収束へ光明は見えたが、まだ先行きはわからない。主人公が胸の内を語る。「たとえどんな病が都を襲ったとしても、自分たちは再びもがき、苦しみながら、それに立ち向かうだろう」。2年に及ぶコロナ禍を経験した現代にも、突き刺さる言葉だ。

 直木賞作家の筆力と比べては元も子もないが、政府のコロナ対応を検証した有識者会議の報告書は、やはり物足りなかった。

 前半はよかった。日本の病院は約8割が民間で、医師や看護師が分散している。感染症への想定が甘く、病床を確保する訓練ができていない。ワクチンや薬を開発できる企業を育成しておらず、研究体制も整っていない――。

 いずれも日本の医療について、長く指摘されてきた構造的な課題だ。コロナ禍によって、その弊害が、より鮮明かつ深刻に意識されるようになったのだろう。

 報告書は、解決策として「司令塔組織の整備」を求めた。岸田首相が「内閣感染症危機管理庁」の創設を提唱したためだろうが、取って付けた感は否めない。

 コロナ禍を踏まえ、取り組むべきは、医療が抱える積年の課題の解決ではないか。役所の再編も構わないが、やるべき改革がなおざりになっては困る。もがき苦しみながらも、本筋の改革に立ち向かう政治であってもらいたい。

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