ALS患者をラグビー界が募金で支援

チャレンジJ9の発表記者会見。右から村上さん、広瀬さん、井手口さん。左奥の画像はユースト

全身の筋肉が徐々に失われる難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療法研究をサポートする募金活動「チャレンジJ9」を、ラグビー関係者らがスタートさせた。2017年にALSで亡くなったラグビー界の伝説的な名選手ユースト・ファンデルヴェストハイゼン(南アフリカ)が、患者支援を目的として生前に設立した「J9基金」と連携した活動だ。

チャレンジJ9の発起人は、広瀬俊朗・元日本代表主将、ラグビージャーナリストの村上晃一さん、薬学博士の井手口直子・帝京平成大教授、坂田好弘・関西ラグビー協会長、稲沢裕子・日本ラグビー協会理事の5人。このうち、広瀬さん、村上さん、井手口さんの3人が7日、日本記者クラブ(東京)で記者会見し、活動概要を発表した。

募金は、チャレンジJ9の公式サイトが受付窓口となる。ワールドカップ(W杯)日本大会にちなみ、一口を「2019円」か「20190円」と設定した。W杯が閉幕する11月2日まで、本大会やイベントなどの機会も利用し、ファンや選手らに協力を呼び掛けていく。募金した人に「#チャレンジJ9」でSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)投稿をしてもらい、輪を広げたい考えだ。

山中所長のiPS研究所に全額寄付

山中所長(左の画像)も、記者会見に談話を寄せた

寄せられた全額を、ALSの治療法開発に取り組んでいる京都大学iPS細胞研究所(山中伸弥所長)に寄付するという。井手口さんによると、日本には現在、約8300人のALS患者がいるが、まだ治療法がない。その開発に突破口を開くのがiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた再生医療と薬の研究だと、期待を集めている。

ノーベル賞を受賞した山中所長は、日本の「ミスターラグビー」こと平尾誠二氏(1963~2016年)の親友で、ラグビー界との縁が深い。「ご支援は、安定した研究環境整備のために大切に活用させていただきます」などと談話を発表し、募金の開始を歓迎している。

また、患者を支援するNPO法人の岡部宏生理事は「ラグビーとALSは両極端に感じることが普通だと思うが、どちらもチームで支えること、前にはパスができなくても実は前に進んでいること、どちらに転がるか分からないことなど、共通点がたくさんある」などとコメントした。

南アの英雄ユーストにちなみ命名

ユースト(Joost)は、1990年代の世界ラグビー界で最高のスクラムハーフと称賛された名選手だ。パスが巧みなだけでなく、1メートル88で88キロと体が大きく、しかも足が速かった。同時期に似た姓の選手が南アフリカ代表のチームメートにいたため、ファーストネームで呼ばれることが多い。母国を開催国優勝に導いた1995年W杯での大活躍は、クリント・イーストウッド監督の映画「インビクタス」にも描かれた。

2008年にALSを発症し、2017年2月に45歳の若さで亡くなるまで、自身が設立したJ9基金の活動に取り組んだ。Jは自身の頭文字で、9はスクラムハーフの背番号からとった。南アフリカでは、ユーストの没後も遺志を継いだ患者支援センターが活動を続けており、日本での今回の募金活動に対して、J9という名称とロゴマークの使用を承認したという。

ALS支援の継続を誓う広瀬さん

チャレンジJ9の記者会見で、広瀬さんは「ALSの患者さんたちは、ラグビー選手が筋肉を鍛える以上に厳しい『筋肉との闘い』の日々を送っている。ユーストが発病した頃と同じ37歳になった今、僕にとってALSは人ごとではない。W杯後も、支援のパスをつなぎたい」と、声を詰まらせて語った。

日本ラグビー界が医療支援を手掛ける例は、村上さんによると、トップリーグの神戸製鋼が2002年からNPO「日本せきずい基金」への寄付を続けていることなどが挙げられる。(読売新聞メディア局編集部・込山駿)

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