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住宅の未来2020シンポジウム 2017年2月15日(水)東京ビッグサイト 会議棟6階

2017年3月31日

「未来貢献プロジェクト・住宅の未来2020シンポジウム」(主催・読売新聞社、協力・資源エネルギー庁)が2月15日、東京・有明の東京ビッグサイトで開かれ、家庭の省エネルギー化のカギを握る「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」(ZEH)について、普及拡大の施策を議論した。ZEHは太陽光発電など創出エネルギーと省エネの組み合わせで家庭のエネルギー消費を実質ゼロにする。国は2020年までに新たな注文戸建て住宅の過半数のZEH化を目指し、健康や生活面のメリットなど多様な価値も紹介された。

主催:
読売新聞社
協力:
資源エネルギー庁

基調講演

「住宅の未来2020」

地球と一緒にZEHの住まい

栗林 賢次氏(建築家)

世耕 弘成 氏栗林 賢次氏(建築家)

 時代が変わっても、心地いい住まいを探求する思いは変わりません。地域レベルから地球規模の環境保全が必要なこれからの時代は、ZEHベースで様々な心地よい暮らしの工夫が必要です。例えば、通湿性、保温性に優れ、素肌でも心地いいマウンテンパーカーの多機能性はZEHに通じるものがあります。

 以前、花粉症の住まい手のために、高い気密と断熱性能を持たせながら、なるべく自然素材を用いて日本古来の住まいの基本である採光と通風を確保した住まいを建てました。その快適性は、一年中裸足で暮らす心地よさを知らしめています。外部の温度変化の影響を受けにくい室内環境で、寒暖差で血圧が急変するヒートショックも和らげています。

 これから家を建てるみなさんには、「心地いい住まいとは何か」について、ぜひ、一度、考えてほしいです。地球が心地よくなければ実現しないことに気づかされるでしょう。地域レベルから地球の環境保全が可能になるZEHをベースに、それぞれの地域に合った心地いい住まいを地球と一緒につくっていくことが大切です。

 「地球と一緒に暮らす」という意識が当たり前になる時代、それが2020年に向けての「住宅の未来」ではないかと思います。

パネルディスカッション

政井 マヤ氏<コーディネーター>
政井 マヤ氏(フリーアナウンサー)

 パネルディスカッションでは、ZEHの快適性、機能や普及に向けた取り組みをはじめ、ZEHがもたらす経済面、健康面といった暮らしや生活に直接関わるメリットについて、各分野の専門家が最新事例をもとに意見を交わした。発言の要旨を個別に紹介する。

家庭の省エネ化推進の核に

吉田 健一郎氏吉田 健一郎氏(資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 省エネルギー課長)

吉田 健一郎氏(資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 省エネルギー課長)

 日本のエネルギー需給の将来目標を達成するためには、家庭部門の省エネルギー化をどう進めるかが大きなテーマです。家庭部門では2030年度までに原油換算で1160万klのエネルギー消費量の削減が目標で、ZEHは家庭の省エネルギー化のフラッグシップとして重要な役割を持っています。ZEHは、住宅の気密性や断熱性を高め、エアコンなどの設備を高効率化してエネルギー消費を削減するとともに、太陽光発電などでエネルギーをつくり、年間で家庭のエネルギー消費量をネットでゼロにする住宅です。

 国は2020年までにハウスメーカー・工務店等の新築する注文戸建て住宅の過半数をZEHにすることを目標にしています。この目標を公表したハウスメーカー・工務店等を「ZEHビルダー」として登録し、建築主がZEHビルダーに依頼して建築したZEHを対象に費用を補助しています。

 ZEHビルダーには2017年2月現在で4502社が登録し、ZEH支援事業の補助金の交付件数は2016年度当初予算では6356件と過去最多になりました。

 ZEHは快適な室内環境を保ち、生活の質も向上するなど非常に多様な価値を持っています。我々はZEHの多様な価値を知らせながら普及を進めていきます。

ZEHを直接、体験できる機会作りを

秋元 孝之氏秋元 孝之氏(芝浦工業大学 工学部 建築工学科・教授)

秋元 孝之氏(芝浦工業大学 工学部 建築工学科・教授)

