[ジョセフ流]<上>演出上手の熱血漢…ラグビーW杯 あと半年

ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会は、9月20日の開幕まであと半年となった。日本代表を率いるのはジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)(49)。ニュージーランド(NZ)と日本の両代表選手としてW杯に出場した指揮官の素顔や指導哲学に焦点を当てる。

屈強な男たちの中でも、ジョセフHCの姿は際立っている。沖縄で開かれている日本代表候補の合宿。現役時代の身長1メートル96を超える選手は1人だけ。身も心も大きい指揮官が代表の中心にいる。

NZ南島北部のマルボロ地方で、農園を営む一家に生まれた。父は先住民族マオリの代表チーム(マオリ・オールブラックス)でプレーし、親類にNZ代表もいた。自らも5歳でラグビーを始め、「スポーツ好きで負けず嫌いの一家」の中で、勝利への執念を磨いてきた。

22歳でNZ代表デビュー。当時を知るトニー・ブラウン日本代表コーチが「時には反則に近いプレーもしていた」と笑うように、フランカーやナンバー8として、激しいプレーで名をはせた。1995年W杯で準優勝した後に代表から退き、西日本社会人の下部リーグに所属していたサニックスへ加入した。

熱いハートは日本でも変わらなかった。チームメートだった森拓郎・関大コーチは「まさに親分肌だった」と振り返る。ラックに入った選手が疲れて立ち上がらないのを見るや、つかみ上げて次のラックへ引っ張っていく。一方、休みの日には家族に手料理を振る舞い、チームメートとはマオリ族の民族料理「ハンギ」を一緒に作った。

指導者として、今は違った顔を見せる。「フレンドリーに接すると選手は混乱する。コーチとしての立場を明確にしたい」と、選手とはあえて距離を置く。日本代表SH田中(パナソニック)は「オーラがある。試合前に彼が話をすると、みんなが真剣に聞いて一つのチームになる」と話す。

遠征に甲冑 選手を鼓舞

代わりに見せるのは演出家の顔だ。スーパーラグビーのハイランダーズ(NZ)を率いた時、大事な試合がある週の初めに選手一人一人に鍵を渡し、試合当日に集めた。テープで一まとめに巻き、「これで開かない扉はない」と士気を高め、優勝に導いた。日本代表でも、戦いに向かう意識を植え付けようと、赤い甲冑(かっちゅう)を遠征に持参した。「多国籍のチームに文化を作るため」という。

「仕事現場と家では全く違う自分がいる」と、練習中は選手の動画が入ったタブレットを片手に厳しい視線を向ける。ただ、そのタブレットの待ち受け画面はまな娘の写真。人の良さは隠しきれない指揮官が、自国開催のW杯で初の8強入りを目指す。

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