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外環道・千葉県区間開通のインパクトを考える

2018年6月18日

6月2日に開通した外環道の区間

 東京外郭環状道路(外環道)の三郷南インターチェンジ(IC、埼玉県三郷市)―高谷ジャンクション(JCT、千葉県市川市)間が、6月2日に開通した。開通に先立ち、フォーラム「外環道・千葉県区間開通のインパクトを考える」(主催=読売新聞社、後援=国土交通省関東地方整備局、千葉県、東日本高速道路)が5月28日に東京都千代田区のベルサール飯田橋駅前で開かれた。千葉県の森田健作知事が基調講演を行った後、パネリストらが、首都圏の生活や物流、観光などにどのような効果をもたらすかを議論した。

基調講演

交流を支える道路ネットワークの整備~外環道・千葉県区間の開通~

千葉県知事
森田 健作(もりた けんさく)氏

高速道路網 発展の礎

森田 健作氏

 1964年の東京五輪が近づく頃、東京は建設ラッシュを迎えていた。子どもだった私は高速道路に乗って「こんなに速いんだ。あれだけ時間がかかっていたのに」と思ったものだ。

 高速道路というものは、ネットワークがきちんとすればこんなに便利なものはない。

 外環道の千葉県区間の開通は、(首都高速道路に流入していた車を減らすことで)東京の交通渋滞緩和への効果が大きい。

 新たに開通する区間は、(市川市と松戸市の)住宅の密集地だが、環境に配慮してほとんどが半地下のトンネル構造となっている。

 外の光が入り、地上部は歩道、自転車道、植樹帯など生活環境に配慮している。また、災害時にも拠点として重要な役割を果たすなどいろいろな利点がある。

 道路がいかに大事かということを、私たちは認識しなければいけない。道路網がしっかりしてこそ首都・東京がより輝き、関東圏が日本をリードしていくことになる。

 私は知事になる前、千葉県は道路網の整備が遅れていると思った。東京湾アクアラインをうまく利用するため、普通自動車の通行料金を800円に引き下げた。(アクアライン経由で千葉県に来る人が増加して)地元の雇用が増え、(人口増で)木更津には小学校が新設された。道路によって人とモノの流れがスムーズになったからだ。

 人とモノの流れがスムーズでなければ経済は発展しない。経済が発展すれば、福祉にも教育にもより一層のお金がかけられるはずだ。

パネルディスカッション

外環道・千葉県区間開通のインパクトを考える

新技術ミリ 単位管理も

高橋 知道氏

東日本高速道路 執行役員関東支社長
高橋 知道(たかはし ともみち)氏

 外環道・千葉県区間は都市部や住宅地を通っており、工事では技術的、環境的な問題に細心の注意を払った。

 鉄道と交差する工事では線路の沈下をミリ単位で管理するなど、最先端の技術を用いた。

 環境面では、ダンプなどの大型車両が行き来すると周辺の道路や生活環境に悪影響を及ぼすため、仮設道路を設け、周辺の住宅地を通らないよう配慮した。海岸線には、地域の木であるクロマツの並木を復元した。

 料金体系の改定で外環道の短距離利用は割安になり、一般道の渋滞が減った。海外では料金コントロールによる交通量の抑制も大胆に行われており、我々も料金施策を勉強していく。

 首都直下地震を想定し、高速道路のサービスエリアを防災拠点化している。ヘリポートの設置や井戸掘削などを進めている。ネットワーク完成に合わせ、防災機能も強化していきたい。

沿線に工場 中小へ恩恵

西尾 昇治氏

東京商工会議所常務理事
西尾 昇治(にしお しょうじ)氏

 東京商工会議所の会員には、外環道の周辺に物流基地や工場を持つ企業も多い。今回の外環道千葉県区間の開通で、東京の西部、埼玉県、千葉県を結ぶ大きなルートができる。中小企業の状況は回復基調にあるが、大きな課題もある。その一つに企業の生産性をどのようにして上げるかという問題がある。

 インフラ(社会基盤)を整備することで生産性が上がる分野はたくさんあり、今回の区間完成による生産性の向上は、かなり高いものとして表れるだろう。

 これからのインフラ整備では、どういう形で経済的な波及効果があったのかや、生活面での利便性の向上、観光面の活性化などを重視していかねばならない。

 首都圏では、外環道をはじめとした環状道路の整備が進められている。外環道の西側の部分についても早く完成してもらい、経済効果を早く享受したい。

渋滞解消 生産性アップ

轟 朝幸氏

日本大学理工学部交通システム工学科教授
轟 朝幸(とどろき ともゆき)氏

 千葉県の湾岸地域には、重要港湾や観光施設、工場がたくさんある。今回の開通で都心を迂回できるメリットは大きく、時間短縮で産業活動が活発になれば、経済にも良い影響がある。

 首都圏は4000万人近い人口を抱え、渋滞が大きな問題になっている。渋滞解消には道路整備が重要だ。首都高は狭く、カーブも多い。高度成長期の古い規格が残っているため、大規模な更新が必要だ。

 日本では都心を通過するように道路を作ってきたが、パリ、ロンドン、北京、ソウルは環状道路ができている。外環道で都心よりも便利な土地ができれば、都心のあり方を変える可能性がある。ネットワークをしっかり作ることが期待される。トラックやバスのドライバー不足に対処する自動運転は、車両の進歩と道路の整備が両輪となって初めて実現できる。道路のあり方も見直す時期に来ている。

インスタ映え 房総発信

楓 千里

JTBパブリッシング取締役(肩書は当時)
楓 千里(かえで ちさと)氏

 海外からの客が大きく増えている。今年1~4月で既に1000万人を超え、おそらく年3000万人以上が日本に来るだろう。外国人観光客も日本人観光客も、写真に撮ってすてきな所、インターネットの画像共有サービス「インスタグラム」に投稿する「インスタ映え」に注目する。

 (今回の開通で)千葉の鋸山と養老渓谷が注目されるのではないか。鋸山の絶壁で写真を撮り、インスタグラムに投稿するのが定番で、周辺には1500点の石像もある。この機に内房、房総半島中心部をPRするといいのではないか。

 道路が整備されれば、海外からの客はレンタカーを使う。多言語表示などの整備をお願いしたい。また、伝統的な工芸品や料理を作りたいなど、いろいろなことを経験したい外国人観光客が増えており、受け入れ態勢が必要になる。

ルート分散 事故減期待

泊 宏

国土交通省関東地方整備局長
泊 宏(とまり ひろし)氏

 環状道路の機能は四つある。都心への車の流入抑制、複数ルートによる分散導入効果、都心を通らない地域間移動、そして災害など非常時の迂回機能だ。

 外環道は、首都圏の経済活動や暮らしを支えていく重要な役割を担っている。

 今回の外環道・千葉県区間の開通で、湾岸地域から関東内陸部への移動時間が非常に短くなる。時間が読めるようになり、より少ないドライバーで荷物が運べるなど、企業の生産性が向上する。これまで、(自動車専用道路ではない)生活道路を走っていた車は外環道を使うようになる。地域にとっては、渋滞と事故が減ることにつながり、安全性の向上が期待される。

 首都直下地震が起きたら、いかに都心へのアクセスを確保するかが大きな課題になる。(首都圏の環状道路の整備で)迂回ルートが確保され、災害時のアクセス性も良くなるだろう。

※コーディネーターは高橋徹・読売新聞東京本社調査研究本部主任研究員

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