 ZEHがもたらす多様な価値など「2030年の家」を提案・建築する「エネマネハウス」プロジェクトに、芝浦工業大学は2014年、15年に参加しました。学生は企業の方と一緒にZEHの設計から建築まで行い、実際に家造りを体験する貴重な経験となりました。と同時に、一般の来場者は6千人を超える人気で、このエネマネハウスのプロジェクトのように、多くの方がZEHの住宅を直接、体験できる機会を増やすことが普及につながると感じました。

 省エネルギーと美しい建築デザインを両立させることも重要です。家庭用エネルギー管理システム(HEMS)も有効でしょう。今後は全国で約5千万戸とされる既存住宅のZEH化、さらにはマンションなどの集合住宅のZEH化をどう進めるかも大切な課題です。数年後には、住宅は「基本性能がZEH」という段階に進んでいてほしいです。

ZEHにかかわる情報の共有化が大切

栗原 潤一氏栗原 潤一氏(一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会)

栗原 潤一氏(一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会)

 住宅をZEH化するには、住宅本体を高断熱化し、高効率のエアコンや照明器具、太陽光発電システムなどの建材、設備が必要となります。断熱性能の高い家は、温度分布が良くなり、暖房をしていない部屋や廊下なども暖かく、比較的低い温度でも快適に感じます。寒い季節には入浴中に亡くなる方が多いのですが、ZEHでは脱衣室や浴室も暖かくできます。また、結露が発生しにくくなるうえ、結露が原因のカビの発生を抑制してアレルギー疾患の要因を減らすなど健康面でのメリットにつながります。

 ZEHを広く普及させるには、建材・設備性能の公的な評価とコストダウンが必要です。家を建てる方をはじめ建築、設計、建材生産の事業者などZEHにかかわる方々が情報を共有化することが大事です。ZEHには、さまざまな価値があることを知っていただきたいです。

お客様に長期的経済メリットの説明を

小山 貴史氏小山 貴史氏(一般社団法JBN(全国工務店協会)ZEH委員会委員長 エコワークス代表取締役社長)

小山 貴史氏(一般社団法JBN(全国工務店協会)ZEH委員会委員長
エコワークス代表取締役社長)

 JBNは、地域に根ざす国内最大の工務店のネットワークで、全国で約2900社が加盟しています。全国でZEHを建築する事業者が増えており、すでに会員のおよそ半数が国の「ZEHビルダー」に登録しています。2015年5月にZEH委員会を発足させ、その年の11月には日本初のZEH事例集を発刊しました。

 ZEHは車にたとえるとハイブリッドカーです。車の購入で燃費も考慮されるでしょうが、車と同様に家にも燃費があります。ZEHは、高断熱や太陽光発電など初期費用は高くなりますが、長期的には経済的メリット、健康メリットなどがあり、お客様にご理解をいただくことが大切です。当社は2016年度の注文住宅で、着工ベースでZEHが約80%に達しました。太陽光発電システムを搭載した際の長期的な経済メリットについて、お客様にはご家族の人数や建物の大きさ、住宅ローンの状況なども反映したシミュレーションデータを算出して説明しています。当社の場合、こうした経済メリットをより具体的にお伝えすることで、ZEH率が高まり手ごたえを感じています。

健康、知的生産子育てにも好影響

伊香賀 俊治氏伊香賀 俊治氏(慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科 主任教授)

伊香賀 俊治氏(慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科 主任教授)

 私の研究室では、小さなお子さんから高齢者の方までご協力を頂いて地道な実測をしており、ZEHの健康への好影響とともに、知的生産性でもメリットが期待できることが分かってきました。

 2003年から10年間、健康寿命を延ばす住まいをテーマに社会実験を行い、夜間の午前0時の室温が18度未満の寒い部屋と、18度以上の暖かい部屋では、寒い部屋で暮らす人の高血圧の発病率が6倍になったことが確認され、別の実測では、暖かい部屋で暮らした人は健康寿命が4歳延びていました。

 幼稚園の調査では、断熱性能が高い園舎の幼児は、低い園舎の幼児より動きが活発で、自宅も幼稚園も寒い場合は自宅と幼稚園のどちらも暖かい環境の幼児と比べて病欠率が2.6倍でした。

