[桜の記憶]<8>もがき 学び 大金星

強豪・南アに対策徹底

南アフリカ戦のラインアウトでボールをキャッチするリーチ(中央)。安定したセットプレーが日本の躍進を支えた=ロイター

負の歴史をついに断ち切った。2015年に英国で開かれた第8回ワールドカップ(W杯)。1991年の第2回大会を最後に勝ち星のなかった日本が、「史上最大の番狂わせ」と評された南アフリカ戦の大金星など3勝を挙げた。キーワードは「準備」だ。

五郎丸歩

初戦の南ア戦では3トライを奪った。終了直前、スクラムから連続攻撃を仕掛け、ヘスケスが左隅に飛び込んだ逆転トライは、大会のハイライトとなった。前半29分はBK陣も次々と加わるモールで押し込み、後半28分はサインプレーで五郎丸歩(33)が走り切った。この2トライはラインアウトが起点だった。

3大会連続出場の大野均(40)は「スクラム、ラインアウトの安定が過去の大会との違い」と言う。体格で劣る日本はこうしたセットプレーを伝統的に苦手とし、苦戦の要因となっていた。

第8回W杯を振り返る大野均

ラインアウトは両チームの選手が並び、投げ入れた球を奪い合う。世界屈指の高さを誇る南アは2メートル超の長身選手が並ぶ。1メートル92の大野は「見上げるぐらいだった。でも不思議と怖さはなかった。しっかり準備していたから」と回想する。

日本の特長である俊敏性を生かして球を確保した。「相手が反応できないくらい素早く動いて、飛ぶ。これをひたすら練習した」。捕球役のジャンプする姿勢など基本動作の精度を高めた。「(複雑な)サインは3、4個くらい。シンプルでしたね」と大野。サインを出す選手の声が大声援にかき消されることも想定し、練習で大音量の音楽を流した。コーチらの精微な分析もあり、大会を通してミスはほとんどなかった。

スクラムは、元フランス代表の専門コーチが指導した。8人がまとまって低い姿勢で押すことを徹底。南ア戦で主審を務めることが決まっていたレフェリーを直前の国内合宿に呼び、笛の傾向を確かめた。

W杯と同じ仕様のゴールポストも練習場に設置し、五郎丸がゴールキックの練習を積んだ。南ア戦24得点の五郎丸は「一言で言えば準備。できることは全てやった」と強調する。

ヘッドコーチのエディー・ジョーンズは「目が覚めたら、小さい体でどう勝つか常に考えている」と話していた。過去のW杯出場選手らに反省点を聞いて回った。口をそろえたのが「準備不足」。敗因を研究し、チームの血肉とした。もがきながら勝てなかった歴史にも学び、日本ラグビーの飛躍へつなげた。(敬称略)(林宏和、おわり)

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