 ZEHが可能にする「夏涼しく冬暖かい家」は、睡眠の質を高めますが、調査では、ある一定程度の良好な睡眠がとれている時間が増えると、知的生産性、作業効率が上がり、学力への好影響も推測されます。特にZEHとともに、床や天井など自然の木で仕上げるとぐっすり眠ることができる結果があり、木材活用を増やすことも大切です。ZEHを中心に街づくりを進めると、みんなが健康になり、知的活動も増え、街全体、さらに日本経済全体の活性化につながるのではないでしょうか。

集合住宅、賃貸住宅にもZEH化を進めよう

石田 建一氏石田 建一氏(積水ハウス常務執行役員 環境推進部長 兼 温暖化防止研究所長)

石田 建一氏(積水ハウス常務執行役員 環境推進部長 兼 温暖化防止研究所長)

 我々は、住宅そのものだけではなく、みなさんに楽しい人生を送っていただくことを含めて提供しています。楽しい人生を送るためには、健康で快適で、エネルギー問題も解決していかなければなりません。そうした思いからZEHを中心にした家づくりを進めています。

 当社が販売する新築戸建て住宅では、すでにZEHは7割を超え、外観を損なわない瓦型の太陽光発電システムを開発するなど、デザイン性と省エネルギー化の両方を実現させることにも注力しています。

 当社のZEH住宅にお住まいの方々に行ったアンケート調査では、「総合満足度」が95%を超えるなど、高い評価を頂いています。今世紀後半に温室効果ガス排出を実質ゼロにするというパリ協定が達成されるためには、新築戸建て住宅だけでなく、集合住宅のZEH化、さらには既存住宅のリノベーションによるZEH化が必要です。ZEH化した集合住宅の市場はまだできておらず、賃貸住宅でもZEHというカテゴリーはないに等しい状況です。集合住宅や賃貸住宅でもZEHのマーケットを作ってマーケットリーダーを目指します。

ZEHとデザインのコラボを

パンツェッタ ジローラモ氏パンツェッタ ジローラモ氏

パンツェッタ ジローラモ氏

 ZEHを中心とした街を作って、ZEHの家を一般に貸し出すようにすれば、多くの人がZEHの良さを体験できる機会が増えるでしょう。イタリアで建築家の父と一緒に街づくりに携わりましたが、都市計画で住宅のZEH化を前提とした街づくりを進めるとZEHの普及が進み、災害にも強い街になります。家は住んでいる人が落ち着いて温かい気持ちになる場所であることが一番大切です。自分のセンスに合わせて家をつくることができるように、ZEHでは、家のデザインとエネルギー問題を合わせて考える方向にも期待しています。

ZEHのポイント1
ZEHとは

 快適な室内環境を保ちながら、大幅な省エネルギーを実現したうえで、再生可能エネルギーの活用により、年間で消費するエネルギー量をまかなうことを目指した住宅です。

ZEHのポイント2
初期投資を超える
長期的経済メリット

 例えば、燃費の良いハイブリッドカーは購入価格が高くてもランニングコストのガソリン代が安いので長期に考えるとお得になることがあります。ZEHも同様に、長期で考えると経済メリットがあります。

ZEHのポイント3
健康寿命を4歳延ばす
冬も暖かい家

 大阪在住の要介護認定を受けている在宅の方々80名の履歴を調査した結果です。冬季室温が2℃ほど暖かい家に住んでいる方々は要介護認定を受ける年齢が4年遅く、健康寿命が4歳長いという結果が出ました。

【参加募集中】エネマネハウス2017

 大学と民間企業等の連携により、ZEHのモデル住宅を実際に建築し、住宅の環境・エネルギー性能の測定・実証や、展示を通じた普及啓発を行うプロジェクトへの参加者を募集します。

募集者数:
5事業者以内(想定)
開催場所:
大阪市うめきた2期区域
応募期間:
2017年3月31日(金)~5月25日(木)

https://www.enemanehouse.jp

主催:エネマネハウス2017事務局 共催:大阪市

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